メタジェンセラピューティクス株式会社(以下、MGTx)は、健康なドナーから提供された便を原材料に、腸内細菌叢移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation)——おなかの中の菌を移植する治療法—— を医薬品として開発している会社です。
東京本社・鶴岡本社を中心に開発を進めるMGTxですが、実はCMC(製造・品質管理)チームのメンバーは全国に散らばっています。
今回は、リモートで群馬からCMC薬事を担うHさん、四国からCMC戦略を担当する川端さん、順天堂大学キャンパスで製造・品質管理に携わる水戸部さんの3名から、多様な働き方が可能なMGTxのリアルをお伝えします。
「品質って難しいな」——3つのキャリアが交わった場所
水戸部(順天堂):私は4月に入社したばかりで、まだ1か月経っていないんですけど。所属はCMCで、順天堂大学ラボ担当ということで、製造と品質管理を担当する予定です。大学院では生物学を専攻し、就職してからは遺伝子治療の実験補助をやっていて、その後は再生医療で使う細胞の製造会社で4年ぐらい生産技術をやっていました。細胞培養の工程改善やリスク評価、細胞の評価方法の検討とか。そこを通して学んだのが、品質って難しいなということで。細胞ってそもそも不均一で、しかも人によって違うし、何をもって品質を定義したらいいのか、というのはずっと考えていました。
H(群馬):私はもともと薬学部で、製薬メーカーに就職して薬物動態研究室に配属されまして、生体試料の分析を6年くらいやっていました。分析法バリデーション[1]もやっていましたね。その後はジェネリック医薬品の会社で製剤開発と承認申請を2年。安定性試験をやりながら申請資料を作って、PMDA[2]とやり取りして、という感じです。
川端(四国):私は前職が大手製薬会社で、その前は化学メーカーだったんですけど、一貫してバイオロジクス関連のプロセス開発、試験法開発、プロジェクトマネジメントをやってきました。特に前職では再生医療の分野で、雑多な細胞の集団から最終製品を作り上げるという経験を積みました。
水戸部さん 2026年4月入社。大学・大学院では生物学を専攻。就職後、医科大学の大学院で遺伝子実験補助に従事した後、再生医療の特定細胞加工物製造会社で4年間、生産技術(細胞培養の工程改善・リスク評価・評価方法検討)を担当。現在はMGTx CMC部にて、順天堂大学キャンパス内で製造・品質管理業務に携わる。
Hさん 薬学部卒。製薬メーカーで生体試料分析に6年従事。その後、ジェネリック医薬品企業で製剤開発・承認申請業務を2年経験。現在はMGTx CMC部にて、CMC薬事を中心にフルリモート勤務。
川端さん 大手製薬および化学メーカーにて、バイオロジクス関連のプロセス開発・試験法開発・プロジェクトマネジメントに従事。抗体医薬品と再生医療分野でのCMC経験が豊富。現在はMGTx CMC部にて、CMC戦略・薬事を担当。四国在住、フルリモート勤務。
川端(四国):私と水戸部さんのバックグラウンドは近いところがあるなと思いました。Hさんのように、いろんなところを知っていて薬事をやるというのが、薬事のキャリアとしては一番いいですよね。
「誰もやっていないこと。だから楽しい」
H(群馬):転職活動する前に、製薬系のニュースでFMTをやっている会社があるというのを見つけて。その時は「本当に薬になるのかな」と思いました。その後、エージェントさんから紹介されたときに知っている会社だと思って。どうやら結構うまく滑り出しているようだと。AMED[3]の採択もされたりして、臨床につながれるんじゃないかと。面白そうだと思いました。迷わず入りました。
水戸部(順天堂):私もエージェント経由で初めて知ったんですけど、FMTっていうのはぼんやり聞いたことがあって。簡単に言うと誰かのうんちを他の人に入れる、そんなことしていいのか、みたいなところが印象にあったので、面白そうだなと。前の会社は細胞を培養して人に投与するというオーソドックスなことをしていたので、他の人がやっていないことの方が楽しいよね、というところがあって。あと面接で会った中で、雰囲気がいいなというのが決め手でした。
川端(四国):私はメタジェンを知っていたんですよ。腸内環境測定サービスを使ったことがあって。転職活動のときにエージェントさんに「リモートワークでバックグラウンドを活かせるところ」とお願いしたら、MGTxがいいですよと言ってもらいまして。入社の決め手は、規制がまだない中で当局と一緒にルールを作っていける、日本のパイオニアになれるという点でした。
水戸部(順天堂):入社前後のギャップとしては、前職が結構固めのところだったので、ゆるいなと。システムも最近入れたばかりだったり、まだ整備途中の部分があったりして、ちょっと大変だなと思ったりもしています。
川端(四国):私は逆で、もっとベンチャーなのかなと思っていたんですけど、意外とちゃんとしていて。人事制度もちゃんとしているし、倫理もしっかりしている。
H(群馬):私は、Slackで情報がわーっと流れてきて驚きましたね。前職では携帯でメールを見ることも制限されていたので、文化の違いを感じました。
同じ日がない——順天堂・自宅・四国の1日
川端(四国):3人とも違う働き方をしているわけですけど、水戸部さんの1日ってどんな感じですか?
水戸部(順天堂):日によって全然違っていて、スケジュールの中心がどうしてもドナーさんが献便を出してくれるかどうかで左右されるので。献便が来たら製造や品質管理の作業がボーンと入ってきて、合間に別の検討や準備の作業があったりミーティングがあったり。同じ日がないんですよね。ただ、フレックスの恩恵を受けていて、順天堂での作業が終わってデスクワークだけになったら帰って自宅で続きができるので、電車が混む時間帯を避けられるのは助かっています。
川端(四国):Hさんの1日は?
H(群馬):会議に出て、入っていないときは資料の確認やレビュー。あと毎日やっているのはPMDAや厚生省のサイトで新着情報を確認することですね。
川端(四国):毎日はすごいですね。私、月1ぐらいですよ。
H(群馬):CMC薬事ならではの、日々の規制情報のキャッチアップは必須ですからね。
川端(四国):私はリモートなんですけど、引っ越しが多くても続けられるというのが非常にいいですね。パートナーが教員なので定期的に引っ越すんですが、リモートでいいと言っていただけるのは助かります。しかもMGTxは本当にリモートでできる環境が整っていて、全部オンラインに入れてくれるのでありがたいです。
水戸部(順天堂):なんかコミュニケーションハードルが低いという印象ですよね。前職でも他の部署の人って同じ会社にいるのに接点がなかったりしたので、今の方がSlackで気軽にコミュニケーションを取れるのかなと。
川端(四国):フロアが違うと同じ拠点にいたとしても顔すら合わせないということはよくありますよね。うちの場合はSlackで聞いちゃえばいいじゃん、という感じがすごくある。
決まったやり方がないから、自分で道をひらく
H(群馬):決まったやり方が定まっていない中で、自分たちのやり方を出していって道を切り開いていくというのは面白いですよね。PMDAだと今までの前例がないので。FDA[4]の方だと過去に承認されたものがあるので、そちらの方がちょっと気を使いますね。過去のやつと大きく乖離したものを出すとまずいので、探りが必要です。
水戸部(順天堂):前例がないから自分たちで探っていくというのを面白いなと思っています。便を解析して、こういう菌がいるといいんじゃないかとか、いろんなものが関係し合っている中で規格を決めていく。難しさはもちろんあるんですけど、それをやっていくことこそが面白いなと思っています。あと、石川先生が臨床をやられているので、患者さんへの効果をデータとして聞ける環境にいるのは、すごくやりがいを感じます。
H(群馬):特に難しいと思っているのが、有効成分の規格を決める部分と分析法バリデーション。やり方が全然わからないという状況ですが、FDAが相談に乗ってくれるみたいなので。海外の規制当局とのやりとりなんて自分がやると思っていませんでしたけど、そういうのもやっていけるなら面白いですね。
川端(四国):最後はやっぱり工業化しないといけないと思っています。医薬品として安定供給できる工業製品にするには、コストもペイしないといけないし、安定して作れないといけない。「今回は作れましたけど次回は作れません」だと工業製品じゃなくて工芸製品になってしまう。そこを工業化していくのが面白いところかなと。
「いい人でいよう」とすること
H(群馬):来てほしい人としては、自分でどんどん進められる人ですかね。うちは結構そういう人が多いなと思いますね。指示がないと動けないという人にはしんどいかなと。あとは、CMCとしての専門性を高め合えたらいいなと。どんなバックグラウンドであれ、頑張ったら結構いけるんじゃないかなとは思います。
水戸部(順天堂):製造・品質管理の点でいうと、手技が安定していることと、便を扱うので、それが無理という人はそもそも厳しいですよね。ただ、私もFMTも医薬品開発も全然知らないで入りましたけど、今までやってきたことの中に「これ知ってる」「この知識、役に立つかも」という部分があるので。バックグラウンドが全然違うからと躊躇するんじゃなくて、えいっと飛び込んでみると意外といけるかなと。
川端(四国):いろんな人が助けてくれようとする文化がすごくあるなと感じています。部署を問わず、「あの人ちょっと今大変だから手伝おうぜ」みたいな雰囲気がある。ベンチャーってもっと全員が血まなこになっているイメージでしたけど、全然そういうわけでもない。
H(群馬):安心して来てほしいと思いますね。MGTxの5つのバリューの中に「ライカブル (Likable)」というのがあって、いいやつが集まってきているかなと思います。
水戸部(順天堂):私もまだ1か月しか経っていないですけど、そのライカブルという言葉は面接のときから聞いていて、すごくいいなと思っていて。私は別にいい人かどうかは分からないんですけど、いい人でいようかなというのはなんとなく思ってきていて。 入ってみて、皆さんとコミュニケーションをとって、いい人たちばっかりだなという感じで、すごく楽しく生きています。
川端(四国):いいですね。「いい人かどうかは分からないけどいい人でいようとしています」って、すごくいいフレーズですね。自分がいいやつですって言う人にいいやつはあんまりいない気もしてたんですけど、すごくいい言い方だった。今日の一番の名言ですね。
CMC人材募集中
メタジェンセラピューティクスでは、鶴岡拠点の原材料製造・品質管理を中心に、CMC人材の採用を強化しています。医薬品業界の経験がある方はもちろん、食品工場や医療機関からのキャリアチェンジも歓迎です。「医薬品づくりに関わりたい」「新しい挑戦をしてみたい」——そんな方のご応募をお待ちしています。
以上、当社CEO中原拓のNote(2026年5月2日)より。
<注釈>
[1] 分析法バリデーション:医薬品の品質試験に使う分析方法が、目的に対して正確・精密に使えることを科学的に証明する手続き。
[2] PMDA:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構。日本の薬事規制当局で、承認審査や安全対策を担当。
[3] AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構。MGTxは同機構の創薬ベンチャーエコシステム強化事業に採択されている。
[4] FDA:米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)。米国の薬事規制当局で、医薬品・医療機器などの承認審査や安全対策を担当。
【免責事項・利益相反(COI)の開示】 中原拓はメタジェンセラピューティクス株式会社の代表取締役社長CEOであり、博士 (理学)を有する基礎的な科学(バイオインフォマティクス)の専門家です。本記事は、マイクロバイオームサイエンスおよびFMT(腸内細菌叢移植)に関する最新の科学的知見や業界動向の共有、ならびに当社のビジョンをお伝えすることを目的としており、特定の医薬品の広告・宣伝、および個別の患者様への医学的アドバイス(診断・治療の推奨)を目的とするものではありません。 本記事で言及されるFMTや関連技術には、現在研究開発段階にあり、薬機法上の承認を得ていない未承認医薬品・治療法が含まれる可能性があります。これらの有効性や安全性は確立されたものではなく、将来的な承認を保証するものではありません。 ご自身の病気や治療に関しては、必ず主治医や専門医療機関にご相談ください。また、中原拓は当社の株式を保有しており、本記事の内容には当社事業に関連する利益相反(COI)が存在します。