前回のストーリーから約1年ぶりの更新です。だいたい書きたいことは書ききっていたのですが、1つ書いてないことを思い出したのと、まったく更新がないと『この企業大丈夫かな?』と思われそうなので更新します。今回のテーマは、弊社がDX支援事業を行っている理由です。
ITの活用・IT人材の不足している観光産業
本題に入る前にちょこっとだけ弊社の事業構成についてお話しすると、①ホテル運営事業、②DX支援事業、③新規事業、の3つの事業を行っています(※新規事業に関してはまだ構想段階、テストマーケティング段階なので事業と呼んでいいのかはさておき...。)。ちなみに、弊社のロゴ(2024年8月商標登録済)の三本線の意味にはいくつかあるのですが、この三刀流もその1つです。ちょっと前にはなりますが、変わったアプローチとして『ホテルベンチャーカオスマップ2023』に取りあげていただいたり、2024年12月号の日経トレンディさんにも掲載いただきました(電子版なし)。
さて、課題山積の観光産業ですが、ご多分に漏れず人材不足は今後の重要な課題です。とある記事によれば、宿泊業・飲食サービス業の大卒3年以内の離職率は51.4%と全産業の中で断トツ1位です。また、インバウンド業界への就職を応援する『やまとごころキャリア』さんの資料によれば、観光産業の転職希望者のうち、約46%の人が「観光業界以外を希望」しているそうです。
上記調査(2023年3月調査)において観光業界を希望しない理由としては、
1位:給与が低いから
2位:コロナなどの影響を受けやすい業界だから
3位:土日や長期休暇に休みが取れないから
4位:シフト制で労働時間が不安定だから
5位:拘束時間が長いから
といった理由が上位を占めるようです。こうなってくると将来的な人手不足は必至です。人手が減るのを前提とした場合、取り得る選択肢は、①生産性向上、②過労働(今よりももっと1人1人ががんばる)、③量ではなく質を志向(薄利多売⇒高付加価値ビジネスへの転換)、④機会損失・売上減少、かなと思います。
①が一番現実的ではあるものの、翻って国内の産業別IT投資額を見てみましょう。富士キメラ総研さんの『業種別IT投資/デジタルソリューション市場 2022年版』によれば、2026年度予測で、国内全体23兆5,000億円程度のIT投資が見込まれるのに対し、宿泊業・外食業を含むサービス業は2,110億円に留まります。これは全体の0.9%程度です。一方で、内閣府が出している国内のGDP内訳を見ると、宿泊・飲食サービス業は1.7%ほどを占めています(※インバウンド消費はGDPの算出上は「輸出」に分類されるようで、この数字には反映されていないはずです。この辺りは今後もっと勉強していきます...。)。単純比較はできないですが、ITの活用余地はまだまだありそうです。というより、ここをテコ入れしていかないと将来的な人手不足はさらに深刻化していく可能性が大です。
弊社がなぜDX支援事業をやっているのか
結論から申し上げます。理由は大きく3つです。
①この先どんなビジネスをやるにせよIT人材は不可欠だから
②全社の給与水準を上げたいから
③財務基盤を強固にする必要があるから
それぞれ補足していきます。
①この先どんなビジネスをやるにせよIT人材は不可欠だから
拙著『#8 観光業における『TESLA』さんに』で書いた通り、今後はすべての企業が「テクノロジー企業」になっていく必要があります。また、同時に(すべてとは言わないまでも多くの人が)「テクノロジー人材」になっていく必要があります。生成AIについての賛否はさておき(私はどちらかというと否ですが)、生成AIの登場によってさらにテクノロジーが進化するスピードは上がり、テクノロジーを使いこなせている企業や人材と、そうでない企業・人材との格差はどんどん広がっていくのではないかと思います。
ここで弊社の事業についてちょっとだけ補足をすると、よく応募者の方から「DX支援は観光業向けにだけやっているのですか?」と聞かれるのですが、結論違います。弊社のDX支援は、業界業種を問わず、マーケティングやセールス活動を効率化するサービスの導入を行っています。ゆくゆくは観光業に特化する可能性もゼロではないですが、私自身IT業界出身で、このDXの部分にもとても日本全体として課題を感じているので、可能性を無理に狭めず、やりたいことをやっていこうと思います(=DX支援事業は片手間の事業ではなく、これも弊社の本業であるということ。私が最終的に目指したいのは、日本のグローバルプレゼンスの向上なので、その意味においてDX支援により日本の"売る力(買ってもらう力)"を磨くということもまた、私が観光業に携わる理由と共に一本の筋が通っています)。
②全社の給与水準を上げたいから
先に挙げさせていただいた通り、観光産業の課題の1つに低賃金・重労働があります。弊社のパーパスは『観光業をもっとも魅力的な産業に』であり、"魅力的"には勿論、経済的な面や肉体的な面も含まれます。いずれは産業全体でそうなればいいと思いつつ、まずは弊社がこの業界全体のロールモデルになる必要があると考えています。その為には、弊社の全社的な給与水準を上げていかねばなりません。
一方で、ハコモノビジネスには限界があります。売上の上限が稼働率100%だからです。勿論、単価を上げていけば青天井ではありますが、それには大規模な設備投資などお金が必要です。ホテルの場合、新しい店舗を作ろうとなると、それはそれは莫大なお金が必要です。
となってくると、"今(目先)は"、他でシッカリと稼ぎ、人材に投資し、さらに稼げるようになり、設備投資をできるだけの余剰資金を作っていく必要があります。なので、DX支援事業でシッカリと稼ぎを増やしながらホテル運営事業の人材にも適切に投資を行っていきたいと考えています。そして、将来的には、ホテル運営事業単独でも、高付加価値のあるビジネスを展開していき、従業員にとって経済的にも肉体的にも精神的にも魅力的な事業にしていきたいと思います。
③財務基盤を強固にする必要があるから
私は、基本的には"現実的楽観主義者"です。基本的には「なんとかなるさ」の精神ですが、無根拠に能天気でいるわけではありません。適切にリスクや課題を認知し、そのための策を講じた上での、「最後はなんとかなるさ、なるようにしかならんさ」という感じです。
観光産業は、外部要因に非常に左右されやすい産業です。私がこの業界に入る前、2019年頃、福岡にはガンガン伸びているホテル系スタートアップが2社いました。しかし、その急成長中の真っ只中で、新型コロナウイルスが世界を襲いました。結果、1社は倒産し、1社は事業縮小を余儀なくされました。コロナさえ来なければ、2社とも今頃は上場を果たしていたかもしれません。
コロナは超極端な例ですが、自然災害にも弱いですし、景気動向・為替・原材料費・エネルギー価格などの動向にも左右され、また、すそ野の広い産業が故に、交通インフラ関連、アメニティ関連、タオル類のクリーニング関連、清掃関連・ビルメンテナンス関連、など他社の動向にも左右されます。
このように変数だらけの中で、"自分たちがやりたいこと・やるべきこと"を続けるためには、強固な財務基盤が必要となります。外部環境を言い訳に弊社が倒産したら、『観光業をもっとも魅力的な産業に』というパーパスを実現することができなくなってしまいます。
以上、これ以外にもDX支援事業を行っていることの意味や意義、その副次的な効果はあるのですが紙面の関係でここまでとします。
弊社が目指すDX支援と必要な人材
DX関連市場は、こちらも富士キメラ総研さんの予測によれば、2030年には、2020年比の3.8倍の5兆円市場になります。年率成長で言えば20%成長です。
単純な原理原則ですが、企業の成長においても、個人の市場価値向上においても、「成長産業に居ること」はとても大切です。なぜなら、これも原理原則ですが、成長産業、つまり、"需要>供給"の状態であれば、やることさえシッカリやっていれば(これをできていない企業が多いわけですが)、売上は上がり、利益は増え、賃金は上昇し、引く手あまただからです。
そのような成長産業であるDX市場の中で、私が圧倒的に不足していると考えているのが、"橋渡しのできる存在(ブリッジ)"です。どういうことかと言うと、一般的なビジネスサイドの人材(マーケターやセールスなど)は、「データがわからない、プログラミングがわからない、そんなことをキャッチアップしている時間はない」という課題を抱えています。一方で、一般的なシステムサイドの人材(エンジニア、情シスなど)は、「お客様がわからない、ビジネス課題がわからない、マーケティングや営業活動がわからない」という課題を抱えています。そこで必要となるのが"橋渡しのできる存在"、つまり、ビジネスとテクノロジーの両方に精通(完璧である必要はない)した人材です。
そのような人材がいれば、「なぜこの機能が必要なのか」「このテクノロジーを活かしたらどんなマーケティングやセールスができるのか」ということを、共通言語を持ってビジネスサイドとシステムサイドが議論をできるようになります。プロダクトアウトよりもマーケットインであるべき、という話はよく聞きますが、iPhoneは究極のプロダクトアウトであると思います(厳密にはスティーブ・ジョブズ氏が求めた究極のマーケットインでもありますが)。市場の声、顧客の声を聞くことも大事ですが、時には、自分たちが作りたいもの、本当に良いものを作り、市場や顧客を啓蒙する必要があります。なので、ビジネスサイドとシステムサイドは両輪で在る必要があるのです。
ここからは弊社の宣伝です。ハッキリ言って、上記のような人材は稀有です。市場に居ないなら育てればいいじゃん、育てた方が早いじゃん、というのが私の考え方です。なので、弊社ではIT業界未経験でも全然ウェルカムです。向上心、成長意欲さえあれば大丈夫です。私も元々証券マンという超アナログ人材からIT系スタートアップへ転職し、最初半年は給料泥棒と言われながらボコボコにされ今に至ります。半年、1年くらいは苦労するかもしれませんが、必ず立派なIT人材に育ててみせます(※環境は用意するので、あとは勝手に育ってください、が正確な表現ですが)。
加えて、デザイナー職やエンジニア職も未経験ウェルカムです。但し、先にお伝えの通り、今後必要とされるのはビジネスを理解したデザイナーでありエンジニアだと考えています。言われたことだけできる、綺麗なデザインができる、綺麗なコーディングができるだけの人材は、生成AIに淘汰されます。お客様の課題を理解し、その解決策としてのデザイン、プログラムを"提案"できる人材が求められます。従って、弊社のデザイナー職・エンジニア職は必ず最初はコンサルタント職も兼務してもらいます。その後、ビジネスを理解したデザイナー・エンジニアになるもよし、デザイン・エンジニアリングを理解したコンサルタントを目指すもよし、です。
最後に
三刀流の意義について触れて締めようと思います。ホテルを実際に運営しているからこそ、ホテル業・観光業の課題が見えます。DX支援事業をすることで、IT人材を育成し、全社の賃金を向上させ、強固な財務基盤・事業ポートフォリオを得られます。ホテル運営事業で発見した課題に対し、DX支援事業で培ったテクノロジーの力でそのソリューションを生み出し、その課題を解決するような新規事業をこれからどんどん作っていきたいと思います。そして、その新規事業で生まれたサービスを、まずは自社のホテルで導入することで、自社のホテルの競争力は増し、更なる挑戦を生み、挑戦するからこそ新しい課題が見えてくると思います。Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏の掲げる『フライホイール』の如く、この循環をぐるぐると回していきたいと思います。ご清覧ありがとうございました。