1
/
5

【代表インタビュー】更年期を語るタブーをなくす〜創業ストーリー〜

女性の誰もが通る「更年期」
日本やアジアで根強い更年期のネガティブイメージを壊し、苦しむ女性たちを救いたいとHerLifeLab株式会社を立ち上げた免疫学者のオリガ・エリセーバにインタビューを行いました。


プロフィール
エリセーバ・オリガ
CEO

沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員。ベラルーシ出身。同国国立医科大学卒業後、国立血液研究所医師を経て、96年に来日。大阪大学医学博士課程を修了後、OIST、理化学研究所にて癌免疫研究に従事。


更年期のつらさは我慢するもの?タブー感をなくし、女性を助けたい

「日本の女性たちは、更年期のつらさは我慢するもの、そして更年期は恥ずかしいことだと思っているの?嘘でしょう?!」 当事者女性にインタビューを繰り返す中で、苦しみながらも声を上げられずにいることに驚き、何とか助けたいという思いでHerLifeLab株式会社を2022年5月に立ち上げました。

私が研究するがん免疫学においてはパーソナライズされた個別化医療が進んでいますが、世界人口の半分を占める女性のエイジングに関する研究は極めて少ないことに気付いたことも大きな要因です。

いま、女性の健康や暮らしを支えるフェムテックの商品や取り組みが世界的に増えていますが、そのためにはまず女性の心身に関するサイエンスを理解し、商品開発の基礎となるエビデンスを増やすことが必要だと感じています。


44歳で突然始まった更年期症状理解得られず、負のスパイラルに

私はベラルーシ出身で、20年以上前に血液内科医として仕事をしていました。当時は白血病の治療の選択が少なく、助けることができない患者さんが多くて泣きながら勤務していました。

その時、大阪大学から共同研究で来た先生が日本で研究できるよう文部科学省の奨学金制度を教えてくれたことで来日。大阪大学や理化学研究所、沖縄科学技術大学院大学(OIST)でがん免疫研究を続けることができています。

そんな中、40歳で3人目の子どもを産んだ後に体調がどんどん悪くなり、44歳のある日突然、ひどいホットフラッシュが始まりました。母や祖母から聞いていた更年期だと思い産婦人科に行きましたが「違う」と否定され、有効とは思えない処方をされ、症状はまったく和らぎません。

でも、3軒目の病院の先生が1時間くらい話を聞いてくれました。「私にも分からないことがありますが、一緒に考えながら治療しましょう」と共感してくれたことで、気持ちがとても楽になりました。

その後、ホルモン補充療法で体力は回復したものの、まだ関節痛があったり仕事のパフォーマンスも悪かったり、頭がぼーっとし、物事の覚えがとても悪くて論文を読んでも内容が記憶に残らず、学生に出した課題を翌日には忘れるような状況でした。

それらが不安要素になって自信をなくし、研究室の男性上司に状況を伝えても理解してもらえず精神的にもつらくて、自分を責めてばかり負のスパイラルに陥りました。回復したのはコロナ禍が広がった3年ほど前。自宅仕事になり、庭の草刈りや植物を植えるなど1カ月ほどゆったり過ごした後、ふとパソコンで論文に目を通したところすんなり読めて内容も把握でき、情報が記憶に残っていたのです!ストレスから解放され、しっかり休めたことで回復していました。


50代を前向きに捉える欧米女性アジア女性はネガティブイメージ

医学的な知識を持ち、最新の科学的データを入手できる私でも適切な支援を得るまで3年以上苦労したのだから、一般女性はどれほど苦労しているだろう。そこで、沖縄科学技術大学院大学の起業家育成研修に参加し、2020年10月に日本、台湾、韓国などの女性に更年期についてインタビューを行いました。

明らかになったのは、日本の女性は職場に迷惑をかけるから言えない、
自分の体のことを話すのは恥ずかしいと考えており、アジア諸国でも更年期にまつわる偏見がまん延して女性たちは黙って耐え忍んだり、更年期の現実を受入れさえしない場合もあるということでした。

これは、健康上の問題だけでなく、文化的、社会的な問題でもあります。たとえばドイツでは、50歳を過ぎた人は「第二の人生が始まる!」と考えて大学で学んだり、更年期についても面倒な生理がなくなるので「自由に遊べる」と前向きに捉える人が多いです。

アメリカでは、職場で「私の感情の起伏が大きい時は、更年期のせいだから気にしないで」と伝えるのは当たり前なので、職場でも安心して過ごすことができます。母国ベラルーシでも更年期に対するタブー感はなく、上の世代からの話も良く聞きますし、女性たちはお互い自分のことを話します。

一方、更年期に関する研究は世界的に進んでおらず、治療の選択があまりない状況です。そこで私は、「更年期に対するタブー感とネガティブなイメージを変えたい!」と考えるようになり、その思いを機会あるごとに口にすることで、共感してくれる専門家チームができ、起業につながったのです。


フェムテックにサイエンスを提供人生100年時代の後半をハッピーに

私が1年間、学会に参加できないほど症状がひどかった時、70歳の女性秘書に出張キャンセルの連絡をお願いした時、「私は更年期で入院したので状況は理解できます」と共感してくれて、長い長いトンネルの先に光が見えた思いでした。

人生100年時代ですから更年期が55歳で終わったとして、その先の45年をハッピーに暮らし、充実して働き、活動できるように女性たちを応援していきたい。

そして、若い世代が事前に学べるよう更年期の症状や対処方法などのデータを集積しつつ、女性の老化や更年期に関する研究を重ね、日本やアジア、そして世界中の女性たちの健康寿命を延ばし、ハッピーになるために、知見とノウハウを集めたサービスを届けていきます。

HerLifeLab株式会社's job postings

Weekly ranking

Show other rankings