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お客様や業界のためになるならやり続ける覚悟がある。年間数千万円をかけてユウマペイントが研究所を持つ理由

経常利益と同等の費用がかかる研究施設を持っていると言われたら、あなたはどう思いますか?それも売り上げに直結しない研究施設だと言われたら「そのような施設を辞めて、利益を上げる方がいいのでは?」と思うのではないでしょうか。

ユウマペイントでは2018年より、このような施設を持ち、塗料の研究を重ねています。またそこで把握したデータは全て開示をし、同業者に提供をしています。

なぜそのようなことをしているのでしょうか。

今回はユウマペイントが持つ研究所がどのような施設なのか、研究所を始めようと思った背景、研究所が持つ可能性など、ユウマペイント代表取締役である佐々木社長にお話を伺いました!

佐々木拓朗 / 代表取締役

16歳のときに不良の先輩の言われるがまま、塗装業界に入る。22歳のときに独立し、株式会社ユウマペイントを設立。設立13年を迎えた2020年では、千葉県柏市で7年連続No.1の施工実績を誇るまでに成長。2021年8月、東京都江戸川区に「外壁塗装のZERO」の第1店舗目をオープン。

結果的にお客様に嘘をつくことを防げる

ーーユウマペイントが持つ研究所はどのような施設なのか教えていただけますか?

宮古島にある日本ウェザリングテストセンターという公的な暴露試験場を2坪分ぐらい持っています。2018年から所持しており、年間数千万円ほど費用がかかっています。

そこで何をしているかというと、国内で販売されている塗料を450検体分ぐらい用意し、塗料の良し悪しを検査しているんです。

ーー日本ウェザリングテストセンターは、宮古島以外にも北海道の旭川市と千葉県の銚子市にもありますが、宮古島の試験場を選んだのは、どのような理由からですか?

ユウマペイント本社がある千葉県と比べて、宮古島の紫外線の照射量が約3.7倍あるからです。そもそも塗料というものは、水を弾くためのもので、塗料が紫外線に当たることによって、水を弾く力が徐々に劣化していきます。

そのため、紫外線の照射量が多い宮古島で塗料の実験をすることで、耐久性がどれくらいあるのかという結果が早く出やすいんです。具体的に言えば、宮古島での1年間の暴露試験は、千葉県での約4年間に相当し、4年間で塗料がどこまで劣化するのかがわかります。

このような暴露試験ができるのは宮古島が日本で唯一なので、選びました。

銚子市の試験場は、海の近くで潮風が当たると、耐久性がどのようになるのか、旭川市の試験場は、豪雪地帯で日があまり当たらない環境だと、耐久性がどのようになるのかを検証する施設です。

今後、旭川でも試験を開始する予定でいます。

宮古島にある日本ウェザリングセンターの写真です!

ーー研究所があることで、何を得られていますか?

一言で言うと、塗料の良し悪しを自分たちで判断することができています。

研究所を持つまでは、塗料メーカーさんが作ってくれたパンフレットや塗料メーカーの言うことだけが頼みの綱だったんですよ。したがって、塗料メーカーが「世界最高峰の塗料」と言えば、本当かどうかは別として、それを信じるしかありませんでした。

業界では10年間の耐久性を保証するのが一般的な水準です。そのためお客様にも「10年間は家を守れます」と伝えて、サービスを提供しています。

しかし、10年間家を守れるという塗料を使っていても、厳密には10年間家を守れないことがあるんですよ。そしてその原因を深く理解できている人はほとんどいないと感じています。悪意はありませんが、それは結果的にお客様に嘘をついていることに繋がります。

プロとして提供しているサービスなので、悪意がないからと言って、本当の意味でサービスの良し悪しの判断が出来なかったり嘘をついてもいいことにはなりません。そのような結果的に嘘をついてしまうことを、研究所を持っていることで防ぐことができると考えています。

業界への贖罪と業界から逃げずに役立つことをしようという覚悟から研究所を持つと決めた

ーー職人さんの技術を上げることで、耐久性を上げることはできないのですか?

職人の腕で変わるのは、綺麗に塗料を塗れるかどうかということだけで、耐久性を上げることはできません。どれほど腕が経つ職人が一生懸命塗っても、塗料次第で3年や4年しか家を守れないこともあります。

そのためどのような塗料を選ぶかは、とても大事なんです。

ーー研究所を持つまでは、塗料はどのように選んでいたんですか?

差別化塗料といって、塗料メーカーが実施する独自の試験を通った施工店しか買えない塗料があり、それを選ぶようにしていました。ユウマペイントは、全国のありとあらゆる塗料メーカーの試験に合格して、良いものだと思える差別化塗料を使っていました。

しかし、塗ってから数年経ってみて分かったのですが、全ての塗料が優れていたわけではありませんでした。塗装工事をした後に行う定期点検で、塗料をチェックすると「これが本当に差別化塗料なの?」と疑問に思うこともありました。

それでも業界では「売れているからいいのでは?」という意見もあったんです。ただぼくはユウマペイントを"儲かる会社"ではなく、"お客様が安心してくれせるための家を守れる会社"にしたかったので、その意見には賛同できませんでした。

そのような業界への疑念を抱えていたときに、ひとつの事件が起こり、研究所を持つと決めました。

ーーひとつの事件、、、

2016年にあるメーカーの塗料で不具合が発生したんです。それも自分が開発に携わっていた塗料でした。

手前味噌ですが、業界ではある程度自分の名前と会社の名前が知れ渡っていて、2011年からその塗料の開発プロジェクトに呼ばれて、参加していました。開発していた塗料は、世の中に広まれば、日本の塗装業界のレベルが1つ上がるぐらい画期的な商品だったんです。

ただ暴露試験は行わず、人工的な放射線を当てる促進耐候性試験だけでしか検証を行っていませんでした。そのため、販売前に「もう少し検証を加えて、改良すべきだ」とぼくはメーカーに指摘し続けていました。ただ明確な根拠がなく、受け入れてもらえなかったんです。

そして、暴露試験なしで、2014年に販売されることになりました。不安を抱えていたものの、力を入れていた商品でしたし、業界を変えるかもしれない商品だったので、全国で講演を開き、PR活動を行っていました。

そのおかげもあってか、今までの塗料にはないぐらいの売れ行きで。ユウマペイントでもこの塗料を採用して、2016年までに90棟の家に塗装させていただきました。

そして2016年に、あるお客様の家に定期点検に行った際に、塗料に不具合があると分かったんです。結局90棟全ての家を4年かけて、別の塗料で塗り直すことになりました。

ーー損失はどれくらい出たんでしょうか?

合計で1億2000万円以上の損失でした。

ユウマペイントが行った定期点検で全国的に初めて不具合があることが分かったので、メーカーに報告しました。また業界のネットワークを使って、全国の塗装会社に「この塗料にはこのような不具合があるから、このような対策をすべきだ」ということを発信しました。

とはいえ、講じた対策が本当に効果のあるものかわからなかったため、ユウマペイントが先行し、経過観察をしつつ、その都度結果を伝えるようにしたんです。その結果、販売元のメーカーは戦略的M&Aで逃げてしまいましたが、ぼく達のことを咎める会社はどこにもありませんでした。

そういう点では不幸中の幸いではあったのですが、自分としてはそもそも開発プロジェクトに携わっていましたし、業界への宣伝、お客様への提案もしていたので、すごくショックを受けましたね。今まで塗装のプロのつもりでいましたが、全然プロではないと自覚し、大きな挫折を味わいました。悪意はもちろんありません。しかし結果的に、お客様に嘘をついてしまったんですよね。

この事件から、メーカーだけではなく、現場に出ている職人が本当に良いと思う塗料を選べるようにならなくてはダメだと思ったんです。メーカーが言ったことを、自分たちで何も検証せずに使用するのではなく、自分たちでも検証してから自信を持って使おうと決めました。

そして、この事件の翌年に研究所を持つための準備を始め、2018年から研究所を運用し始めました。

ーーそのようなストーリーがあったんですね。

贖罪のつもりでもあるんですよ。「このような塗料を世に出してしまって申し訳ない」と。

この事件があってから、同業者で仲良くしていた会社が潰れてしまったことがありました。原因がこの事件だったかどうか、本当のところはわかりませんが、ぼくはこの事件が原因だったと捉えています。

そのため、自分が潰してしまったも同然なんですよね。当時は本当に腹を切って死にたいと思うぐらい、絶望していました。ただ「逃げたくない」という思いもありました。

自分が起こしてしまったことことなので、その責任を取るためにも、業界やお客様のためになることをできる限り取り組んでいこうと覚悟を決めたんです。

研究所は、費用対効果を考えたら運用しない方がいいんですよ。研究所で得たデータは同業者に全て公開しているので、1円にもならないんです。

ただ同業者やお客様への贖罪と、同業者やお客様のためになることをできる限り行うという覚悟と、その2つの気持ちから研究所を運用しています。

研究所はサービスの品質を保つための場所であり、塗装業界の未来を探究できる場所

ーー実際に研究所を持ってみてどのように感じていますか?

宮古島での研究は、塗料の品質を保つための場所ですし、塗装業界の未来を探究できる場所だと感じています。

現在の売られている塗料の良し悪しがわかるのはもちろん、未来に起こり得る塗り替えを予想することができるんですよ。宮古島では約3.7倍のスピードで塗料が劣化するので。例えば今、宮古島の研究所では、2024年や2028年に千葉県で起こり得る塗り替えを想定して、塗料の実験をしています。

未来のことをある程度予測できるので、そこに向けてどのようなサービスを提供すれば、業界やお客様のためになるか考えられています。

ーー最後に同業者へ伝えたいことは何かありますか?

研究所を持っていると、同業者からは実験結果を教えて欲しいと求められることが多いです。ただぼくは、研究結果ももちろん大切ですが、それ以上に未来に起こることを想定して準備することの方がより重要だと思っています。

研究するためには「こういうことが起こり得るのでは?」という仮説を立てなければなりません。この仮説を立てる力を養うことが今後求められてくるはずです。今もコロナや自然災害など予期せぬことが起こっていますが、これから益々このようなことが増えてくるでしょう。

そのような何が起こるかわからない未来に対して、自分なりに仮説を立て、より良い未来に繋がるように取り組んでいくのが、プロだと考えています。

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