こんにちは、東急株式会社「URBAN HACKS」採用担当です。
URBAN HACKSは、交通事業を軸に不動産、生活サービス、ホテル等多彩な事業を展開している東急株式会社が、街づくりにおけるDXを目的に、2021年7月より生まれた新組織です。現在、新たなイノベーションを生み出すべく、積極採用を進めています。
前回に引き続き、VPoEの宮澤さんに、3年目を迎えるURBAN HACKSプロジェクトの「これまでとこれから」について伺いました。(前編のインタビュー記事はこちら)
後編では、URBAN HACKSプロジェクトが抱えている課題と、今後のビジョンについてお話しいただきました。東急の枠にとどまらない壮大なビジョンと、それを支える意欲的な組織像がよくわかる内容です!
課題の大きさは、提供価値の伸びしろ
―URBAN HACKSプロジェクトが抱えている、現状での課題を教えてください。
宮澤:課題は大きく分けて2つあり、1つ目はレガシーシステムの理解です。これは歴史の長い会社であるほど出てくる問題であり、東急でもシステムをかなりキャリーオーバーして使ってきました。その間、業務自体も変化していますし、システム変更していても仕様がしっかり残っておらず、オペレーションでカバーしていた部分もあります。その結果、システムの使い方が本来とは違うものになっていたりするんです。それが、顧客接点となるアプリやWebサービスを運営するうえでのハードルになっています。この問題を解きほぐして理解していくことが、今とても大変ですね。近道はないので、一つひとつ地道に取り組んでいます。
その一方で、開発自体はとても順調です。URBAN HACKSには本当にいいメンバーが集まっています。各メンバーがプロフェッショナルですので、マネージャーがいない組織でありながら、個々がセルフマネジメントをして開発を進めています。「自考自走する自律分散型組織」と称していますが、メンバーが100人に近い状況で自考自走出来ているのは、すごいことだと感じていますね。
2つ目の課題は、共創する案件によって、開発前の要件定義がかなり異なることです。事業側はそれぞれ状況が違いますし、要望もかなり多岐にわたります。「既存システムのリプレイスをしてほしい」というものもあれば、「こういう困りごとがあるので、デジタル施策を考えてほしい」という要望もあります。開発がほぼ必要ないものもあれば、課題自体を洗い出すところから必要な場合もあるんです。特に、要件定義から入る必要がある案件には、かなり時間がかかります。
こうした状況から、要件定義の部分を強化するために、サービスデザインやビジネスデザインの作業が必要になってきています。メンバーは100人に近づいていますが、時代の流れに追いついて追い越せるようなデジタルサービスを創れるようになるまでには、正直なところまだまだ人が足りない状況です。
このように、プロジェクトの課題は大きいものの、その分東急グループの資産やビジネスアセットをデジタルに活かせる、ということです。お客様への提供価値の伸びしろは、計り知れないと考えています。ポテンシャルは間違いなくありますし、開発自体はうまくいっているので、今後も課題に対応していきます。
東急内で完結するつもりは、毛頭ない
―URBAN HACKSの今後のビジョンについて教えてください。
宮澤:URBAN HACKS立ち上げ前に作った5か年計画・10か年計画については、キャッチアップ部分のフェーズ3まで、順調に進んでいます。URBAN HACKS3年目の今は、良くも悪くも当初計画を変えることなく進められていて、将来が見えてきています。デジタル完結型のサービスで言えば、5か年の計画はかなり長めです。ただし、URBAN HACKSはデジタルとリアルを連動させていくプロジェクトであり、「どう連動させるか」はとても重要です。そこが私たちのデジタルサービスの強みになりますし、一方でその難しさが参入障壁にもなっています。そのため、間違いなく時間がかかると思っていますが、そこが自分たちの将来的な強みにもなっていくと考えています。
さらに、よく誤解されるのが「URBAN HACKSは東急内だけでサービスを完結させるのでは」ということです。私たちは、東急内のサービスだけで完結するつもりは、毛頭ありません。将来的には、さまざまな自治体や商店街と協業するなど、地域全体の活性化に携わることも考えています。そして沿線に住む人、関わる人を増やしていき、東急沿線を「住みたい街」「行きたい街」にし続けていく、ということが大事だと考えているんです。
ですので、5か年目までの計画は、その目標に向けた一定の道筋を引くためのものです。東急のサービスをまたいで使っていただけるよう開発を進め、顧客理解に努めています。その理由は、自分たちの事業のお客様すら満足に理解出来ていなければ、他のお客様を理解出来るわけがないからです。さらに、自治体や商店街と協業するのであれば、そこへ送客する顧客基盤も必要です。まずはお客様を理解し、増やしていった先に、「東急はどういう事業を新たに始めるべきか」というビジネスオポチュニティが見えてくる。今はそこに向けて顧客理解を進め、URBAN HACKSの足腰を鍛えている状況ですね。
この努力は、東急の将来のビジネスに効いてくる、非常に重要なポイントだと思うんです。ここを飛ばしてしまうと、また「面」から「点」のフェーズに戻ってしまいます。「点」としての単体のビジネスモデルでは、今の時代勝ち目がありません。デジタル化でリアルビジネスの誰もがサプライヤーになってしまう今、私たちには沿線というリアルのプラットフォームを持っていて、一定のお客様がいます。そこに顧客基盤があり、鉄道のトランザクションだけでも10億回近くある。この恵まれた状況に対して「東急ならではの」サービス群を提供させていただく。それらを利用していただくことで顧客理解を深め、顔が見える状況にしたい。というより、しない手はありません。難易度の高い内容ではありますが、ビジネスとしてのポテンシャルもかなりありますよね。
この「見える化」が出来て初めて、他の沿線との差別化が出来ると思っています。「スマートシティ」や「都市のデジタルツイン」などまちづくりにおけるDXのイメージは一般的に語られていますが、都市をデジタル化するためには、まず「都市を知る」必要があります。そして、都市を知るためには、「住む人たちや働く人たちを知る」必要があります。このプロセスなくして都市のデジタル化はできないと思っています。そしてそれができて初めて、いろいろな波及効果を生むことができるのです。例えば都市開発をするにあたり、土地開発のコンペで「東急は、沿線に住んでいるお客様とデジタルサービスを通じて良い関係性を築けていることで『顔が見える』情報をいただけている」「だから確実に送客が見込める」などとPR出来るようになりますよね。地道で大変な作業ですが、他社に優位性を持ちうるシナリオだと分かっているので、楽しみながらやれています。
仕事を楽しみ、人生の糧にする「愚直なものづくり集団」
―最後に、宮澤さんから見て、URBAN HACKSはどのような組織ですか。
宮澤:かなりダイバーシティに富んでいる組織だと思います。そして、根が真面目な人が多いですね。愉快な仲間だったり、一癖ある仲間だったり、似た人がいなくてみんなユニークです。その一方で、真剣に技術に向かい合ったり、今の仕事が自分のキャリアにどう活かされるべきかを考えたり…。仕事にも自分のキャリアプランにもきちんと向き合って、日々成長しつつ成果を出していくメンバーたちです。
東急全体から見ると、「変人集団」だと思われているところがありますが…私も入社した頃は「黒船に乗ったペリーが来た!」と言われたので(笑)。ただ、いろいろな事業と接点を持っていくことで、「URBAN HACKS」の人たちは宇宙人でもスーパーマンでもないんだ、と理解され始めているようです。自分たちでは「デジタル土方」と言ったりしますし。もう、本当に「愚直なものづくり集団」です。仕事は徹底的にやるし、それ自体を楽しんで、人生の糧にする。この雰囲気が大事だと思います。
私は人的資本経営を目指しているので、メンバーの知識や経験を使い減らす考えはありません。「メンバーたちに投資していくことで、自分たちも組織も成長していこう」という考えです。ですので、メンバーたちも自分たちでモチベーションを上げて、愚直に取り組んでくれます。成果を出すためにも、自分たちの成長のためにも愚直に取り組むので、結果として人が強くなり、組織が強くなっていく。URBAN HACKSは、そういう組織です。