プロフィール
三上 広葉 (30歳) |株式会社バイデンハウス 取締役 / マネージング・ディレクター
Managing Director, Consumer Market Intelligence, Weiden Haus
東京都出身。日本大学芸術学部写真学科に在籍中、メキシコに長期滞在。趣味はお笑いライブとキャンプ、ネイル。「嫌でもあと50年ぐらいは生きなきゃいけないんだから、新しい場所・コトにとりあえず飛び込んでみる」がモットー。
バイデンハウスに入る前のキャリアを教えてください
大学在学中、バックパッカーとして様々な国を旅行しました。中でもメキシコは1年間、レストラン・ホテル一体型施設で勤務し、文化も価値観も異なる環境にいました。現地就職の予定でしたが、代表の石崎に誘われてバイデンハウスへ2021年に入社しました。2025年4月より当社の取締役/マネージング・ディレクターに就任しました。
入社当初の苦労はどのようなものでしたか
コンサルタントの基礎から徹底的に教育を受けたことです。新卒なのでもちろんスキルは高いのですが、タイピングのスピード、ショートカットキー、文章のてにをは、一つ一つの細かな作業に効率や意図を込めて作業することを助言されました。
日本語をきちんと使いこなすのは実は相当難しいです。てにをは、語尾、アクセント、と言った言葉づかいに対してほぼ毎分のペースで指摘を貰っていました。例えば「A”は”Bです」と言った時、“は”の強調の仕方によっては相手に自分の意図とは異なる印象を与えます。こういった微細な日本語が持つニュアンスの違いを意識しながら、新人であることをクライアントに感じさせずに、プロフェッショナルとして振舞うことにとても苦労しました。ショートカットキーを使わなかった資料は、作成できてもやり直し、なんて当たり前でした。当時代表から国語と数学のドリルを手渡されたことがあります。
最近ようやくわかりましたが、我々コンサルタントは一見華やかなようですが、言語能力と数理能力を高度に応用しているだけで、実は基礎力の積み上げが本当に大事です。
当時のバイデンハウスは赤字で、代表と私のミッションは黒字化。私は新人でしたが、会社は危機的でしたので、つべこべ言ってられない状況でした。今すぐやる、必ずやる、できるまでやるという代表の鼓舞を受けながら、バイデンハウスの“企業再生”に、二人三脚、休みなし・遊びなしで携わりました。
いま担当している事業部・業務を教えてください
現在は取締役としてConsumer Market Intelligence(CMI)部門を統括しています。業界は化粧品、飲料、食品などの消費財などから自動車などの耐久消費財、SNS、テクノロジー、IP、ゲームまで多岐にわたります。最近だと、AI、VR、SDGs、DXなど、最新のテクノロジーやトレンドに関わる案件も。
CMIでは、クライアントの課題を特定し、分析の目的を明確にします。そして分析手法の選定、論点設計、インタビューやアンケートなどの調査実施、分析、パワーポイントでのスライド作成を担当します。時には調査の設計段階で、別の調査手法や企画を提案することもあります。
また、「若者の研究所(若者研)」という学生コミュニティをコミュニティ・マネージャー(運営者)として運営しています。若者研は100名を超える都内の早慶・MARCHの大学生を中心としたZ世代の学生コミュニティです。
毎月「トレンド会議」を開催しZ世代のトレンドや、価値観に関するインサイトの発掘をし、学生の研究員がレポートを執筆しています。他にも、大手企業と協同でエスノグラフィー調査やインタビュー調査を行うこともあります。一部のプロジェクトでは、若者研の学生もプロジェクトマネージャーとして大学生も大人顔負けのプロフェッショナル意識で働いています。
当社は年齢や能力に関係なく、常に「できること」ではなく「すべきこと」に応じて仕事に臨んでいます。クライアントが本質的に解決すべきですが、クライアントもまだ認識できていない課題に焦点を当て、実行まで導く。徹底的なクライアントファーストの文化がバイデンハウスにはあります。
分析業務にはどのようなやりがいがありますか
単に情報を集める行為だけでなく、「本人も自己認識できていない自身の思い込み・価値観を読み解く」ことに奥深さを感じます。本質的な課題を見極めるために、私たちは生活者・消費者の方にインタビュー分析をする際に、一般の方の“非言語の領域にまで踏み込む必要があるんです。インタビュー分析の過程には、想像以上に多様な問いやドラマがあります。それを一つずつ紐解いていく知的な面白さもあります。
この視座を持つことでより立体的に、自分自身が好奇心の輪郭を持ちやすくなったなんてこともよくあります。例えば、過去にとある会社の社員さん50名にインタビューしたことがあります。彼らと対話を重ねるうちに、業務上の工夫や現場特有の価値観が少しずつ見えてきたんです。暗黙知を言語化できた瞬間、とでもいうんでしょうか。そういう瞬間にやりがいを感じます。
三上さんが新人教育で気をつけていることが知りたいです
“忖度しないこと”誠実さを持つこと”です。「ここがダメ」と当人の行動に対する改善点を、ストレートに課題定義し、「どのようにするべきなのか」というあるべき姿を実直に伝えます。その課題を改善し、現状の実力やリソースのギャップを埋める方法を、一緒に考えるところまでが新人育成かなと。フィードバックを柔らかくし、言葉を選ぶことなど”婉曲な伝え方”の部分にばかり集中してしまうと、本人が最短で成長する道筋を奪うことになります。その際、指摘は、人格ではなく行動への建設的な批判であるべきだと、私は考えています。
また、「なぜそれをやるのか」という背景情報の共有やラップアップは、丁寧に行うことを心がけていますね。背景が理解できれば、タスクは作業ではなく、意味ある行動に変わりますから。特に新人のうちは細々とした作業を任されることも多いでしょうが、私はこの世に“タダの雑用”と分類されるような仕事は一つもないと、考えています。細かなことを想像しきって。丁寧にやり切れて。そのような胆力がある新人を育て、クライアントに対する戦略的な思考で提案していく。その登り口を整えておくことも、私の務めだと思っています。
バイデンハウスのカルチャーを教えてください
徹底されたクライアントの成果第一主義、この一言に尽きます。どのような厳しい制約があろうと、どこまでもやりきるという社風です。
当社のコンサルタントは、常にクライアントを最も満足させることに対して、余念がありません。通常、案件に対して、フィジビリティが合わないものは請け負わない、というのが業界のセオリーですが、当社は違います。たとえ、売上に繋がらないとしても、クライアントの目的を見据えて、アドバイスや提案をします。できる・できないの2軸ではなく、できる・もっとできるの2択でクライアントに対峙する。そのプロフェッショナリズムが、会社全体の士気と成長スピードを支えています。
一切の妥協を許さないストイックな姿勢ですが、実はカジュアルさも持ち合わせています。当社のコンサルタントはスーツを殆ど着ません。その個性やカジュアルさを服装や髪型、ピアス、タトゥーといった見た目からも感じていただけるかと思います。ただ、裁量や自由は「何をなし遂げるべきか」を自律的に考え、実行までやり切ることができる人にのみ許されるものだと考えています。大胆な提案や、新規的なアイデアは大いに歓迎されます。その分、最終的な実行と責任までを担う覚悟が求められます。このメリハリのあるカルチャーが、私は性に合っているし、当社のコンサルタントが全員で大事にしたい社内文化です。
三上さんの思う一緒に働きたい人はどんな人ですか
何かひとつ、徹底的に探究した経験がある人と働きたいと思っています。それはゲームでも、スキンケアでも、思想体系でも構いません。自分なりの問いを持ち、仮説を立て、深く掘り下げていく。その“探究の姿勢”こそが、その人の思考スタンスや言葉に深みを与えると感じています。好奇心の質と鮮度は、仕事の質に直結するものです。
私たちが重視しているのは、「スキルセットの有無」よりも「仕事に対する向き合い方」です。どのような領域であれ、自分の視点で好きなものを掘り下げてきた経験は、言葉に説得力を宿し、判断や行動に確かな軸を生みます。そういった“個の強さ”がある人には、プロフェッショナルとしての矜持が自然と備わっている。私はそう考えています。
プロフェッショナルとは、勿論与えられた業務をこなす人のことを指す言葉ではありません。プロフェッショナルとは、自ら意味を問い直し、より良い形を模索し続ける人です。そうした姿勢を持つ方と一緒にこれからのバイデンハウスを創っていきたいですね。