こんにちは、東急株式会社「URBAN HACKS」採用担当です。
URBAN HACKSは、交通事業を軸に不動産、生活サービス、ホテル等多彩な事業を展開している東急株式会社が、街づくりにおけるDXを目的に、2021年7月より生まれた新組織です。現在、新たなイノベーションを生み出すべく、積極採用を進めています。
今回は、3年目を迎えるURBAN HACKSプロジェクトの「これまでとこれから」について、VPoEの宮澤さんにお伺いしました。
前編では、プロジェクト1年目~3年目現在でそれぞれどのようなビジョンを持ち、プロジェクトを推進してきたのかお話しいただきました。壮大かつ綿密なビジョンに、東急全体の今後の発展が想像出来る内容です!
「点を線にして面にする」URBAN HACKSの10か年計画
―現在VPoEの宮澤さんですが、URBAN HACKS発足前の2021年4月から、プロジェクトオーナーとしてジョインされています。組織として発足する前の様子を教えてください。
宮澤:立ち上げ前にはまず、3つのフェーズに分けた5か年計画を立てました。東急は一兆円企業で連結子会社は約130あるので、入社当時から「やるべきことは相当多いだろう」と思っていたからです。計画のイメージは、プロジェクトを通してフェーズ1で「点」を作り、フェーズ2で「線」にして、フェーズ3で「面」にする…というものです。その後10か年計画でフェーズ5を目指す計画に進化させ、3年目となる今はちょうどフェーズ3に向けて進んでいます。
前半の5年では、「面」としてデジタル共通基盤や顧客基盤を作り、事業をまたいでお客様の認知を得られている状態を目指します。お客様のことを知らなければ、いいサービスは作れないからです。いいサービスを作るため、まずは顧客理解のために必要な基盤づくりを、この3年間で進めてきました。
そして、URBAN HACKS自体が「プロジェクトありきの組織」ですので、プロジェクトに応じて組織を変化させていきました。このやり方は、3年目の今も変わっていません。
―これまでの3年間を振り返って、まず1年目で推進してきたことを教えてください。
宮澤:立ち上げ時は10人ほどから始めながら、スモールチームで、まず「点」を作るカギとなる3つのアプリを新規開発・リニューアルし、顧客接点の改善を進めました。3つのアプリとは、「東急線アプリ」「東急カードアプリ」「東急ホテルズアプリ」です。これらは、2022年9月にリリースを発表しました。
この取り組みで見えてきたのは、「歴史が長い企業だからこそ、システムにも歴史がある」ということです。結局アプリやWebサービスで扱うデータは、昔から事業ドメインが持っている基幹システムや、既存のシステムから引き出してくるものです。かといって、表面的なUIUXの体験を提供するだけでは、顧客体験の改善に限界があります。
そのため、「東急の歴史あるシステムから可能な限り引き出してきたデータを使って、ユーザーにどこまで価値提供できるか」という点に注力しました。1年目は、これらをスピード感を持ってやり遂げたので、非常に価値があったと感じています。
「点」を「線」につなげ、急成長した2年目
―2年目は、どんな点を推進されましたか。
宮澤:2年目は、「点」を「線」にするフェーズでした。具体的には、1年目で作った3つのアプリに関して、アプリの裏側で各社のシステムをつなぎ、アプリの表側では各社の情報を発信できるようにしました。そのため、2年目からは開発チームに加え、システムプランニングや既存システムの一層の理解が必要になりました。
本来、URBAN HACKSの得意技は「顧客接点を磨き続け、ユーザーにいいサービスを提供すること」「そこから顧客データを頂き、さらに新たなサービスを提供すること」「これらを続けること」です。ただし、基盤開発を全て内製出来るわけではないので、既存システムとの連携がとても重要になりました。そのため、SIer経験者を迎え入れたり、プロダクト周辺のシステム理解や、外注も含めた開発・協業の方法を考えながら、中期的なシステム開発に携わるようになりました。
また、2年目はアプリだけでなく、Webの開発にも挑戦し始めました。他にも東急カード+アプリで、協力各社の情報を集めてアプリ上で表示していくという、CMSのような事業も始めました。関連企業のイベントやお得情報を載せられるようになり、東急沿線の消費プラットフォームとして活用いただけるような、顧客基盤に成長できる兆しが見えてきました。
一方、バスの運行情報の扱いについては、時間をかけて課題を一つずつ解消していきました。電車だけでなくバスの情報も連動させることで、移動の顧客体験を向上できていきましたね。
1年目で3つのアプリをリリースしたことで、2年目には各企業から関心を頂けるようになり、いろいろなお声がけを頂けるようになりました。そこで、とにかくお声がけいただいた案件については、可能な限りすべて受けるようにしていました。人を増やしながらできるだけ共創した結果、URBAN HACKSは2年目でも急成長できました。
すべては顧客目線から。戦略とも連動させ、よりよいプロダクトへ
―3年目の現在は、どのようなことを推進していますか。
宮澤:3年目は「面」のフェーズに向かうということで、お客様を「点」ではなく「面」で理解していくために、顧客基盤づくりを推進しました。そして顧客基盤を作るために、TOKYU IDの運用を始めました。
ただし、よくあるイメージで「IDを作れば、バラ色の顧客基盤が出来上がる」というものがありますが、それは間違いです。あくまで、「まず素敵なサービスがあるからこそ、お客様はそのサービスを受けるためにIDを作ってくださる」というのが本質なんです。ですので、まずやるべきことは素敵なサービスや顧客体験を作り続けることです。そうすることで、お客様がIDを作ってくださる流れが出来ます。そこで最終的に作り続けてきた素敵な顧客体験を提供出来ているからこそ、よい顧客基盤が出来上がるのです。
つまり、顧客基盤は企業側が作るものではありません。お客様に、よいサービスを事業をまたいで使っていただくことで、我々の顧客理解が進み、東急の戦略上で「面」のフェーズに移行出来る、というストーリーなんです。
ですので、私たちにとってサービスを提供者目線で作ることは、一番あり得ないことです。URBAN HACKSではまず、「お客様にとってよいサービスを提供し続けること」を念頭に、そのために必要なプロダクトや組織を作ってきました。
そして、マーケティング戦略としてはブランドやマクロ的な面からも、各沿線を比較して理解していく必要があります。デジタル化が進む今の世の中では、「リアルとデジタルの境界線がなくなり、デジタルディスラプションが起こる」と言われていますよね。そんな中、私たちとしても、鉄道や不動産の領域にとどまらず、事業全体としてどう生き残っていくかを考えねばなりません。広い意味でのマーケティングや、SNSの活用など、東急としてまだまだ出来ていない部分もあるので、そういった部分の強化も必要です。そのような背景で、マーケティング人材の募集を開始しました。
また、さまざまな事業を手掛けていくなかで、デジタル開発の前にデジタル戦略があり、デジタル戦略の前には経営戦略や事業戦略があります。そこからの理解が必要ですし、そこが連動していないと最終的によいプロダクトは出来にくいです。なので可能な限り、私たちもより上流からチームで関わっていけるように、デジタルアクセラレーターチームを作りました。事業側と伴走しながらプロダクトに各戦略を反映させたり、新規事業を考えたりする。これが、3年目に進めてきたことです。
―続く後編では、URBAN HACKSプロジェクトの抱える課題や、今後のビジョンをお伺いしました。(後編はこちら)