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「踊る広報」と「作る広報」が、多様化していく広報の仕事を考える。

企業に存在する「広報」という仕事。同じ広報という肩書きでも、企業のフェーズや事業内容によって、働き方、業務内容、組織体制は異なってきます。また、どの職種にもいえますが時代の流れとともに、仕事のあり方も大きく変化しているようです。
今回の対談では1990年生まれの広報二人が、多様化する“これからの広報の働き方や仕事”について考えたいと思います。

interviewee

株式会社ビースタイル
柴田菜々子
女性向け人材サービスを運営する株式会社ビースタイルの広報担当を務め、週3日出勤で働く
TSUKURUUU PLUS
後藤あゆみ
フリーランスのプロデューサー。デザインイベント・展示会・サービスの企画/編集/広報を行う。株式会社ディー・エヌ・エー デザイン戦略室専属のCreativePRを務める

自社サービスを体現する「踊る広報」の仕事

柴田:私はビースタイルという会社で広報として働いているのですが、出勤しているのは週3日間で、残りの4日間はコンテンポラリーダンスの活動を行っています。なので、そういった活動の影響から「踊る広報」と呼ばれるようになりました。

この「踊る広報」という肩書きですが、実はいろんなメリットがあるんです。例えば、踊れる広報なんて滅多にいないので記者さんに覚えてもらいやすいですし、名刺にも「踊る広報」という肩書きとダンスしている自分の写真を載せているので、これを見ると大体の方が突っ込んでくれて、話しが広がるきっかけにもなります。

後藤:名刺もパンフレット型になっていているんですね。企業理念や運営しているサービス情報も載っているので、会社のことがよくわかって良いですね!

柴田:あとは私の働いている会社が「しゅふJOB」 「時短エグゼ」「これキャリ」という女性向け人材サービスを展開しており、個々のキャリアやライフスタイルに合った働き方を提案しているので、自身が週3日出勤で会社のサービスと同じ働き方を体現していることで、記者さんやユーザーさんへの説得力も増すんですよね。

後藤:豊かなライフスタイルを提案している会社で働く人が、毎日夜遅くまで仕事をして、全然豊かな生活をおくれていない矛盾……って、実は結構多いですよね。広報が自社サービスを体現することで、記者さんとも事業に対して深く突っ込んだお話ができそうですね。


柴田さんが活動しているコンテンポラリーダンスの写真

全員メガネのダンス集団「TABATHA(タバサ)」

Photo By Bozzo

Photo By 佐藤瑞季

Photo By 佐藤瑞季


後藤:躍動感のある美しい写真ばかりですね。ダンスしている柴田さんの姿もすごく見てみたいです。
ところで、週3日はビースタイルで働いている柴田さんですが、会社ではどのような広報のお仕事をしているのでしょうか。

柴田:私の広報の仕事は、とても営業に近いです。営業職の方が他社さんに商材を持って営業をしにいくように、私の場合は自社サービスの説明資料を持って、ビースタイルの事業、そしてその背景にある社会課題などについて説明して回っています。時には、お会いする方が興味を持っていただけそうな自社のアンケート結果(データPR)なども持っていきますし、できるだけ今現場で起こっていることを伝えるように意識してます。
ビースタイルは、従業員が200名規模のベンチャー企業なので、情報を守る仕事よりもサービスをより多くの人に知ってもらうために発信する、攻める仕事がほとんどなんですよね。

後藤:広報の仕事は評価されにくい、結果がわかりにくいので難しい……といった広報さんの悩みをよく聞くのですが、柴田さんは会社のなかでどのような評価基準を持ってお仕事をしていますか。

柴田: 都度変更はありますが、基本はメディア掲載数、他には記者さんの新規開拓やアポ数で達成目標を決めていますね。

後藤:つながりのない記者さんに出会ったり、繋がったりするのって難しくないですか。

柴田:テレアポでアタックする広報さんもいると思うのですが、いきなり全く知らない会社の広報担当から電話がかかってきても、丁寧に対応してくださる記者さんは少ないと思うので、私はあまりやっていません。
私の場合ですと小規模な合同記者懇親会や勉強会を定期的に開催しています。その懇親会や勉強会では必ずテーマを設定して、そのテーマにマッチしそうな事業を行っている企業さん3〜4社と、そのテーマに興味のありそうな記者さんや編集者さん数名を招待するんです。参加する企業が、お互い繋がりのある記者さんを招待することで新規開拓に繋がりますし、テーマを設定することで親和性の高い記者さんがきてくださるので、 取材に繋がるケースが多くあります。またメディアの方に三原(社長)を知ってほしいと思っているので、多くのメディアが集まる合同記者懇親会の場がいいキッカケになっていると思います。

後藤:ちなみに柴田さんは、文章まわりのお仕事はしていないんですかね?

柴田:文章はあまり得意ではなく生産性が悪いので、 極力、仕事分担して上司にお願いしています(笑) 。あと、名の知れてないベンチャー企業はプレスリリースをただ書いて送るだけじゃなかなかメディアに取り上げてもらえないので、直接相談できる関係を記者さんたちとつくって、そのサービスの魅力を記者さんにむけて丁寧に説明できたほうが効果があると考えています。

発信方法やコンテンツもデザインする「作る広報」の仕事

後藤:私はフリーランスで編集や広報のお仕事をしていています。ただ、一般的な広報と違うのは、クリエイティブ系のプロジェクトや組織に特化していることですね。ターゲットとなるのはクリエイター職の方がほとんどです。なので、仕事内容も一般的な広報業務とは大きく違うと思います。プレスリリースなんて滅多に作成しないですし。

柴田:なぜ「作る広報」なんでしょうか?クリエイティブ系特化型だから…?

後藤:広報の仕事って、基本的にすでに存在するプロダクトや事業を発信したり、繋げたり、守ったり、管理する仕事が多いと思うのですが、私の場合は発信するコンテンツを作るところからやるんですね。イベント、デザイン、映像、記事作成、写真・動画撮影……などは、自分の手で一から作るので「作る広報」なんです。 私はもともと高校も大学も美術系専門でビジュアルデザインを学んでいたので、デザインや映像制作の基礎スキルは持っていて、例えばデザインガイドラインの知識や、デザインを通したブランディングの大切さは理解しているので、プロジェクトや組織の方向性に沿って自身でコンテンツを作ったほうが、全体のスピードが上がることもありますし、いろいろ実験的なアウトプットができて面白いんですよね。
ただ、クオリティの高いものをつくる必要がある時は、プロのクリエイターさんにお願いしていますよ。

柴田:実験的なアウトプットとは、具体的にどのようなものを作っているのでしょうか。

後藤:例えばSNSの運用ですが、最近では動画コンテンツのほうがリーチ数の伸びが良いので、実験的にPR動画を作って投稿して、リーチの伸び率やユーザーさんの反応を見て、構成や編集、撮影など調整しています。

なので、柴田さんがやっているような新聞記者さんとコミュニケーションをとるような仕事はほとんどありません。情報を届けたいターゲット(クリエイター)が、新聞から情報を得ることはほとんどないので、新聞から発信する必要はほとんどないんですよね。
関係づくりといった意味では、デザイン系の情報誌やWEBメディア、インタビューメディアをリストアップして、取材依頼したり挨拶に伺ったりすることはあります。
あと、他社さんのメディアに掲載してもらうだけでなく、自社でプラットフォームを持って、コンテンツを作成し、作りためることや発信することも大事にしています。「ここに行けば企業・プロジェクトの情報をまとめて知ることができる」という安心感のある箱づくりと継続は、採用・広報だけでなくブランディングする上で重要だと考えています。


後藤が企画運営に携わっているイベント
Webクリエイターの祭典「dotFes 2016 渋谷 -渋谷発、未来のデザインを考えよう


真鍋大度さんらが登壇する「UI Crunch UNDER25


後藤:柴田さんはビースタイルに新卒入社してから約3年間、広報の仕事をしているんですよね。ビーススタイルは話題になっているプロジェクトを多く立ち上げているイメージがあるのですが、メディアに紹介された数も相当多いのではないですか?

柴田:私が広報を務めた3年間で、 テレビや新聞・WEB媒体などで紹介された数はおおよそ270本です。 テレビ番組で言いますと「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」などにも紹介いただきました。会社自体が時代の先を見据えて面白いことをやっているので、有り難いことにビジネス・報道番組などに取り上げていただくことは多いです。

後藤:そんなに!?ベンチャー企業であればとても多いほうではないでしょうか……。柴田さんは若手広報としてもかなりの実力の持ち主なんですね!
私も柴田さんも「広報」という肩書きを持っていますが、仕事内容や働き方は全然違いますよね。自身が今の仕事に向いていると思うポイントを3つ教えていただけませんか。

柴田:私の場合は「人が好き」「フットワークが軽い」「好きを極める力がある」……この3つですね。広報の仕事って、会社や経営者の持つビジョンやミッション、思いや考え方を代弁しなければならないので、務める企業のサービスや働く人が好きでないと、務まらない仕事だと思います。
ですが、恥ずかしながら私は会社のサービスをよく理解していないまま、ただ、ビースタイルにいる人たちに惹かれて入社を決めました。そこで働いていくうちに「皆がつくるサービスをより多くの人に知ってもらいたい」「少しでも営業がしやすくなるといいな」……という思いが強くなってきて、考え方が変わりました。今では人にもサービスにも誇りを持って働いています!

後藤:私の場合だと「クリエイターを心から尊敬している」「新しいものが好き」「とことんこだわる」の3つですね。私は一緒に働くクリエイターさんたちを心から尊敬しているので、尊敬する人たちの晴れ舞台をつくるために、上質なイベントや記事などコンテンツを作らなきゃと思いますし、クリエイターさんたちをより良いかたちで発信するために、こだわり抜いて、クオリティの高いアウトプットをする努力をしたいと思っています。

柴田:時代が変化すると共に、広報の仕事も求められることが変わってくると思うのですが、今後どんな広報が重宝されると思いますか。

後藤:どの職種にもいえますが、最新サービス&ツールの情報をキャッチして、まず一度、使い倒してみることが大事だと思います。世の中にあるサービスで広報用に作られていないものでも、実は広報活動に活かせるものって結構あると思っていて。多くの人に使われているサービスや新しく出たサービスは、まずは特徴をとらえて、そこから広報に使えないか考えて、使ってみる……その繰り返しが大事だと思っています。例えばWantedlyも、一般的に見れば人材サービスに見られることが多いと思いますが、私からすると広報ツールにしか見えません。こんな見やすい綺麗なデザインで、企業情報や作品がまとめられて、ポートフォリオ登録ができて、記事が書けるツールはなかなかないと思います。投稿をすればWantedlyに登録している友達や、友達の友達、繋がっていない人たちにも情報が届く。TwitterやFacebookとはまた違った情報発信ができるんですよね。

柴田:SNSを使っての情報発信はこれからも大事ですよね。そういった反面、やっぱり人対人の関係づくりは欠かせないので、今やっているようなユーザーさんや記者さんとの関係づくりは継続していきたいです。

目標を達成するためだったら様々な手段を試す。直接は届かなくても叩くドアが違えば、開く窓があるはずなので、そのドアを探すのが楽しいんです。ガツガツ動ける体育会系の広報が1番強いと思っています(笑)。

後藤:わかります(笑)。普通に窓口から依頼しても断られたり無視されることが多くて、だったらどうやって興味を持ってもらえるか、楽しんでもらえるか、アイデアを出してあらゆる方法を試しています。折れない心とガッツは重要ですよね。

最後に、今後ですがどのように広報として働いていきたいと考えていますか?

柴田:簡単な事務作業は、今後どんどん機械やロボットの仕事に置き換わっていくと思います。いかに自分にしかできないクリエイティブな仕事ができるようになるかが大事だと思っています。

広報に限らず出来ることを増やし、自身で企画して「ゆるい就職」のようなユニークなプロジェクトや広報イベントの立ち上げれるようになりたいです。情報発信が多様化しているからこそ、コンテンツ自体も磨きをかけて際立たせたいと思っています。 また、ゆくゆくは、今やっていることを活かしてダンス業界の広報に繋がることもしていきたいです。

後藤:クリエイターさんが技術を磨き続けているように、私も新しい能力や技術を身につけ、広報にかぎらず、仕事に活かせそうな武器は増やしていきたいです。直近で欲しい技術は、モーショングラフィックの制作技術ですかね。クオリティの高いかっこいいハウツー動画を作れるようになりたいです。

多様化している広報の仕事、専門性を磨くだけでなく、新しい技術や知識を身につけ続けることが重要だと考えます。機械にはできない、私たちだから出来る発想や関係づくりを強みに、平成広報女子は組織のため、自分のために、広報力を磨き続けます。

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