複雑化するECビジネスをシンプルにするノウハウでクライアントに貢献
株式会社SimpCo は、ECコンサルティングを手掛ける、2024年1月設立の新鋭である。
同社は、ECモールや自社ECサイトを運営する大手企業に対し、その運営を代行するサービスを通じてクライアントの収益拡大に貢献している。
同社のECコンサルティング事業の根幹は、複雑化する一方のECビジネスをシンプルにするノウハウを社内に蓄積し、創出する高度な専門性をクライアントに提供していくことにある。
同社がこうしたサービスを展開している理由として、EC事業者の外的要因と内的要因が挙げられる。
外的要因としては、EC事業者が消費者から選ばれにくくなる一方という環境がある。EC市場は毎年10%程度伸び続け、この5年間で1.6倍に進展している一方、ECへの出店者は2.4倍に増えている。また、消費者を誘導するネット広告市場は2倍に増えている。つまり、出店者や広告費の伸びに市場の伸びが追い付いておらず、EC事業者は消費者から選ばれにくくなっていると言える。
内的要因としては、EC運営業務の複雑化が挙げられる。商品をつくってECモールに掲載すれば済むという単純なものではなく、決済や配送等のフルフィルメントや広告の運用、販売促進施策の企画・実施等、手間暇がかかる。そこで、広告運用やECモール運営、物流管理等それぞれを効率化させるツールがリリースされているが、全部を使いこなせる人材はいない。かつ、現在の求人難の時代、そういったスペシャリストを採用することもままならない現状があるのだ。
「このような内外の問題に対し、当社は複雑な業務を標準化して、当社コンサルタントがオペレーションできるようにノウハウをマニュアルの形で整備・蓄積しています。そして、クライアントのEC担当者を雇用する人件費や販管費の一部を当社に振り向けていただく形で当該業務を代行し、クライアント内では難しかったECでの売上拡大を実現させているわけです」と代表取締役の児玉康次氏は説明する。
なお、代行ではなく、クライアントにおける内製化のニーズにも対応はしている。
「ところが、内製化しても大手の場合は人事異動やセクショナリズム等で定着やスムーズな運営が難しく、結果的に当社にアウトソースする形で戻ってくるケースが大半です」と児玉氏は打ち明ける。
ECコンサルティング企業は数ある中、同社の強みは大手に特化していること。標準化は、取扱量の多さがモノを言うからだ。
また、児玉氏の大手企業の経歴において、そんな大手企業とのネットワークを培っている点も強みと言える。
設立から1年半で12社のクライアントと取引し、2年目は初年度の3倍の粗利益を上げるという計画を順調に進めているのは、その強みの証しだと言える。
社会の変化から起こる世界中の「複雑」を「簡単」に
児玉氏は、インターネット広告事業等を手掛ける会社や、ソーシャルメディアプラットフォーム等を手掛ける会社、ECモールの運営会社、および共同創業したマーケティング支援会社で、新卒以来計18年間一貫してデジタルマーケティングに携わった後、同社を設立させた。
「大手企業ばかりを長く経験する中で、ノウハウの属人化や、ノウハウが人事異動や組織改編で社内に蓄積されにくい、事業部間で共有されにくいといった問題点を体験してきました。そして、ECモールの運営会社では前述のECにおける内外の要因を見てきたのです。ここにビジネスチャンスがあると、ソーシャルメディアプラットフォーム等を手掛ける会社の同僚とマーケティング支援会社を共同創業して、マーケティングやECコンサルティング業務に着手しました。その後、自分の考えを100%実践できる環境をつくろうと考えて、2024年1月に当社を創業したのです」と児玉氏は経緯を説明する。
掲げたMission、Visionは次のとおりだ。
●Mission:社会の変化から起こる世界中の「複雑」を「簡単」にし、豊かな社会を創る。
●Vision:「売る」と「買う」にまつわる多種多様なビジネスの、「複雑」な仕組みを「簡単」にする。
これらの思いについて、児玉氏は次のように話す。
「当社が行うべきMissionとしては、世の中の複雑なことを簡単にするというシンプルな言葉に整理しています。一方、当面のVisionとしては、その中でも“売る”と“買う”にフォーカスし、特にビジネスチャンスを見出している伸び盛りのECにおいてMissionを実行することを掲げています」
会社は誰のものかという議論がある。株主のもの、従業員のもの、顧客のもの、そして納税者という点で社会のものでもあると児玉氏は考える。
「その中で、最もインパクトを発揮できるのは社会に対してだと思います。ですから、当社の事業を通じて社会を豊かにすることに貢献したいと考えています」(児玉氏)。
当面の業績目標は、創業2年目の2025年度に初年度の3倍、3年目の2026年度は前年度のさらに3倍(初年度の9倍)の粗利益を上げることだ。
「現在まで、目標達成のオンペースが続いています。ただし、今後はコンサルタントの増強が最大の課題です。当社もAI等のテクノロジーはポジティブに活用して効率化を図っていきますが、一定の頭数が絶対に必要です、と児玉氏は呼びかける。
組織運営やマネジメントの基軸は「FORCE」
2025年7月現在、同社の体制は役員2名、社員4名、および業務委託8名、インターン8名の計22名。その組織運営やマネジメントの基軸として、次の「FORCE」というValueを掲げている。
●Value:
Fair:誰に対しても公平である
Open:開かれた意識・環境を心掛ける
Rapid:迅速な対応を心掛ける
Care:自分自身だけでなく、他者に気に掛ける
Equal:誰に対しても対等な関係を築く
この浸透・促進策について、児玉氏は次のように説明する。
「同じゴールを目指していても、考え方を常に擦り合わせていないとどこかでズレが生じるもの。そこで、少人数の現状では、朝会や全社員との週1回の1on1の機会を設ける等、折に触れてFORCEについて伝えています。こうした機会では、仕事だけでなくプライベートのことも何でも話せる環境づくりをしています。もちろん、私のことも積極的に話していますよ」
人材育成においては、“量が質を生む”という考え方の下、できるだけ機会を与える方針。業務をメンバーに任せ、経験を数多く積ませることが基本だ。ただし、ゴールだけ握ってプロセスを一任するという方法は取らない。
「期待値とずれた結果になりがちだからです。当社では、各メンバーに各タスクのアウトプットをどのようにつくるかのプロセスを事前に整理してもらい、私が確認した上で実行してもらいます。これによって私の期待値とアウトプットの齟齬をなくすとともに、属人性を排除する狙いがあります」(児玉氏)。
各自の工夫やクリエイティビティは、標準的な方法を完全にやり切った上でのオプションとして生かせるもの。「標準的な方法をやり切らないで独自の方法を試しても、それがどれだけ効果があるのか差分が分からない」と児玉氏。
「ですから、マネジメントとしては『やり切る』ことと、『コト』へのフォーカスを強く意識して当たっています」(児玉氏)。
「コト」へのフォーカスとは、例えばミスが生じた場合は、ミスをした本人ではなくミスが生じた原因を追及するということ。なぜミスをしたのか、の「なぜ」を掘り下げて原因を突き止め、二度と繰り返さないように解決策を講じるという考え方だ。
「状況に応じて、硬軟や強弱の最適なバランスを取りながらマネジメントしている感じです」(児玉氏)。
働き方としては、オフィスワークが基本。ただし、現在でもプライベートの都合で地方在住のフルリモートワークの社員もいる。「家族の都合を配慮して、柔軟に対応している」と児玉氏は話す。
そんな同社の求める人材像について、児玉氏は次のように話す。
「一言で言えば“素直でいいヤツ”という、話していて気持ちがいい人であることを最重視します。また、数字を使って話せることや、最後までやり切れる粘り強さもあればなお嬉しいですね」
今、入社すればコアメンバーとして会社づくりにも参画できる。市場や会社と共に成長していきたい人には、見逃せない募集だろう。