2007年の創業から10年。急激な拡大にも拘わらず、社員の人間関係や事業成長、クライアントの評価はそれぞれ過去最高となり、その裏には「採用成功」があった。2018年、創業10年を終えるの節目の前に今回は、当社の「人」に対する考え方が、なぜ採用成功、事業成長に繋がったのかその核を語ってもらった。
株式会社クラッチ 代表取締役社長・中西勇治
どこよりも「ヒト」で苦労した会社からの転換
この会社は、とても「人」について考えさせられて、社員と一緒に成長してきた会社。
会社ってよく「ヒト・モノ・カネ」という話をされるけど、「カネ」と「モノ」については気合いで結構何とかなってきた部分があるけど、そういう会社が一番苦労するのが「ヒト」なんだよね。
それこそ、うちほど「人」に苦労した会社も無いんじゃないかな。
そういう状況が随分長かったんだけど、転機は、ダイバーシティ経営を取り入れていこう、という方向になり始めた2年くらい前からかな。
日本の企業には、よく、「こうしていこう」というあるべき論が多すぎて、ルールとか就業規則とかに経営者も組織もメンバーも押し込められていて、どこかでそういう型にハマらないか?って模索しがちなんだけど、そもそも人生ってそういう直線的なものじゃないし、時には紆余曲折があって、悩んで迷って、ある時「ここまで来ていたのか」というほうが人間臭くて、本来あるべき姿だと思うし、そういう時に会社がどこまで受け入れてあげられるか、というのが凄く大事だと思っているんだよね。
「〇〇として」といったものに縛られると自分も社員も不幸になる
よく会社は社長の器以上に大きくならないって言われていて、社長の器を広げていかないと、会社は大きくならないし、多様性を受け入れていけない。ただ、受け入れていくことも凄く勇気のいること。どこまで認めるのかも凄く悩むし、評価どうするんだ?みたいな問題も出てくるし。だから僕は、途中から色んな細々したことを考えることをやめちゃったんだよね。それが結果といて凄く上手くいくようになったんだけど。
よくこれについて、育児ノイローゼになるお母さんと同じだと思っていて、そんなお母さんたちは「母親としてこうするべき、ああするべき」という理想ばかり追ってしまうことがよくあるんだよね。
ただ、現実はそんなうまくいかなし、赤ちゃんなんて泣くのが仕事みたいなものだから、どんなときでも関係なく泣くものは泣くし。それで結局育児ノイローゼになっちゃうんだけど、経営者も同じで、経営者として・・ 上司として・・ 対クライアントには・・ 対社員には・・・そんなふうに、いつも「社長はこうあるべきでしょ」という理想があって、その理想ばっかり追ってると現実とのギャップできつくなっていっちゃう。
けど、育児ノイローゼも肩の荷を下ろす以外に解決する方法が無いんだよね。「この子も頑張っている。私も頑張っている。どうせ私も育児はじめてなんだし、分からないこと多いし、それでいいじゃない」と思うしか無くて、経営者も同じで「僕は三木谷さんでも孫さんでもないし、この会社はじめて経営したわけだし、年齢も36歳だし、出来ないことたくさんあるし、だけど、完璧なやつなんていないしな」って思うようにして、前は全部自分でやろうしていて、スーパーマンになろうと思っていたけど、そういうの取っ払って、それぞれのプロに任せていって、自分のやれること頑張って、社員のみんなも頑張っているしもういいじゃないって思ってから凄く自分にも会社にも変化があったかな。
会社は道具。それぞれが使い方を考えて使い倒して欲しい
会社って、経営者の自分からしても道具のようなもので、サッカーで言えば会社がボールでそれぞれがプレイヤー。それぞれがどう蹴るか、あるいはその先に自分の人生をどう作っていくのか。そのためにこの会社という道具をどう使い倒すかっていうのを全員に思って欲しいし、それぞれがどう使うかについては俺は一切言及しないし、うちを踏み台にしても良いし、その代わり踏み台になるなら、どうやって会社が向き合ってその人のためになるか考えなければいけないし、どんな形でも良くて、ライフワークバランスの取れた社会人になりたいでも、家族との時間を一番にしたいでも何でもいいんだけど、それをどう会社の中で作っていくのかというところだと思うんだよね。
よく、日本の会社って求める人物像っていうのを書くんだけど、僕はそれは作らないし、作ったらそこに当てはまらないやつはダメなのかよってなるし、そうじゃない人間がこれなくなっちゃう。僕があえて言うなら「僕に持ってないもの持ってるやつ来い」ってだけ。型にはめたらはめただけ可能性が少なくなる組織になるし、会社のための個人になるし、個人のための会社ではなくなっちゃう。
多様性を受け入れた。集まってくる人が変わった。会社も変わった。
ダイバーシティ経営を考えた時、意識したのが女性の働き方についてだったんだけど、女性はやっぱり妊娠とか出産とか、身体が大きく変わることがあるからこそ、様々な対応の仕方が求められると思うんだ。例えば、妊娠初期の人には出勤時間をズラして満員電車は避けるとか、出産後は時短勤務を有りにするとか、子供の行事がある人はそっちを優先するとか、そういうことを出来るようにして、その中で仕事の中身なんてそれぞれが帳尻合わせをしてくれたらいいし、そもそも大事な子供の誕生日や運動会を蹴っ飛ばして働いている奴の方が僕は大人としてダメなやつだと思うし、そういうことについて経営者が受け入れていく土壌があれば、そんなのなんでも無いと思うんだよね。
日本の会社はそういうことに対してマネジメントだなんだって話が出てくるんだけど、マネジメントをするんじゃなくて、受け入れて、やってもらうってだけでいいと思うんだよね。
実際この2年くらい、自分がそういう考え方になってから、びっくりするぐらい優秀な人たちが次々入ってきて、それは会社のレベルが上がったからってだけじゃなくて、経営人生の中でも今が一番いい人が集まっているなっていうのがあって、これからもっと良くなっていくんだろうけど、そうなったら一人一人の夢とか目標とかそういうものを達成するために経営陣一丸となってどうするか考えていかなければいけないというのが今後のテーマかな。
最近は、この会社の文化に興味を持って入社してくれる人が増えている。また新しい多様性が生まれていって、会社がどんどん成長速度を上げている。自分でもまだ見たことが無い会社の姿や、一人一人の未来があると思うとこれからが凄く楽しみだね。