「いい街でした」で終わってしまう旅...
旅行から帰ってきて、「いい街だったね」と言う。でも、何がどういいのかと聞かれると、うまく答えられない。
有名なスポットも、人気の料理店も巡った。でも、他の地域と何が違うかはなかなか答えられない。
私は宿泊業に携わる中で、この感覚が気になっていました。観光地の情報は、いまやいくらでも手に入ります。
それでも、その土地の暮らしや文化の「本当のところ」は、なかなか伝わりません。
地域には、伝わっていない魅力がある
兵庫県・丹波篠山。城下町の面影が残り、四季の食や工芸、祭りなど、暮らしと一体になった文化が息づいています。
城下町の中心には城跡を仰ぎ、囲うように立ち並ぶ古民家の風合いを残す街並みには、商店が活気づきます。
車でたった10分走らせるとその活気とは打って変わって、静けさの中に枝豆畑と山々が広がります。
ゆっくりと散歩をしていると、住民の方がにこっと、挨拶をしてくれる。「東京から来ました」と言うと「あらま〜そんな遠いところから」とおしゃべりがスタート。
気づいたら、自分の凝り固まった笑顔がゆっくりと解けていく感覚になる。
けれど、こうした魅力は、パンフレットや写真だけでは伝わりきりません。地域の人にとっては「いつものこと」だからこそ、魅力として言葉になっていないものも多くあります。
宿だからできる伝え方がある
私たちは、宿を地域を伝えるための“手法”として捉えています。宿には、他の観光施設にはない特徴があります。
滞在時間が長い。
滞在は一泊二日、あるいはそれ以上です。夕方から朝まで、一緒に過ごす時間があります。
日常に近い。
朝起きて、ご飯を食べて、街を歩く。観光ではなく、「暮らしに入る」感覚で、その土地を味わえます。
人が介在する。
スタッフが、その土地の人として、自分の言葉で語れます。マニュアルではなく、実感のこもった言葉です。その地域を形作った歴史や文化、食や農業などの生業について、自身の言葉で紡いでいく。
こうした積み重ねの先に、「この街が好きになった」という気持ちが生まれると考えています。
宿は、地域の"メディア"になれる
私たちは、宿を地域の魅力を映すメディアとして位置づけています。ここでいうメディアとは、情報を発信する媒体という意味だけではありません。
ゲストと地域のあいだに立ち、文化や暮らしの背景ごと伝える「翻訳者」のような存在です。
たとえば、一皿の料理。「おいしい」で終わるのではなく、どんな農家が、どんな土で、どんな思いで育てたのか。その背景まで届くと、同じ料理でも味わいが変わります。
伝えることが、地域をめぐらせる
宿が地域を伝える役割を果たすと、もうひとつの変化が起こります。ゲストが地域の魅力を知り、地元の食材を味わい、工芸品を手に取り、また訪れる。
そうした流れが、地域の文化と経済を、地域の中でめぐらせます。宿が地域の外から消費するだけの場所ではなく、地域の中にお金や関わりが残る場所になる。
私たちは、この文化と経済の域内循環をつくることが、暮らしと文化を未来につなぐことだと考えています。
だから私たちは「ホテル運営会社」と名乗らない
こう考えているので、私たちは自分たちを、単なるホテル運営会社だとは思っていません。
客室の稼働率やサービスの品質はもちろん大切です。ただ、それは目的ではなく、地域を伝えるための手段でもあります。
判断に迷ったとき、私たちはこう問いかけます。
「それは、この地域の魅力を、本当に伝えることにつながっているか?」
本質的な地方体験とは
私たちは、この考え方を「Authentic Localism(本質的な地方体験)」と呼んでいます。
小手先の演出や、観光向けにつくられた体験ではなく、その土地の暮らしや文化に、ゲストが自然に触れられること。そして、「本当の豊かさとは何だろう」と、ふと立ち止まるきっかけになること。
そのためには、手法や知識だけでなく、相手や地域の気持ちを感じ取れる人間的な深さが必要です。
私たちの現在地
NIPPONIAオペレーションズは、2026年3月に丹波篠山で創業しました。
出来立てほやほやの弊社は宿のコンセプトづくりや開業準備など、メンバー同士意見を出し合いながら邁進しています!
宿が地域を伝える手法として機能するかどうかは、私たちが「どれだけ地域と向き合えるか」にかかっています。まだ道の途中ですが、地域の方々とゲスト、そして私たち自身が、「この街ってこんなにいいんだ」と思える場所をつくっていきたいと思っています。
宿泊業の経験がある方も、地域づくりや文化に関心がある未経験の方も、この考え方に共感してくださる方と、いつかお話しできたら嬉しいです。
「話を聞きに行きたい」から、お気軽にご連絡ください✨