こんにちは、コミューン編集部です。
今回は、モバイルインターネットの黎明期から20代での起業、事業責任者としての上場、そしてJリーグでのスポーツマーケティングまで。常に時代の先端とビジネスの現場の両方を知る、Growth Marketing部 部長の間藤 大地さんにインタビューしました。
多彩なキャリアの裏にある数々の経験やAI時代だからこそ問われる「人間の仕事」について。マーケターとしての矜持と未来への展望をお届けします。
激動のモバイル黎明期と、25歳での起業
間藤さんのコミューンに入社されるまでのキャリアの変遷について、教えていただけますか?
間藤:インプットとアウトプットを繰り返してきたキャリアです。
自分が知らないことを学び、テクニックやノウハウとしてアウトプットする。そうして自分自身に3つ以上のラベル(自身を表現するスキル)を作り、希少価値を高めることを意識してきました。
2007年に新卒で株式会社サイバードに入社しました。当時は、ガラケーの全盛期で、私はモバイルマーケティングのプランナーとして、広告出稿からサイト構築、CRM設計まで「集客×コンバージョン×継続」をテーマに提案を行なっていました。
入社3年目頃にiPhoneが台頭し、モバイルマーケティングの世界が大きく変わりました。アプリやブラウザで自由に情報にアクセスできる時代が到来しました。「ガラケービジネスはすぐにスマートフォンに置き換わる、一方でモバイルマーケティングの基本は変化しないはず」という強烈な危機感と可能性を抱きました。
そこで選んだ道が「起業」だったのですね。
間藤:25歳の時、同じ会社の先輩2人と共に、スマートフォン向けのアプリやサイト開発を行う会社、株式会社パンタグラフを立ち上げました。
起業といっても、最初から華々しいスタートアップ企業ということではなく、立ち上げ当時は、3人だけの会社ですから、実務は泥臭いことの連続でした。そんな中で経営とは何か、事業運営とは何かを肌で学ぶ日々でしたね。リスク面も自分達でとっていたので、大型案件の契約の際には、ハンコを押す手が震える経験をたくさんしました。会社を存続させるためのあらゆるデジタルマーケティングにおける実務をこなしながら、PL管理や採用まで、リアリティのある仕事を約9年間続けました。
事業責任者として上場、そしてJリーグへ
経営に携わった後、また会社員として企業に所属されていますが、どのような心境の変化があったのですか?
間藤:30代半ばで「学習曲線、成長曲線が緩やかになっているのではないか」という焦りを感じ、更なる挑戦を求めるようになったときに、株式会社CINCから「上場を目指すから、役員として参加してほしい」とお誘いをいただきました。組織マネジメント、社員100人の壁、IPO。これらは自身の起業では経験できないことだと思ったこと、デジタルマーケティング、起業に加えて、自分の3つ目のラベルとして「役員としての上場経験」、「上場企業の事業責任者」という経験を得るために、転職を決意しました。
CINCでは、SaaS事業の売上責任者として、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、セールスイネーブルメントまで管掌し、事業全体のPL責任を負いながら、組織を急成長させる経験は、私のキャリアにおける大きな転換点になったと感じています。
4社目に選んだのがJリーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ)ですね。間藤さんのキャリアを聞いた時は驚きました。
間藤:そうですね(笑)。「デジタルマーケティング」「起業」「上場・事業責任者」という3つラベルができた後、次は個人のアイデンティティと向き合いや社会性の高いプロダクトに挑戦したいという思いがありました。
Jリーグでは、パートナーアライアンスとして、スポンサー企業のマーケティング支援を担当しました。保険会社の地域密着施策や、通信会社の相互送客の仕組みづくりなど。企業の課題に合わせてJリーグという資産をどう活用するかを企画・提案する仕事をしていました。
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コミュニティの熱量を知り、コミューンへ
Jリーグでの経験は、間藤さんにどのような気づきをもたらしましたか?
間藤:最も大きかったのは、小手先のデジタルマーケティングでは本物の熱量を生み出せないということですね。それまで、デジタルマーケティングの世界で「どう効率よく集客するか」「CVRをどうやって高めるか」という刈り取り型の領域を突き詰めてきました。しかし、スタジアムで数万人のサポーターが一斉に声を上げ、選手を鼓舞し、勝利を分かち合うあの熱狂。そこにある“ファンコミュニティの力”を目の当たりにした時、デジタル上の施策だけでは到達できないマーケティング領域があると感じました。
どんなに巧みな広告で集客しても、スタジアムでの体験やサポーター同士の横の繋がり、そこから生まれ持ち帰る熱量がなければ、ファンは定着しない。マーケティングにおいて”集客”は手法として確立されていますが、その後の“継続(ファン化)”のプロセスは、まだ科学され尽くしていない、非常に大きなポテンシャルを秘めた領域だと感じました。
そこからコミューンへの入社に繋がるわけですね。
間藤:実はCINC時代に、CSツールとしてCommuneのことは知っていました。当時からコミュニティがもたらす価値について興味ありましたが、Jリーグでの原体験を経て、その重要性が自分の中で確信に変わりました。
長く携わってきたデジタルマーケティングの経験と、Jリーグで感じた“コミュニティ”の可能性。この2つを掛け合わせ、再現性のあるマーケティング手法として確立したい。そう考えた時、コミューンは、私が求めていた挑戦の場としてこれ以上ない環境だと感じたのです。
マーケティグの本質は、顧客との対話
これまでの多彩なキャリアを通じて、間藤さんが辿り着いた「マーケティングの本質」とは何でしょうか?
間藤:“顧客との対話”にあると考えています。
CINCで事業責任者をしていた頃、売上目標を達成するために広告予算を投じて新規獲得数をひたすら追いかけていた時期がありました。もちろんそれも大切なことですが、最も事業成長に寄与したと感じた瞬間は、広告の管理画面や営業支援システムを見ている時ではなく、ユーザー会(既存顧客が集まるイベント)を開催した時だったんです。
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ユーザー会での体験が、考えを変えるきっかけになったんですね。
間藤:そうなんです。ユーザー会では、顧客の声を集め、カスタマーサクセスや機能改善に取り組んでいました。顧客の声から得られるプロダクトの本質的な価値を大切にしたいと考えて行なっていました。そんな中で、プロダクトを使いこなしているお客様に登壇していただき、その成功事例を語っていただくことがありました。私たちベンダー側が「この商品は素晴らしいですよ、便利ですよ」と100回叫ぶよりも、お客様が「このツールのおかげで、こんなに成果が出た」と語ってくれる言葉のほうが、遥かに説得力と反響があり、マーケティング価値があることに気づかされました。
企業からの一方的な発信ではなく、顧客の声こそが最強のコンテンツになるわけですね。
間藤: そうです。お客様の声をコンテンツ化し、それを見た新しいお客様がまた興味を持つ。そして、そこでの対話からプロダクトの改善点も見えてくる。 一方通行のプロモーションではなく、顧客と双方向に対話し、その熱量を循環させていくこと。これこそがマーケティングの本質であり、私が今、コミューンで実現したい「コミュニティ起点」のマーケティングやCustomer-Led Growthの原点になっています 。
マーケターとしての原点と、仕事の美学
では次に、仕事をする上で、間藤さんが大切にされている価値観やエピソードがあれば教えてください。
間藤:原点は、新卒入社直後の「地図」のエピソードですね。
まだガラケーでGoogleマップも携帯で見れない時代に、上司の営業の準備をしていた時のことです。上司はその日、2件のアポイントを連続でこなす予定で、私は訪問先への提案書を印刷するだけでなく、1社目、1社目から2社目への移動ルートを調べ、その動線を示した地図(近隣のカフェスペースと合わせて)を別途用意して、資料の上に置いて渡したんです。これを見た上司に、「受け手の行動を予測して、先回りして準備ができる。その気遣いはマーケターとして素晴らしい資質だ」と大いに褒められました。この時、私は「相手が何を考えていて、次にどう考えるか」を想像し、先回りしてソリューションを用意することの重要性を学びました。それは、クライアントへの提案においても重要なことです。相手の抱えている課題を想像し、「この提案をどう受け取るか」という受け手目線で資料やコンテンツ、プロダクトを作る。この「想像力」こそが、私の仕事の根底にある価値観です。
今、コミューンではマネージャーとして組織を率いる立場ですが、チーム作りにおいて意識されていることはありますか?
間藤: これまでもよく伝えてきたのは、「事象の抽象化」と「期待値のコントロール」についてです。特にスタートアップでは日々、予期せぬトラブルや新しい問題が発生します。逆に成功パターンや好事例もよく生まれます。それらを一つひとつ個別に処理していてはキリがありません。「このトラブルAとトラブルBは、本質的には同じ原因から来ているのではないか?」と捉え直し、「パターン1の事象に当てはまるから、この対策を打つ」といった具合に、具体的な事象を抽象化して構造を理解し、次の具体に活かす。この「具体と抽象の往復運動による型化」ができるようになると、どんな変化にも動じない強いチームになります。
それから、“期待値の100%を正しく把握し、常に101%以上で返す”という意識も大切にしています。マーケターに限らずですが期待値の100%のアウトプットには評価がつかないと考えています。でも1%上回って、101%のアウトプットを実現できれば驚きと評価を獲得することができます。その上で大切なのは、まずは相手が求めている100%、100点のラインがどこにあるのかを正確に把握することです。顧客と対話し調査し、期待値がズレないようにすること、クオリティとスピードも大切です。その上で「+1%の付加価値」「自分だけのエッセンス」をどう乗せるか。その積み重ねが信頼に繋がると考えています。
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AI時代の「編集力」と「熱量」
生成AIの台頭により、マーケティングの世界も大きく変わろうとしています。これからのマーケターには何が求められると思いますか?
間藤: 私は、“編集する力”と“熱量”がこれまで以上に重要になると考えています。AIを使えば、SEO記事や提案書の構成や、それっぽい広告キャッチコピーは一瞬で作れます。しかし、そこには「なぜそのブランドが語るのか」という背景や、書き手の”体温”が不足します。
自身がプライベートで経験した購買体験や業務上でのマーケティング課題、顧客と対話して感じた手触り、そこから生まれた独自の視点。これらをAIの出力結果と掛け合わせ、自分の言葉として編集し直すことですで、人の心は動かすことができると考えています。
AIをツールとして使いこなしつつ、そこに自分自身の体験を乗せ、熱量を込めて編集する。情報の洪水の中で、最終的に選ばれるのは、そうした“滲み出る熱量”を持ったコンテンツや提案なのだと思います。
「信頼」を社会の共通指標へ
最後に、間藤さんがコミューンで実現したい未来について教えてください。
間藤: 新しく価値のあるデジタルマーケティング手法、ひいては新しい経営のスタンダードを創りたいと思っています。
デジタルマーケティングの中心は、これまで短期的な成果に偏りがちでした、これからもそうだと思います。短期で可視化されたデジタルなマーケティングの成果こそ圧倒的優位な集客手法であったからです。しかし、これからのコミュニケーションにおいて、顧客との関係性を深め、ファンになってもらい、共に価値を創り成長していくコミュニティ型のマーケティングや経営が不可欠になると考えています。
コミューンが掲げる“信頼起点経営”という概念。これを単なる抽象的なスローガンではなく、経営の重要指標として確立したいですね。例えば、企業の“信頼スコア”が、将来的に企業のIR資料に当たり前のように掲載され、「この会社は信頼スコアが高いから、持続的な成長が見込める」と投資家や社会から評価される世界。信頼を可視化し、それを高めることが企業の成長エンジンになる。そんな新しい経営のあり方を、コミューンというプロダクトを通じて社会に実装していく。それが、マーケターとしてコミューンで実現していきたい未来です。
間藤さん、熱いお話をありがとうございました!
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