ファンは流行に飛びつき、すぐ次へ移る。本当にそうでしょうか。私たちは、数字の増減だけで人を決めつけず、「なぜその人が戻ってくるのか」を考えられる人と働きたいと思っています。
※作品の関係性に触れる軽微なネタバレと、採用広報としての仕事紹介を含みます。
突然ですが、あなたの「推し」は何人増えましたか?
「ファンは流行の作品に集まり、次の流行が来れば去っていく」。コンテンツの仕事をしていると、そんな説明を耳にすることがあります。けれど、本当にそうでしょうか。
新しい作品に夢中になったからといって、昔好きだった作品を捨てるわけではない。周年企画があれば戻り、続編が出れば追い、映画が公開されれば劇場へ行く。昨日まで一人だった推しが、今日二人になることだってあります。
これは“推し変”ではなく、“推し増し”です。オタクの心には、思っている以上に増築可能な部屋がある……! この前提に立つと、IPの見え方も、ファンへの向き合い方も変わります。
ファンが見つけているのは、人気キャラではなく「関係」
関係性を読むファンは、キャラクター単体の人気だけを見ているわけではありません。誰と出会い、誰にだけ弱さを見せ、誰のためなら本来の役割を越えるのか。対立、共闘、尊敬、執着、救済、別離から、「この二人の間には何があるのだろう」と考えます。
公式が恋愛として描いていない男性同士の関係も、解釈の対象になります。ただし、公式関係を勝手に恋愛だと断定することとは違います。人物像と出来事をよく観察し、まだ言葉になっていない感情を読む。そこで得た発見が、感想、考察、イラスト、小説、友人への推薦へ変わっていきます。
巨大なシリーズは、初めて見る人には入口が多すぎます。でも「この二人が気になる」という入口ができると、過去巻へ戻り、別の因縁を知り、いつの間にか作品全体を好きになる。強い二人は、人気を奪い合うのではなく、作品の中を回遊させる案内役になります。
数字は答えではなく、「何が起きた?」と考える入口
社内のpixiv投稿調査では、『名探偵コナン』の「赤安」タグは、2015年10月〜2016年3月の半期64件から、2016年4〜9月には8,121件へ急増しました。その後はピークから落ち着いても、2025年10月〜2026年3月に577件が確認されています。同じ直近半期のコナン全体では13,032件でした。
この数字だけで、「赤安がコナンをヒットさせた」とは言えません。pixiv件数は売上でも視聴者数でもなく、検索タグや集計条件にも左右されます。けれど、特定の関係がいつ新しい入口になり、その熱がどのように残ったかを考える補助線にはなります。
東宝の公表値では、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は2024年に興行収入158.0億円、『隻眼の残像』は2025年に147.1億円。2026年の『ハイウェイの堕天使』は、公開初日だけで73.9万人、11.3億円を記録しました。もちろん、上映規模、原作人気、謎解き、アクション、家族層、毎年見る習慣など、多くの要因が重なった結果です。
だからこそ面白いのです。大きな数字を見て“人気だから売れた”で終わらせず、どんな入口が毎年更新され、どの人がどの関係から作品へ戻ったのかを考える。数字を結論ではなく、次の質問に変える。それが、私たちの仕事の出発点です。
サンディアスの仕事は、「好き」をそのまま企画書にしない
私たちは、BLやファンダムの熱を大切にしています。でも、「私はこれが好きです!」だけで企画や提案を決めるわけではありません。生の感覚を残したまま、仕事で使える形へ分解します。
まず観察します。作品で何が描かれ、ファンが何と言い、どんな行動をしたのか。次に解釈します。なぜ、その場面や関係が刺さったのか。そして仮説を立てます。同じ反応が起きるのは誰か、別の説明はないか。最後に、記事、調査、セミナー、商品、販促、企画提案へ翻訳します。
たとえば「この二人、尊い!」という感覚を消す必要はありません。むしろ、その“尊い”はどこから来たのか。反発から信頼へ変わった瞬間なのか。一人にだけ弱さを見せたからなのか。役割を越えて相手を選んだからなのか。感情の理由を説明できれば、個人の感想が、読者理解やIP企画の仮説になります。
こういう考え方ができる人は、きっと働きやすい
第一に、主語を大きくしすぎない人。「腐女子はこう」「女性はこう」と決めつけず、どの層が、どんな条件で反応したのかを考えられる人です。ファンは一枚岩ではありません。解釈違いがあることを、失敗ではなく情報として受け取れることが大切です。
第二に、数字を見て終わらない人。投稿数が増えたら「なぜ増えた?」、減ったら「熱が消えたのか、場所が変わったのか?」と考える。数字を自分の意見を正当化する武器ではなく、詰まりや変化を見つける診断材料として扱います。
第三に、“好き”を言葉にするのが楽しい人。専門用語をたくさん知っている必要はありません。「なぜか刺さる」で止まらず、場面、台詞、視線、関係の履歴まで戻って説明しようとする人は、この仕事と相性がよいと思います。
第四に、自分と違う推し方を面白がれる人。単推し、カップリング、箱推し、考察、グッズ、舞台、原作中心。楽しみ方が違えば、同じ作品から見える市場も変わります。自分の正解を守るより、別の読み方から新しい入口を見つけられる人と、私たちは話したいです。
そして第五に、仮説を更新できる人。最初の読みが外れても、データやファンの声を見て考え直せる。これは“詳しくない”ことより、ずっと大切です。推しが増えるように、自分の見方も増やしていける人は、変化の速いコンテンツの仕事でも動きやすいからです。
必要なのは、すべての作品を知っている人ではありません
BL、漫画、アニメ、ドラマ、ゲーム。扱う領域が広い以上、最初から全部に詳しい人はいません。私たちが大切にしたいのは、知らない作品を“知らない”で閉じず、誰が、どの関係に、なぜ心を動かされたのかを面白がって調べる姿勢です。
ファンの熱量を、ただの勢いや一時的な流行として片づけない。数字の奥にいる人を想像し、作品が積み上げた関係の履歴を読む。そして、観察したことを他の人が判断できる言葉へ変える。
ここまで読んで、「それ、普段からつい考えてしまう」と感じた方。もしかすると、サンディアスの仕事は居心地がいいかもしれません。好きな作品を増やすように、見方と問いを増やしていける人と、一緒に働けたらうれしいです。