プロフィール紹介
セキュリティの世界に入って、20年以上が経ちました。
キャリアの多くは、官公庁や大手企業のSOC——セキュリティオペレーションセンターの立ち上げに費やしてきました。攻撃を検知し、分析し、対応する。その最前線を組織としてつくる仕事です。
そこで痛感したのは、技術の限界ではなく、人の限界でした。24時間365日の監視体制を維持するには、優秀な人材を大量に、しかも継続的に確保しなければならない。しかし現実には、セキュリティ人材は圧倒的に足りていない。運用コストも重くのしかかる。
どれだけ立派な仕組みをつくっても、それを回す人がいなければ機能しない。この構造をどうにかしなければ、日本のセキュリティは守りきれない。そう考えるようになったのが、2019年の創業につながっています。
経営者として今、力を入れていること
いま最も時間を使っているのは、生成AI領域のセキュリティです。
LLMが業務に入り込むスピードは、私が想像していたよりずっと速い。そして、従来のWebセキュリティの発想では防げない脅威が次々に現れています。プロンプトインジェクション、意図しない機密情報の流出、危険なコードの生成。
この領域には、まだ確立された「正解」がありません。だからこそ、私たちのような小さな組織が先行できる余地がある。Secure AI Agentの開発には、会社の未来を賭けているつもりです。
創業、そして現在に至るまで
創業の原体験
現場で何度も見てきた光景があります。
アラートが大量に上がってくる。しかし人手が足りず、優先順位をつけきれない。本当に危険なイベントが、日常のノイズに埋もれてしまう。そして事故が起きてから、「あのログには出ていた」と分かる。
これは担当者の怠慢ではありません。人が処理できる量を超えているだけです。
ならば、人間のアナリストが持っている判断の知見を、AIでモデル化できないか。熟練者が「これは危ない」と直感する、その判断基準を学習させられないか。それがCyberNEOの出発点でした。不正リクエストを検知する手法は、のちに特許として認められています。
苦難と乗り越えた経験
セキュリティプロダクトは、信頼がすべてです。そして信頼は、実績がなければ得られない。しかし実績は、使ってもらわなければ生まれない。創業初期は、この矛盾との戦いでした。
技術的にも簡単ではありませんでした。AIによる検知は、誤検知が多ければ現場の負担をかえって増やしてしまう。「自動化したのに、確認作業が増えた」では意味がない。精度を上げるための地道な改善を、何年も続けてきました。
転機になったのが、2025年6月のクラスメソッドグループへの参画です。私たちが持つセキュリティの専門性と、グループが積み上げてきたクラウド技術の知見。この二つが交わることで、届けられる企業の数も、解ける課題の幅も、大きく広がりました。2026年3月には社名を「クラスメソッドセキュリティ」に変更し、新しいスタートを切っています。
経営課題とやりがい
経営の面白さと難しさ
セキュリティは、うまくいっているときほど成果が見えない仕事です。何も起きていない状態こそが成功なのに、その価値は伝わりにくい。この構造と、どう向き合うか。経営者として常に考えていることです。
難しさで言えば、技術の進化スピードそのものが課題です。半年前の常識が通用しなくなる世界で、投資判断を下し続けなければならない。生成AIへの取り組みも、確実な答えがあって始めたわけではありません。
それでも面白いのは、自分たちの判断がそのままプロダクトになり、企業のシステムを実際に守っているという手応えがあることです。受託ではなく、自分たちの意思で作ったもので勝負している。この感覚は代えがたいものがあります。
組織文化・働き方の特徴・こだわり
少人数の組織なので、意思決定は速いです。誰が言ったかではなく、何が正しいかで決める。入って間もないメンバーの指摘がその日のうちにプロダクトへ反映されることも珍しくありません。
こだわっているのは、人が疲弊しない運用を自分たちで実践することです。24時間365日を守るサービスを提供している以上、それを支える私たち自身が消耗していては説得力がない。AIで自動化するという事業そのものが、私たちの働き方の思想でもあります。
ビジョン・今後の展望
5年後、10年後、社会にとってどんな存在になっていたいか
目指しているのは、セキュリティが「特別なもの」ではなくなる世界です。
いまはまだ、セキュリティ対策は専門家がいて、予算があって、はじめて成立するものになっている。だから後回しにされ、事故が起きてから慌てる企業が後を絶ちません。
そうではなく、電気や水道のように、当たり前に備わっている土台にしたい。中小企業でも、専門家がいなくても、必要な防御が自動的に働いている。そういう状態をAIで実現できると本気で考えています。
そして5年後、10年後には「AIを守る」ことが当たり前になっているはずです。AIエージェントが企業のシステムを動かす時代に、その安全性を誰が担保するのか。私たちはその領域で、日本を代表する存在になっていたい。
未来の仲間へのメッセージ
私たちは、まだ小さな組織です。だからこそ、一人ひとりの影響範囲が圧倒的に大きい。企画から開発、運用まで通しで関われますし、自分の判断がプロダクトの方向性を変えることもあります。
同時に、クラスメソッドグループという技術基盤と事業基盤があります。挑戦できる環境と、挑戦を支える土台。その両方が揃っているタイミングは、そう長くは続かないと思っています。
セキュリティの経験は問いません。むしろ、AIやクラウドの技術で社会の課題を解きたいという人と一緒にやりたい。答えのない領域を面白がれる方に、ぜひ会いたいです。