こんにちは!ZERO GROUP株式会社(以下、ZERO)の青木です。
「空き家問題」と聞くと、老朽化した建物や人口減少といったイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、ZEROが向き合っているのは、建物そのものではなく、その背景にある “相続”という構造的な問題です。
今回は、ZEROの事業や想いをより深く知るべく、空き家問題の関わり方について、松下社長に伺いました。
なぜ、多くの不動産会社が手を出さないのか。
そして、なぜZEROはあえてその領域を事業として引き受けるのか。
空き家を「社会課題」として捉え、NPOや行政と連携しながら新しい不動産の形を模索してきたZEROの想いに迫ります。
空き家問題の正体は「相続問題」
青木:まずはZEROが取り組んでいる空き家事業について、まず全体像を教えてください。
松下:空き家事業について語るにあたって、空き家問題の話を先にしておきますね。
一般的には「空き家問題」と言われていますが、僕らはこの問題をほぼイコールで「相続問題」だと捉えています。
「建物が古いから売れない、立地が悪いから使われない」──そう思われがちですが、実際に現場で起きているのはそこではありません。
青木:空き家と相続問題はイコールとのことですが、具体例を教えていただけますか?
松下:たとえば、Aさんが祖父母が住んでいた家を引き継いだ状況をイメージしてみてください。
一見すると「使っていないなら売ればいい」名義を祖父母からAさんに移すだけ。それで済みそうに見えますよね。
でも実際には、祖父母には子ども(親世代)がいて、その子どもにはさらに子どもがいます。
Aさんだけでなくいとこやはとこなど、祖父母の相続に関わる親戚が複数人いるということです。
世代にもよりますが、兄弟が多い家系であればその人数は10人、20人、多いと30人以上になることも珍しくありません。
青木:そうですね。そうなると、何が問題になるのでしょうか。
松下:名義変更がされていない状態の祖父母の家を売るためには、相続人全員の合意が必要なんです。
相続人全員の合意をもらうためには、まずは戸籍を遡って、誰が相続人なのかを特定するところから始まります。
相続人の情報が出たあとは、出生から死亡まで、すべて洗い出す。
この調査だけで、半年以上かかることもあります。
青木:そんなに時間がかかるんですね。でもその時点で情報を洗い出しただけですよね?ということはつまり、そこからさらに調整が必要になる、ということでしょうか。
松下:そうです。
もちろんその中には、連絡先が分からない人や何十年も会っていない親戚、過去に家族間でトラブルがあった人もいるかもしれません。
実際にZEROが受け持った案件でも「もう関わりたくない」「連絡してこないでほしい」と言われることも、よくありました。
それでも、全員のハンコが揃わないと前に進まない。だから、多くの空き家は放置されたままになるんです。
多くの不動産会社は空き家を扱わない理由
青木:そう言った背景で空き家が放置されていたんですね。ではなぜ、多くの不動産会社はこの問題に手を出さないのでしょうか。
松下:理由はシンプルです。時間がかかりすぎるから。
駅前の不動産会社や大手企業は「月に何件契約を取るか」という世界で動いています。
そういう世界の人が空き家問題を見ると、「相続整理に1年かかる案件=今すぐ売上にならない仕事」です。
だからこそ不動産会社の業務としては、どうしても優先順位が下がってしまうんです。
青木:その中で、ZEROはなぜ空き家を引き受けるのですか?
松下:誰もやらないからこそ、そこに価値があると思っているからです。
- 相続人が多い
- 権利関係が複雑
- 弁護士・司法書士・行政書士・税理士など、多くの専門家が必要
こういう条件のある案件は、「売り物になる前段階」の仕事です。
青木:ZERO GROUPは、不動産を“育てている”ということですね。
松下:まさにそうです。
多くの不動産会社は、すでに「売れる状態」の物件を扱っています。
でも僕らは、売れない状態のものを、売れる状態にしているんです。
時間も手間もかかりますが、その分、他社と競合しにくい領域になります。
青木:空き家問題を「事業」として成立させるために、意識していることはありますか。
松下:僕は「高く買って、早く売る」という不動産のモデルには、限界があると思っています。
その背景には、僕がリーマンショック後にこの業界に入ったことがあります。
価格が下がり、高値掴みで倒産していく不動産会社をたくさん見てきたからこそ、「不動産価格は、必ず上下し、上がり続けることはない」ということを知っているんです。
だから僕らは、絶対金額で安く仕入れることを重視しています。それができるのが、「誰も扱わない空き家案件」です。
青木:空き家事業は価格競争には入らないということなんですね。
松下:私たちが担当する案件は、そうです。
たとえば、相続人が多すぎて「誰も買わない」「値段がつかない」家をイメージしてみてください。
他社に売ろうとした場合、誰も買い取ろうとしないため、買取価格は0円です。
一方で私たちは専門家と連携して相続問題を整理し、売れる状態にしてから引き取ります。
その結果、該当物件を適正な価格で仕入れができ、事業としても成立できるのです。
NPO参画と、行政連携が生んだ転換点
青木:NPOや行政との連携も、ZEROの強みですね。NPOとの連携を始めたきっかけはありますか?
松下:きっかけは、「空き家の相談は、不動産会社だけでは解決できない」と強く感じたことでした。
空き家の持ち主の方と直接やり取りをする中で、「売りたい」「どうにかしたい」という気持ちはあるのに、相続の問題や名義の整理ができていなくて、前に進めないケースを本当にたくさん見てきました。
こうした問題は、不動産の知識だけでは解決できません。
法律や税務、場合によっては福祉の視点も必要になります。
大阪空き家相談センターというNPO法人に関わり始めたのは、5年ほど前です。
最初は正直、売上につながることはほとんどありませんでした。
コロナ禍もあり、数年間はロビー活動や地道な関係づくりが中心です。
青木:それでもその関係を続けた理由はどこにありますか?
松下:行政と信頼関係を築かないと、空き家問題は解決できないと思ったからです。
正直、空き家問題は、個人や一企業だけで解決できるものではありません。
その成果もあり、今では行政から直接相談が来るような環境を作ることができています。
複数の自治体と連携協定を結び、「またややこしい案件が出ました」と役所から直接連絡をいただくこともあります。
これは、一般の不動産会社ではなかなか築けない立ち位置だと感じています。
行政と連携することで見えた「空き家の次の役割」
青木:行政と連携することで、新たに見えてきた価値はありますか?
松下:空き家は、住宅弱者の受け皿になれるということです。
生活保護を受けている方や高齢で一人暮らしの方、児童養護施設を出たばかりの若者などは、民間賃貸では、審査が通らない人たちです。
そんな人たちに、もし空き家を貸すことができるなら、空き家だからこそ、家賃を低く設定することもできるかもしれません。
さらに行政と連携することができれば、生活保護費の範囲内で住んでもらうこともできます。
そうすれば空き家が埋まり、人が住み、地域が少しずつ循環して、町が生まれ変わると思いませんか?
青木:そうですね!まさに、まちづくりそのものですね。
松下:そうなんです。
ZEROで目指す空き家事業は、家を一軒再生して終わり、ではありません。
周囲が空き家だらけでは、結局新しく住む人は増えないんです。
だからこそ、エリア全体で空き家を減らし、人を流し込むことを考えています。
新築を増やすのではなく、今あるものをどう活かすか。これがこれからZEROが目指していくゴールです。
10年後に描く、空き家の未来
青木:10年後、どんな未来を描いていますか。
松下:理想は、行政版の空き家プラットフォームのようなものができたらなと思っています。
どこに空き家があり、どんな人が住みたいのかが見えるもの。生活保護の方やシングルマザー、地方で暮らしたいリモートワーカーなど、空き家を通じて、人と地域をつなぐ役割を担いたいです。
青木:ZEROが、この事業を続ける想いを教えてください。
松下:誰もやらないからこそ、自分たちがやる意味があります。
社会課題を解決しながら、事業としても成立させる。簡単ではありませんが、それができると信じているから、ZEROはこの領域で今後も戦い続けていきます。
最後に
空き家問題を「相続問題」と捉え直すことで、不動産業界よりもさらに広い視点で事業として向き合うZERO GROUP。
誰もやらない領域にこそ価値があるというその姿勢が、これからのZEROを作り続けていくのだと感じました。
空き家事業に取り組むメンバーの話も別のインタビューで紹介しています。
気になるメンバーのストーリーをぜひ読んでみてくださいね。