塾講師時代のお話
僕は塾講師時代、数学を教えていました。
そして当時からずっと疑い続けてきた世の中の常識がひとつあります。
それは「わかりやすい先生=良い先生」というもの。
数学は難しいので、とにかくわかりやすく教えてほしい。
日常によくある風景を例にとって説明してほしい。
気持ちは痛いほどわかります。
でも本番である入試の数学では「わかりやすい」だけでは戦えない場面が必ず出てきます。
良い先生とは、ひとりで戦い、答えまで辿り着ける生徒を育てること。
僕はそう考えていました。
そして、「わかりやすい」と「生徒の成長」は時としてトレードオフの関係にありました。
例を挙げてみます。
中学1年生の最初の授業で、今までになかったこんな計算をさせられます。
3-5=?
答えはー2なんですけど、生徒はここで初めて「負の数」に出会います。
この3-5を2通りのアプローチで説明してみます。
プラスとマイナスの個数を比べる
プラスとマイナスを1組ずつ打ち消し合って、残ったマイナスが2つだからー2
とてもわかりやすいですね。
この教え方には僕も大変お世話になりました。
数直線で考える
+3は正の方向(右)に3つ、ー5は負の方向(左)に5つ移動するから、0からスタートすると負の方向(左)に2つ移動したことになる。
だからー2。
突然雲行きが怪しくなってきましたね。
お世辞にも「わかりやすい」とは言えない…。
メリットとデメリット
わかりやすさという観点では圧倒的に個数比べ法に軍配です。
ところが、数直線法には非常にたくさんのメリットがあります。
・数直線の概念は、この先の「比例反比例」「1次関数」「2次関数」の導入になる
・数直線は正にも負にも延々と続くので、∞(無限大)の話が出来る
・絶対値やベクトルの概念の学び始めにとても良い
・そもそも数学の定義としてこちらの方が正しい
どう考えても、数直線法の方が優れているというわけです。
無限大なんてところ、ミラクアと同じですね♪笑
結論、これって永遠のテーマ
教壇から去って約20年、一見なんの接点もない排水処理業の経営者をしていますが、実は毎日のように「個数比べ」と「数直線」の狭間を揺れ動いています。
・久保井さん、この五右衛門でBODはどれくらい下がるんですか?
・社長、例の客先でのトラブル、どう対応すれば良いですか?
・お父さん、空は何で青いの?
どの質問に対しても「個数比べ」的な説明と、「数直線」的な説明が可能です。
「個数比べ」だとどうしてもその場しのぎや、ただの問題の先送りになりがちです。
前任の営業担当が非常に評判が良く、成績も優秀で、そのお客様を担当替えで引き継いだ。
フタを開けてみれば中身はボロボロのグチャグチャだった。
そんな経験ありませんか?
これって前任者が「個数比べ」しかしてこなかった弊害です。
一方、「数直線」ばかり採用していると、話が長い、つまらない、わかりにくいと誰も聞いてくれもしなくなります。
「個数比べ」:「数直線」を何:何くらいのバランスで採用するのが正解なのか、僕にはわかりません。
でも出来るだけ多く「数直線」を採用したい。
そんな葛藤と闘いながら日々を過ごしています。
僕の話が長い時は、「今回は個数比べで行きましょう」とそっと耳打ちしてください(笑)