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マルシェをやり続ける魅力と価値

2019年9月28日(土)、10周年当日を迎えて

赤坂アークヒルズにて毎週土曜日に開催しているヒルズマルシェが、10周年を迎えました。
当日の1日を振り返り改めて「マルシェはイベントではない」ことが実感出来ました。

私の中で「イベント」とは、年に1回や数回、運営側も主催者も多額の予算と熱量を入れて実施し、お客様も非日常の体験を得るために参加するものだと思っています。
 ですが、スーパーマーケットやドラッグストアに買い物へ行くとき、そうした熱量で買い物に行くことはないと思います。マルシェも同じです。「コミュニケーション型小売業」としての日常的な買い物の場なのです。

当日はマルシェが始まる前に10周年セレモニーを開催し、出店者やお客様、関わってくださった方々に参加していただきました。
セレモニーといっても大それたことはせず、主催の森ビル株式会社の担当者や、自治会の会長などの挨拶をいただき、そしてヒルズマルシェに10年ほぼ休むことなく出続けてくださっている、まさに農家のためのマルシェを体現してくださる、レジェンド、東京都国分寺市の小坂農園の小坂さんに乾杯の挨拶をいただきました。

「世界にただ1つのマルシェを目指しましょう!」

ととても嬉しいご発声をいただき、嬉しさと共に責任感もまた感じることができました。

↑乾杯のご挨拶をいただいた小坂農園の小坂さん

生演奏ラジオ体操でスタート

セレモニーの締めくくりは、毎月1回、ヒルズマルシェを盛り上げてくださる「朝♪クラマルシェコンサート」の方々に、生演奏をしていただいてのラジオ体操を行いました。クラシックでかつ生演奏と経験したことのないラジオ体操を行いました。これからの新しい10年目の開催にふさわしいスタートがをきることができました。

10周年をどう迎えるか考えて、考えて

そして集合写真をとり10時、いよいよ10周年のマルシェがはじまりました。

さぁ10周年!
ということでさぞや豪華に、そしていろんな企画を展開して盛り上げるのだろう!
どんなことをしたの?
と思われる方もいるかもしれませんが、
セレモニー以外はほぼいつも通りでした。

 もちろん、春から10年目をどう迎えるかを考えていました。イベントや企画など色々実施するのもいいだろうし、前夜祭をやってみてはどうか、土日2日間で実施しては、こんな企画は・・・・と色々考えたのですが、、、
10周年てそもそもなんだろう?と考えていくと、
ヒルズマルシェが10年かけて培ってきたことは何だろうと考えるところからに行きつきました。
ちょうど春は『マルシェのつくり方、使い方』の執筆もしており、マルシェについて見つめなおしている時期でもありました。
整理して考え、結論として、
ヒルズマルシェは非日常的なイベントから、
日常的な買い物をする場へと成長をしており、
大掛かりな企画をうつよりも、そこまで成長することができた、出店者やお客様への感謝をする日なのだと感じました。

そうすると、
感謝を伝えるってどうすればいいんだろうか?
となりました。
これが、答えが出ない。
生んでくれた親への感謝をどう表現したらいいのか?
というような悩みに近い気がします。

そうこう考えていると、
大きなイベントで外から人を呼ぶのではなく、
いつもの皆で分かち合うことができればいいのではと考えて、割りと普段通りのマルシェにしました。

マルシェが「日常」という奇跡が生まれた

繰り返しになりますが、そういう判断が出来たのは、やはり、ヒルズマルシェは、イベント(非日常)ではなく、完全にライフスタイルに取り込まれている、日常化というのが相応しかったからです。

この日常化を一言で言っても伝わりにくいと思いますが、お客様からいただいたこうした言葉が、物語っていると思います。

「マルシェがあるから、引越が出来ない」
これは、マルシェを10年来使ってくださっている常連のお客様の一言ですが、凄いことだなと思いました。今、住まれている家から引っ越すのに、●●があるから躊躇するというは、あまりないことかと思います。生活の一部になり、切り離すことが出来ないからこそ、また身近にあってほしいからこそ、こうした想いをもっていただけたのだと思います。

「マルシェの時間が夫婦の時間」
共働きで忙しいご夫婦がおっしゃった一言です。金曜日が遅くなろうとも、土曜日はヒルズマルシェに買い物に来て、ブランチをして帰るのが毎週の日課で、予定はその後に入れるそうです。
とても素敵なご夫婦ですし、そうしたご夫婦の一週間の締めくくりでもあり始まりがヒルズマルシェからというのは嬉しいです。

「マルシェ以外では野菜は買えないです」
これは本当に多くのお客様から言っていただきますが、マルシェが自宅の冷蔵庫になっているという方が多くいらっしゃいます。
絶対にやめないでね!というお声も直接いただくことが多くあります。
コミュニケーションが育まれることで、新鮮さ、目新しさ、会話する楽しさなどが相まって、無くてはならない存在になっていると思います。

どうですか?
こうしたライフスタイルの一環に溶け込んでいること、それこそが日常化しているという風に言えるのではないでしょうか?運営している側が言うのもおかしな話ですが、自分の生活でそこまでいえる場所ってあるのだろうか、と考えるとパッとは思いつかないです。まちづくりについてはド素人ですが、ヒルズマルシェの主催者であり、まちづくりの森ビル株式会社と共に活動をさせていただくことで、こうしたのが街づくりの一つの側面なのではないかと思うと、農業支援からまちづくりの一端を担えてるのも嬉しいです。

いつもの常連客が、いつものように買い物に来て
いつもの出店者が、いつものように野菜などを販売し
いつものように、会話が始まり、笑顔が生まれる

10周年の当日も、かつての森ビルのヒルズマルシェ担当者や関わっていた方ほぼ全員がお越しになり、かつての私の社会人セミナーを受講してくださっていた方がボランティアスタッフやお客さんとして大勢お越しになられたり、もちろんいつもの常連客もお越しくださり、結果として同窓会にようでもあり、そこかしこでご近所交流のようなコミュニケーションが育まれていました。
それぞれの居心地の良さというものがヒルズマルシェにはあるのではないかと感じました。

非日常から日常へ、そして●●に

そう考えると、非日常から日常へ、
というのが私が掲げている今のマルシェの在り方ですが、
ヒルズマルシェはそれはとうの昔にクリアしていると思います。
そうすると、その先があるのではないか・・・
今回の10周年当日で一番感じた部分であり、考えたのがここでした。
いろんな言葉を探してみたのですが、雰囲気やコミュニケーションの取り方、関わり方などをみていてはっと思ったのが、

居場所となっている

ではないかなと。
屋外で自由に会話しながら買い物を楽しむことができるという売場でありながらも、自分にあう買い方、会いたい店舗とのコミュニケーション、ご近所付き合いのような会話などなど、それぞれがそれぞれにあう居場所になっている、なっていくことができているのではないだろうか。
私は誰よりもマルシェを楽しんでいると思いますが、(設営、撤収中は、鬼ですが・・・それは仕事。)普通に、常連客の方や、自治会の方、森ビルの方、もちろん出店者の方などと、仕事ではない日常的な会話で盛り上がるのは、年代も性別もライフスタイルも違うなかで、マルシェがなければ絶対に生まれてないことだなと思います。そうした居心地のよさ、というのは私の中の居場所のひとつになっていますね。

著書『マルシェのつくり方、使い方』では、
運営と出店両面へのノウハウをまとめていますが、
その中の1つに、伸び悩む出店者について書いていますが、
他者の居場所を否定したり、
自分の居場所の、ために他者の居場所を奪ったり
している、しようとしてしまっていると言い換えることもできます。
自分され良ければ、ルールなんて関係ない、という残念な出店者が稀にいますが、自分の居場所の為に他者の居場所を排斥して、ビジネスとして長続きするわけがありません。特に、コミュニケーション型小売業というぐらいの場所において。
10周年の日に、「ヒルズマルシェの一番の想いでは?」という寄せ書きを色々な方にお書きいただいたのですが、あるお客様が書かれた
「毎週お世話になっているさがみこさん。卵パック買い忘れて明日売れません。と前日お電話くださったこと。私の顔が浮かんだようでそのお気遣いがとても嬉しかったです」
というものがありました。
お客様にとっても出店者にとっても、コミュニケーション型小売業の中に居場所がつくれている1つの証ではないかと思います。

農家・出店者にとっても・・・

それぞれの居場所でありライフスタイルと言いましたが、マルシェの始まりであり根幹である「農家にとっての売り場確保」が私の仕事としても重要な要素になります。ヒルズマルシェでも、8年以上出店してくれている農家さんが多数います。たまにの出店ではなく、売る商品があるシーズン中は毎週出続けたり、月1回は来てくださったりするレベルです。こちらの素敵なご夫婦、山梨県南アルプス市のノザワ農園さんもその一人です。


5月にさくらんぼから始まり、プラム、桃、ブドウ、りんご、柿と10月いっぱいまで半年間毎週出店してくれてます。農協出荷と違うマルシェの魅力を存分に活用してくださり、仲良くなったお客様が遊びにくることもしばしばあります。農家にとってのマルシェの活用については、『マルシェのつくり方・使い方』に書いてますのでここでは書きませんが、ただ売るだけの為の場所であれば、居場所になっていなければ、そこまで出店はしてくれないのではないかなと感じます。


もちろん、農家に限らず、食品や雑貨などのつくり手の方々にとって、販路拡大をする際に、気軽に、低価格でいつでも売場が作れる場所にもマルシェはなっていると思いますし、定期的にやっているからこそその価値は大きくなると思います。インターネット販売などで顔が見えない相手への告知宣伝を大々的にしないと売上に結びつかない場所と違い、少なくともリアルにお客様に相対して説明、接客ができますし、1年に1度のとてつもない集客・売上がたつイベントと違い、1回1回は大きくなくてもリピーターを確実に増やすことができる場所にもなっています。
購入されるお客様に限らず、ビジネスとして出店される側にとっても大切な居場所となっていくことが重要であり、だからこそ、一度始めたマルシェを簡単に辞めることはしたくないです。

ヒルズマルシェへの愛を感じる


先ほども少し書きましたが、寄せ書きを出店者やお客様、関係者に渡しては書いていってもらいました。実は前日に思いついて急いで準備したのですが、全部で見開き4枚もの寄せ書きとなり、全てのコメントをここに書き出していきたいぐらいに、ヒルズマルシェへの愛着が感じるメッセージばっかりでした。関わらせていただいて、本当に感謝です。
3月には、森ビルさんと一緒に、一部の出店者やお客様らとこれからのヒルズマルシェについてのワークショップも実施しており、10年目からのヒルズマルシェをどういうコンセプトでいくか、何をさらに表現していくのかも考えていっているので、
ひとりひとりにとっての、それぞれの居場所から、
さらに、新しい出会いと学びが生まれる場所へと新しい仕掛けをしていきます。
これからもヒルズマルシェをよろしくお願いいたします。

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