前職は50人近い規模の上場代理店でした。
で、身も蓋もないことを言うと、
数字を出すのは、いつも同じ数人だったんですよ。
これ、その会社が悪いって話じゃないです。残りの人がサボってたわけでもない。みんな真面目に働いてた。それでも成果は、なぜか特定の数人に偏る。
代理店とかマーケ支援の会社にいる人なら、心当たりあるんじゃないかと思います。どこの会社でも、だいたいそうなので。
僕は9年この業界にいて、ずっと「なんでだろう」を考えてました。この記事は、その答えと、その答えをもとに作った会社の話です。
マーケは、右脳と左脳を同時に動かす仕事
数字を出す人と出せない人の差って、
経験年数でも、努力量でもないんですよね。
差が出るのは、たぶんここです。マーケティングって、数字を読むロジックと、「人はこれで心が動く」っていう感覚を、同時に動かさないと成果が出ない仕事なんですよ。
CPAの悪化をデータで特定する。ここまでは左脳。でも「じゃあ次のクリエイティブで何を言うか」は、ターゲットの生活とか感情を想像する右脳の仕事。この往復を1日に何十回もやる。
片方だけ得意な人は多い。分析が得意な人、感覚がいい人。でも両方を行き来できる人は、50人いて数人。だから成果がその数人に偏る。
つまりマーケティングは、仕事の性質上、属人化する。誰の怠慢でもなく。
業界は属人化を「薄める」ことで解決しようとしてきた
で、業界はこれをずっと「属人化=悪」として扱ってきました。
マニュアル化しよう。標準化しよう。分業しよう。運用は運用チーム、制作は制作チーム。誰がやっても同じ品質になるように。
気持ちはわかるんですよ。属人化は会社としてはリスクなので。その数人が辞めたら終わりだから。
でも実際に起きたのは、「できる人の判断」を平均まで薄めることでした。右脳と左脳の往復が肝なのに、分業でそこを切り離したら、出てくるのは「なんとなくそれっぽい広告」です。標準化された代理店の成果物が、どこも似たり寄ったりなのはこのせいだと思ってます。
属人化を潰すと、成果の源泉ごと潰れる。ここが業界のジレンマでした。
一番モヤモヤしたのは、「伸ばす」が二つあること
なんで業界は薄めるほうを選ぶのか。提案する立場になってから、その理由を自分で食らいました。
お客さんの数字を伸ばすことと、支援会社として会社を伸ばすことが、逆を向くんですよ。
提案するのは僕。受注が決まるのは、僕の提案が刺さったから。でも僕の体は一つで、稼働には限界がある。会社を成長させようと思ったら、案件は部下に任せるしかない。
で、任せた瞬間に、提案のときの解像度は落ちる。お客さんは「あの提案をした人」に期待して契約したのに、実際に手を動かすのは別の人。これは部下が悪いんじゃなくて、右脳と左脳の往復が数年で身につくものじゃないからです。
つまり支援会社って、成長しようとすればするほど、一人あたりの成果が薄まる商売なんです。お客さんのためを突き詰めると、会社が伸びない。会社を伸ばすと、お客さんに返せる価値が薄まる。
これ、経営側だけの話に聞こえるかもしれないけど、現場も同じです。数字を出せる人ほど教育とマネジメントに時間を取られて、自分の一番の武器だった「手を動かして数字を出すこと」から遠ざかっていく。
僕はこれが、ずっと気持ち悪かった。
属人化は悪じゃない。スケールしないのが問題なだけ
僕の結論はこうです。
属人化そのものは、悪くない。むしろマーケの成果は属人性からしか生まれない。
問題は別のところにあって、その判断が「人」にしか入ってないことです。人にしか入ってないから、その人の稼働時間が成果の上限になる。辞めたら消える。教えるにも何年もかかる。
薄めるか、諦めるか。今まではこの二択しかなかった。
でも、AIが出てきて三つ目の選択肢ができました。
一人ひとりの頭の中にあるものを外に出して、一つの鍋に集めて、みんなで煮詰めていく。
老舗のうなぎ屋の、継ぎ足しのタレってあるじゃないですか。何十年も継ぎ足されて、どんどん深くなって、職人が入れ替わっても鍋は残り続ける。あれの、マーケの判断バージョンを作る。しかも秘伝にしないで、レシピごとチームに開く。
暗黙知を、暗黙知のままにしない
株式会社スーアは、横浜の小さいマーケティング会社です。少人数で、Meta・Google・TikTokを中心に、20社近いお客さんの広告運用とクリエイティブ制作をやってます。
属人化の中身って、要は暗黙知なんですよね。「あの案件でこういうのが当たった気がする」っていう、できる人の頭の中にだけある感覚。
だからうちの方針は一つで、暗黙知を、暗黙知のままにしない。
うちは月に150〜200本のクリエイティブを作って回してます。新しい配信機能が出たらどこかのアカウントで試すし、ターゲティングの検証も常に走ってる。つまり20社分の「実験」が、毎月この本数で回ってるわけです。
普通の代理店だと、この実験結果は担当者の頭の中に溜まって終わりです。隣のチームには伝わらないし、本人も半年後には忘れてる。せっかくお金をかけて検証したのに、資産として残るのは「なんとなくの経験」だけ。
僕らはこれを全部、鍋に放り込みます。動画のフックは複数クライアントの実際のコンバージョンデータから型として抽出してあるし、配信データは毎朝botが勝手に分析して、数字とコメントをSlackに投げてくる。自社で作ってる「adly」っていうシステム群が、この継ぎ足しと煮詰めを毎日やってます。
で、これは僕一人の話じゃないです。運用で見つかった勝ちパターンは、取締役が毎日の判断にがんがん使ってるし、クリエイティブディレクターの「これは当たる」っていう感覚も型に起こされてる。動画編集のメンバーまで、同じ知見を見ながら作ってます。誰かの頭の中で起きた「当たった」が、翌日には全員の武器になってる。
チームで、1つの脳みそを共有してる感覚に近いです。
だから、美容のクライアントで当たった訴求の型を、翌週には不動産のクライアントで試す、みたいなことが普通に起きる。1社の中に閉じてたら「なんとなく当たった」で終わる知見が、20社を横断して月150本の規模で検証されると、業界をまたいで使える再現性のある型になるんですよ。
少人数で20社回せてるのは、根性じゃなくてこれのおかげです。
50人で数人しか数字を出せないなら、最初から「数人 × AI」で作ればいい。それがSUEAの設計です。
任せる先が「育成中の人」じゃなくて「チームで煮詰めた判断」なら、会社が成長してもお客さんに返す価値は薄まらない。むしろ案件が増えるほどタレは濃くなる。**お客さんの数字を伸ばすことと、会社を伸ばすことが、初めて同じ方向を向く。**前職でずっと気持ち悪かった矛盾への、僕なりの答えがこれです。
正直、まだ全然途中です
かっこよく書きましたが、実態は発展途上です。
なにせ、この会社でまだ一番鍋に入れきれてないのは、僕自身の分なので。戦略も運用もクリエイティブもシステムもお金周りも、まだ僕に寄りすぎてる部分がある。僕の頭の中の残りを鍋に入れる作業を、毎日ちょっとずつやってる真っ最中です。
つまり今のSUEAは、完成した仕組みに乗る場所じゃなくて、「人の判断をどうやって写すか」を一緒に作るフェーズです。ここを面白がれるかどうかが、たぶん一番大事な相性だと思います。
こんな人と働きたい
- 数字とクリエイティブ、片方じゃなくて両方動かしたい人。もしくは片方は得意で、もう片方を鍛えたい人
- 「なんで当たったんだろう」を放置できない人。自分の勘の中身を言葉にすることが苦じゃない人
- 自分の判断力が、会社の仕組みとして残る場所に興味がある人
あなたが今いる会社の「数字を出す数人」なら、その判断力はここでは薄められずに、そのまま資産になります。まだそうじゃないなら、できる人の判断がロジックとして可視化されてる環境は、たぶんどこよりも早く育てます。自分の暗黙知を脳みそに差し出す代わりに、チーム全員分の暗黙知が自分の武器として使える。そういう交換です。
逆に、決まった業務を淡々と回したい人や、大きい組織の安定が欲しい人には、今のSUEAは向いてないです。優劣じゃなくて、フェーズの話として。
最後に
「業界を変える」みたいなデカいことを言うつもりはないです。
ただ、マーケティングにおけるAI活用の、一つの正解。正解って言うと言い過ぎなら、「一つのいい感じの学説」くらいの理論なら、僕らで作れると思ってます。
20社近く、月150〜200本の実験と、それを鍋に継ぎ足す仕組みが毎日回ってる環境って、実はそんなにない。ここで数年やれば、「属人化は薄めるものじゃなくて、集めて煮詰めるものだ」っていうのは、仮説じゃなくて実証された理論になる。
これを一緒に面白がってくれる人を探してます。
ちょっとでも引っかかったら、まずはカジュアルに話しましょう。