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日本を支える海事産業をDX。未開拓市場で急成長を遂げるザブーンの可能性

島国である日本に欠かせない海運。海外貿易はもちろん、国内の物流においても、その大半は船が使われています。しかし、船を作り、船を動かす『海事産業』の就労者は右肩下がりで、数十年後も同じ質のサービスを維持できる保証はありません。

そんな海事産業をITの力で後押しするために設立したのがザブーンです。多くのアナログ業務が残る海事産業に特化したDXサービスを提供することで、人材が減っても生産性を維持できる仕組みを作っています。

船員の労働管理や書類管理など、多くの業務をデジタル化するため、次々と新しい機能を開発してきました。今回は、そんな私たちの取り組みを一緒に盛り上げてくれる仲間を募集するため、CEOの戸髙とCTOの三浦にインタビューを実施。サービスにかける想いを聞きました。


世界有数の海事大国・日本が抱える大きな課題

―まずは海事産業とはどういうものなのか聞かせてください。

戸髙:海事産業とは海運業、造船業、舶用工業という船を中心とした産業界を指します。船を作り、船でものを運ぶ業界のことで漁業などは含まれません。

現在、世界では大小含めて約12万隻もの船が運行しており、そのうち日本の船は7,000~11,000隻。つまり、日本は世界の約8%という大きな市場を保有していることになります。特に日本で最も海事産業が盛んな今治市は、世界4大海事都市に数えられるほどで、日本は世界有数の海事大国です。

―そのような日本の海事産業は、どのような課題を抱えているのでしょうか。

戸髙:最も大きな課題は急激な人材不足です。日本の海事産業が盛んだった戦後に比べ、その就労人数は3分の1にまで減少しています。

かつては陸の仕事に比べて給与が高く、若い方にとっては憧れの仕事でしたが、その給与も陸の仕事と変わらなくなり、かつハードな労働環境から若者から敬遠されるようになりました。

そのような状況が続き、今では現役の船員の約半数が高齢者という事態に。あと20年もすれば、船で働く人は半減してしまうでしょう。船を動かす人が減れば、当然ながら物流にも大きな支障をきたします。島国の日本では海外物流の99.7%、ほぼ全てを海運が担っていますし、国内の物流も約40%を海運が占めているのです。

このまま船で働く人達が減り続ければ、私たちの生活にも大きな影響を及ぼすことでしょう。


家業を継いで見えてきたアナログな労働環境が起業のタネに

―戸髙さんが海事産業で起業した経緯を聞かせてください。

戸髙:私は大分の実家が船舶管理業を営んでおり、小さなころから海運を身近に感じて育ちました。新卒でITの会社に就職をしたのですが、2年ほど働いて実家に帰り家業を継ぐことになったのです。それから今まで10年以上、船舶管理の責任者として主に化学薬品を運ぶ船の監督をしています。

業界の課題を強く感じたのは、自分自身も船に乗って航海した時のこと。これまで当たり前にいた船員さんたちも、いずれ引退すると考えた時に、日本の物流がどうなるのか考えたんです。『このままではまずい』と思ったものの、船で働く人を急激に増やすことはできません。

それなら少ない人数でも事業を続けられるように業務を効率化するしかない。そう思ったのが起業のきっかけです。

―船員さんは船の上でどんな仕事をしているのでしょうか。

戸髙:大きな仕事の一つが船のメンテナンス。船というのは、100~300mもある巨大な鉄の塊です。しかも常に塩水に浮かんだままエンジンを稼働し続けている状態です。そのため、常にクリアな状態で動いているということはなく、どこかで必ずトラブルが発生しています。そのトラブルに対応するのが船員の大事な役割です。

加えて書類の整理。船の運行は多くの法律に則って行わなければならず、かつその法律が毎年のように増えていきます。法律が変わればマニュアルや手順書を作らなければなりませんし、その都度メンテナンスの手順や範囲も増えていきます。港によってもルールが違うため、それらを全て船の上でクリアしながら運行しなければいけないのです。

―膨大な業務があるなかで、まずはどこから効率化しようとしたのか教えてください。

戸髙:まず効率化しようとしたのが書類の整理です。私の船舶管理会社でもビルのワンフロアを書庫にしなければならないほど大量の書類があり、その中から都度書類を探さなければならない状態でした。

自分の仕事を効率化するためにも書類のデジタル化が必要だと思いましたし、同じような仕事は船の上でも行われています。書類をデジタル化するだけで陸と船の上の業務を同時に効率化でき、常に同じ情報をみんなで共有できるため属人化も防げると思ったのです。

―最終的にどのような状況をゴールにしているのでしょうか。

戸髙:私たちのサービスを使って、全ての国の情報がわかり、船の状態をリアルタイムで把握できる状態です。航行中の船にどんな物資や食料が必要なのか、それらをどのように手配すればいいのか、瞬時にわかるようなサービスを目指しています。

特に重要なのが水問題。船の上にも浄水器はありますが、もしも飲料水の手配をミスすると、船の上で水が飲めないことになってしまいます。そのような情報も全て一元管理できるプラットフォームを作りたいですね。

もしもそれが実現すれば、船員さんの業務の3分の1は減らせますし、船舶管理している陸上側の仕事はほとんどなくなるはずです。


スタートアップならではのスピードで市場を開拓

―ザブーンを立ち上げるまでは、同じようなサービスは存在しなかったのでしょうか。

戸髙:私も新しいサービスがないかアンテナを張っていましたが、海事産業のスタートアップを見たことはありません。大手の海事企業もITサービスに取り組んでいたようですが、形にはならなかったようです。

どの業界も同じですが、ITサービスの知見がない大企業が開発だけを委託しても、現場とかけ離れたサービスができあがってしまうもの。逆に業界知識のないIT企業が参入するには難しいため、これまで問題が放置されてきたのだと思います。

―そのような市場におけるザブーンの勝ち筋を教えてください。

戸髙:まずは競合がほとんどいないこと、そして現場に即したサービスを短期間で作れることです。開発チームのスピードがとても早く、たとえば労務管理の機能も2ヶ月かからずリリースできました。現在作っているサービスもベータ版を作るのにかかったのは1ヶ月半ほど。

加えて、契約してくださる船全てに私が直接足を運んで、ユーザーの声を聞いているのも大きな特徴です。日本中を飛び回らなければなりませんが、おかげで現場の声を反映でき、労務管理システムに関してはすでに業界トップシェアを誇っています。

―特にユーザーが喜んでいるポイントはどこでしょうか。

戸髙:いち早く法律に対応できるところです。たとえば昨年も船員法が改正され、全ての企業が法律に対応しなければならなくなりました。私たちのサービスはその法律にもいち早く対応したため、多くのユーザーさんに喜んでもらえました。

今後も法律が改正すればすぐに対応していくため、ユーザーさんに安心して利用していただけると思います。


続々と新サービスを開発していく中で求めるエンジニア像とは

―CTOの三浦さんにも話を聞きたいのですが、ザブーンに入社した経緯を聞かせてください。

三浦:戸髙と出会ったのはビジネスマッチングアプリがきっかけでした。私は約20年エンジニア一筋で、独立して自分の会社も立ち上げており、情報交換目的で戸髙と出会ったんです。

決して海事産業に思い入れがあったわけではないのですが、私も同じ大分出身で話が盛り上がり、その場で『一緒にやりましょう』とクロージングされて。既にザブーンが設立された後でしたが、今開発しているサービスを立ち上げるタイミングでジョインしました。

戸髙:当時はエンジニアがいないことで投資を受けられない状況でした。投資家たちに『エンジニを探してくるから1ヶ月待ってくれ』と言って出会ったのが三浦です。三浦がジョインしてくれたお陰で、最初の資金調達ができ事業を加速できました。

―今後はどのように事業を展開していく予定でしょうか。

三浦:今年は新しいサービスを続々リリースしていく予定で、売上を伸ばしていくフェーズだと考えています。来年以降はデータを活用したサービスも予定しており、技術負債を解消しながらデータをビジネスに繋げていきたいですね。

しかし、現状3名の組織で開発をしているので、人手が全く足りていません。今後は開発組織を拡大しながら、新しいサービスの開発やリファクタリングにも力を入れていきたいと思っています。

―これから採用を続けていく上で、ザブーンのエンジニアとして働く面白さを教えてください。

三浦:お客さんの生の声が集まることです。戸髙を含めセールスチームがユーザーを回って声を集めてくれるので、それらを参考にサービスを作っていけるのはやりがいを感じますね。

また、小さな組織なので自分で考えながら開発できるのもやりがいではないでしょうか。組織が大きくなると、どうしても上司に言われたものを作るだけになりますが、お客さんの声を聞きながら自分で考えて作り上げられるのは、大きな充実感を得られます。

戸髙:エンジニアに限りませんが、業界のリーディングカンパニーを目指せるのは大きなやりがいだと思います。海事産業のDX領域はまだまだ黎明期で、ほとんど競合はいません。自分たちで市場を開拓しながら、業界を牽引していけるのは面白いと思います。

―今後はどのような開発組織を作っていこうと思っていますか?

三浦:自分の領域を決めずに挑戦していける組織にしていきたいと想っています。『フロントエンジニアだからフロントしかやらない』ではなく、やったことのない仕事にも自発的に挑戦できるメンバーの多い組織にしていきたいです。

私たちはスタートアップなので、仕様がいきなり変わることも珍しくありません。そのような状況にも柔軟に対応できる組織を目指したいですね。

―戸髙さんの目指す会社の風土があれば教えてください。

戸髙:現在の『フラットな組織』を可能な限り続けていきたいと思っています。今は立場や役職にかかわらず意見が通る文化がありますし、それが事業の成長にもつながっていると感じます。

組織が大きくなってもそのような文化を残せるか分かりませんが、可能な限りは残していきたいと思っています。

―最後にザブーンに興味を持った方にメッセージをお願いします。

戸髙:普段生活をしていて感じることはありませんが、島国である日本では海事産業は欠かすことのできない大事な産業です。そのような大事な産業の大きな課題の解決に貢献したいと思う方はぜひ、話を聞きに来てみてください。

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