こんにちは、東急株式会社「URBAN HACKS」採用担当です。
URBAN HACKSは、交通事業を軸に不動産、生活サービス、ホテル等多彩な事業を展開している東急株式会社が、街づくりにおけるDXを目的に、2021年7月より生まれた新組織です。現在、新たなイノベーションを生み出すべく、積極採用を進めています。
今回は、URBAN HACKSがパスキーを使った開発イベント「パスキーハッカソン東京」に参加したことに関して、その背景や当日の様子を、参加メンバーの皆さん(津久井さん・加藤さん・辻さん)にお伺いしました。
既存のプロジェクトをより成長させるため、外部イベントにも積極的に参加して「楽しみながら学び、業務に活かす」様子に、自由度と視座の高さが感じられました。
自社プロダクトのさらなる成長を見込み、ハッカソンに参加
―パスキーハッカソン東京に参加した背景を教えてください。
加藤:私たちは自社プロダクトにパスキーを採用しているので、「イベントを通して、よりプロダクトを成長させられるのでは」と思い参加しました。母体である東急の性質上、私たちのプロダクトの多くは、物理的なビジネスとWeb上のアプリケーションが密接につながっています。例えば、デジタル乗車券サービス「Q SKIP」には、駅の改札を通る際にスムーズにアプリ上でログインできるよう、パスキーを導入しています。パスキーハッカソン東京は、パスキーを推進しているGoogleのエンジニアや、他社でパスキーを実装されている方とお会いできるイベントです。他社の実装例を見たりコンセプトを聞いたり、ディスカッションしたりという内容も、プロダクトの成長にも繋がりそうだと考えました。そこで、チームメンバー全員にチャットで「どう思う?」と共有したうえで、参加を決めました。
辻:メンバーの反応もかなりスピーディーでしたね。「とりあえず行ってみよう」という感じでした。
加藤:エンジニアに限らず、さまざまなメンバーから参加希望があったのですが、イベントの人数制限をふまえてエンジニア3人、PdM1人、デザイナー1人が参加しました。今回はPdMの裁量で、業務の一環としてイベントに参加しています。ちなみに、年間10万円までの「自己啓発支援制度」を利用すれば、業務外ですがこうしたイベントに参加したり、書籍を購入したりできます。
こだわりつつもスピード感ある制作で、1日でアイデアを実現
―パスキーハッカソン東京の参加に向けて、どんな事前準備をしましたか。
辻:パスキーハッカソン東京は、「一日かけて、パスキーを使った何かを制作する」という内容のイベントでした。そこでまずは、ハッカソンでどういうパスキー製品を作るか、メンバーそれぞれがいくつかアイデアを持ち寄って話し合いました。最初は妄想レベルのアイデアでしたが、最終的には皆のアイデアが融合されて、1つのアイデアになりました。実装は何もせず、当日まで一文字も書きませんでしたね。
―ハッカソン当日は、どのようなものを制作しましたか。
津久井:「ユーザーがパスキーで登録・ログインしている世界」を目指して、「パスキーだけでサインアップする仕組み」と「パスキーを復旧する仕組み」を作りました。まず目指す姿として考えたのは、「東急ストアのレジ前で、パスキーを使ってすぐポイントアプリに登録できること」です。アプリを登録したいと思っても、会員登録やTOKYU IDの登録には住所や氏名の入力が必要です。レジ前で登録作業をするのは、現実的ではないですよね。パスキーを使えば、iPhoneのロックを解除するかのように、スムーズにユーザー登録やログインができます。これが1つ目の「パスキーだけでサインアップする仕組み」です。
ただそうすると、端末自体をなくしたり画面が動かなくなったりといったパスキーを使えない場面では、アカウント自体が使えなくなってしまいます。そうならないよう、2つ目の「パスキーを復旧する仕組み」も作りました。「ユーザーがGoogleアカウントを持っている」という前提で、Googleアカウントとパスキーを連携し、Googleアカウントを復旧手段にしたものです。
その結果、優秀作品に与えられる「FIDOアライアンス賞」を受賞しました。受賞の理由としては「一番ユーザーのペインを考えていた」というありがたいお言葉を頂きました。駅前や駅の改札など、素早くログインしたいタイミングにパスキーを導入したことを、評価いただいたようです。
辻:後日談ですが、別の賞を受賞されたヌーラボさんを私たちのオフィスに招待して、感想戦も行いました。エンジニアの中でも、ID関係のプロダクトを作っている人は割と少数派ですので、知見共有しましょうという話になったんです。同じ悩みを抱えているエンジニアの皆さんと話せて、とても貴重な機会になりました。
―パスキーハッカソン東京に参加して、楽しかったことを教えてください。
加藤:PdMやエンジニアが同じ時間に対面で話し合って、ライブセッションのようにコードを書いたり動かしたりしたのがとても楽しかったです。「こうしたい」「じゃあこう書いてみたらどうだろう?」と、すぐに変更を反映しつつデプロイできたのがよかったです。
辻:確かに、業務とは違う「ものづくりのスタイル」を味わえましたし、アドリブ感が楽しかったですね。とにかく形にすることにこだわりつつ、かなり速いテンポ感で、業務だと書かないようなコードを書きました。
津久井:良くも悪くも「書き捨てのコード」を書けるので、スピード感を持って書けましたね。何も考えずに「とにかく発表できればいい」というやり方は普段あまりしないので、エンジニアになりたての頃のような気持ちで、楽しかったです。あと、事前準備で皆がたくさんアイデアを出してくれたので、アイデアや意見が多すぎてまとめが大変になる事態が結構起きました。それはいいことだと思いますし、皆プロダクトに対するこだわりがあるんだと思います。
辻:皆、熱い想いを持っているのかもしれないですね。
津久井:また書き捨てのコードを書く一方で、事前準備ではアイデアに穴がないか、かなりこだわって考えました。業務として参加していますし、実際にリリースする前提でポイントの法的解釈について議論したりして、しっかり考えましたね。
―逆に、大変だったことはありましたか?
辻:事前準備のアイデア出しで、アイデアの言語化に結構時間を使いました。HOWが目的にならないよう、「こうしたら、どういう人がどういう理由で嬉しいのか」としっかり言語化しました。メンバー全員の認識が揃うまで、同じことを何度も再確認するかのように話し合いましたね。
また、実装は本当に当日だけで行ったので、時間内に実装しきれるかどうかも、結構冷や汗をかきました。途中までは「やばい」と焦りましたが、実装自体はちょうどくらいで終えられました。最終的には、デモを練習する時間も少し取れたのでよかったです。
柔軟なアイデア出しができ、現行プロジェクトにも役立った
―パスキーハッカソンに参加した得た気付きや学びなどの、感想を教えてください。
津久井:既存のプロダクトベースで考えたときに、「ハッカソンという仕組みは非常に効果がある」と感じました。普段の開発では、現実的な目線で考えていくことが基本になりますよね。1年ほど先のことを考えながら、目の前のプロダクトを守りながらスケールしていくことを大切にします。一方でハッカソンの場合は、「実際にリリースしなくても、何か得るものがあればいい」というスタンスで挑めます。2年、3年先のアイデアを出して試せる機会として、非常に有効な機会だと感じました。ハッカソンへの参加は初めてでしたし、普段はこういう感じでアイデアを出したりコードを書いたりすることはあまりないので、刺激的でしたね。皆のプロダクトに対する想いが再確認できて、とてもよかったです。
今後に活かしたいこととしては、「プロダクトを作っていく上で、ハッカソンを定期的に実施したい」ということです。今回、ハッカソンで出た突拍子もないアイデアから「これに関しては今から準備しておいた方がいいよね」という項目が結構出てきました。日頃のエンハンスも大事ですが、ハッカソンに時間をかけるのも大事なのではと感じました。
辻:ハッカソンは良くも悪くもその日限りのプロジェクトですので、既存の制約を無視して自由にアイデアを試せます。目指すべき「tobe」を実現するために、かなり柔軟なアイデアが出たり、「制約を打ち破れば、こんなにいいことがある」という具体的なアピールができたりします。「tobe」を忘れないためにも、定期的なハッカソンの実施はいいことだと私も思います。
加藤:今回は「技術」という軸で、さまざまなエンジニアの方と情報共有したり、事例を聞いたりできたのがよかったです。パスキーハッカソン東京は明確なターゲットが決まっており、パスキーや認証認可の技術について取り組んでいるエンジニアが集まりました。その結果、業務へとかなりダイレクトにフィードバックできる情報も得られました。実際に手を動かすという経験がよかったですし、その上で業務にとって有益な情報も得られて、とても参考になりましたね。また、今回はGoogleのエンジニアを含めたパスキーのエキスパートたちがサポートしてくれました。彼らのおかげで当日の実装はもちろん、日々抱えていた疑問もその場で解決できて、よい経験になりました。