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創業ストーリー#1【後編】 - 3児の母になりエネルギー領域で起業するまで by ナナ

【前編】はこちらから。

創業ストーリー#1【前編】 - 3児の母になりエネルギー領域で起業するまで by ナナ | Tensor Energy株式会社
はじめまして、堀ナナです!Tensor Energyという会社のファウンダー、共同代表をしています。会社設立から4ヶ月が経ちまして、プロダクト開発のための最初の外部資金を調達し、チームも7人体制になりました。いわゆるシードラウンドからシリーズAを目指すフェーズにあるスタートアップです。こちらが資金調達についてのお知らせはこちらから。 ...
https://www.wantedly.com/companies/TensorEnergy/post_articles/385829

再エネファイナンススタートアップの立ち上げ〜東京から浜松そして福岡へ〜

ところが2014年に九州電力が新規の再エネの受付を一時停止する、という事件が起き、再エネの接続ルールが大きく変わり、市場の様相も大きく変わりました。フィルターは戦略コンサルタントとしてのキャリアを積むため大手ファームへ。私はそのままファーム留まり再エネ政策関連のリサーチと電力セクターのモデリングに取り組むようになりました。

そこから、固定買取制度に頼らずに分散型の再エネをファイナンスする道を模索するようになります。

2年後、2016年にコンサルからスピンアウトする形で、福岡を拠点に再エネのファイナンス、開発、建設、運営を行うスタートアップの立ち上げに参加することになりました。もんじゃ屋の会合から5年、ついに日本で事業会社としてスタートすることになったのです。

これまた時を同じくして第二子が誕生。設立から2年程は家族も巻き込んで、身を削って働きました。当時幼稚園児だった長女は、夕方以降はオフィスで粘土やお絵かき、会社設立とほぼ同時に生まれた長男がはじめてハイハイしたのもオフィスの中でした。

そして何故かクラシック大企業に勤めていた夫が、転職してくることになり、第二子が1歳になる頃、中部拠点の立ち上げに伴って、家族で静岡県浜松市に移りました。プロジェクトの組成、開発、ファイナンス、人事その他の業務だけでなく、工事現場にも飛び込む羽目になりました。

隣から遺跡が出てきたり、山全体が岩でできていて杭が刺さらなかったり、水路の上に近所の誰かが置いた鉄板があったりなかったり、大雨で土砂が流れて田んぼの水が濁って苦情が殺到したり。ほとんど毎日どこかで炎上していて、火消しに走っていました。一度コミットしたらやり抜くと心に決めて突き進みました。それでついたあだ名がハニーバッジャー。ミツアナグマというサバンナに住む哺乳類です。怖いもの知らずで、立ち直りが早くて、しつこいと言われています。詳しくはこちらをどうぞ。

文字通り泥だらけ、傷だらけになりながら、地域の業者さんや現場に足を運んで、数十件もの再エネ発電所を作って行きました。

その全てに、数多くの人々と、語り尽くせないそれぞれの物語があります。関わったすべての発電所が思い出深く、ある意味で我が子のようなものです。ママ会においては必ず盛り上がる難産エピソード。私は3人とも超安産だったので特に語るところがないのですが、発電所の難産エピソードなら朝まで語れます。需要があればまた別の機会に。

そんなこんなで1年間を浜松で過ごし、福岡へ。浜松も良かったけれど、こんなに食べ物が美味しくて山も海も近くて、ここは天国かと。今では4年が経ち、娘は博多弁を使いこなし、長男はソフトバンクホークスの虜です。

福岡に来た頃には、社員数は30名を超え、カルチャーの浸透、コミュニケーション、組織構造の見直しなど、課題が山積している状況でした。徐々にカルチャーを体現しつつ継承し、営業チームのキャプテン的な役割から、マネジメントを求められるようになりました。アメフト部の部室みたいなチームを作るのは本当に楽しく、契約取ったらみんなでお祝いするカルチャーが自然と出来上がっていくのが素敵でした。

悲しいことも辛いことも沢山ありました。自分に決定権が無くて仲間を守りきれなかったこと、悔しかったこと…ここで書いてその思いを供養しちゃうのはズルい気がするのでこれは抱えておきます。

さておき、プレイヤーとして成果を出しながらマネジメントすることの難しさに度々ぶつかりながらも、仲間を増やして信頼して任せていく、ということを学びました。そうしてグローバルでは社員が120名を超えるようになっていました。

今では再エネ発電所のファイナンス、開発、建設、オペレーションの全てをカバーする会社になっています。当時のチームメイトとは、長い時間を一緒に過ごして、衝突することもありましたが、未だに強い絆があります。スタートアップでのチームメイトとの関係は一生モンです。また新しい仲間に会えるのをワクワクドキドキ楽しみにしています。

さて、一方で当初目指した補助政策に頼らないファイナンスが置き去りになってしまったことへの違和感がずっと燻っていました。さらには夫婦で同じ職場で肩を並べて働くことが限界を迎えていました。もともと寝ても覚めても常に仕事のことを考えてしまうタイプなので、家でも子どもたちが寝ればブレスト、相談、議論を始めてしまい、夫も私もそのことに疲れ切っていました。こうして、退社を決意しました。
ランチにペンネアラビアータを食べながら、一番仲の良かった同僚に、辞めることを伝えました。吹き出した汗と涙の量は今では語り草です。

農業の模索〜アメリカ横断から第三子誕生とコロナ禍の始まり〜

完全に燃え尽きていたので、次の仕事も何も決めず、子ども達2人を連れて1ヶ月かけてアメリカを横断することにしました。2019年夏のことでした。

ニューヨークから入って、車でロサンゼルスまで、各地で友人を訪ね、ハイキングをしたり、泳いだり、ファーマーズマーケットに立ち寄ったり、農園に宿泊したり、キャンプをしたり、長いドライブの中で子ども達とたくさん話をして過ごしました。

帰国してもやはり就職する気になれず、農業領域で事業を開拓しようと、コンサルとして様々なプロジェクトを受けながら、かつての同僚と一緒に農業領域を模索し始めました。そんな折、久しぶりに連絡をくれたフィルターが合流。翌年の春、新型コロナウイルスがじわじわと広がりを見せる中、第三子が誕生。

緊急事態宣言の中、事業計画を練り、IoTを活用したビニールハウスの遠隔制御システムを開発し、これまた泥だらけになりながら、仲間たちと一緒にハウスを建設しイチゴの栽培を始めました。そのためなのか、我が家の末っ子次女はイチゴに目がなく、来週迎える2歳の誕生日のプレゼントにはイチゴをリクエスト。

エネルギーへの再チャレンジ〜Tensor Energy設立へ〜

自動化システムのプロトタイプが完成し、他のハウスからの依頼も頂けるようになり、どうにか最初のシーズンの収穫を終える頃、地主さんの要望で退去が決まりました。代わりの土地がなかなか見つからず、無念でしたが撤退を決めました。

そして一年程離れていると、むくむくと湧き上がる再エネへの想い。
「グローバル企業の日本での再エネの調達戦略のプロジェクトを手伝って欲しい」、とコンサル時代の同僚から連絡を貰って、二つ返事で「やりましょう!」と返事をしていました。

実はフィルターも、「蓄電池を使ったテクノロジーソリューションを作りたい」という気持ちをこの5年程温めていました。
それぞれの前職へのコミットメントが終わったところで、本格的に事業の構想を練り始めたのが、2021年の夏でした。
再エネ発電事業者、需要家、投資家、建設会社、保守管理会社などなど、様々な方とディスカッションを重ねました。いきなりの「お久しぶりです!」の連絡に快く応えてくださる方々には感謝しきりです。
VCの方々にも壁打ちにお付き合い頂き、約半年かけて事業コンセプトを練り上げました。

電力のGXとDXを最低限のリスクとコストで実現する

これが私達のミッションです。
そのために私達は、再エネ発電事業者に対して、意思決定や業務プロセス、オペレーションをサポートする、テクノロジープラットフォームを提供して行こう、と。

そして2021年11月に法人登記を行い、Tensor Enegyを設立しました。

ミッションとプロダクトの構想が出来る前から、少しずつ手探りでVCの皆さんとお話を始めていました。そして幸運というかもはや運命的に、エネルギーと蓄電池の領域に深い情熱を持ったキャピタリスト、ジェネシアベンチャーズの水谷さんに出会うことができました。共通した志を持った素晴らしいチームで、ご一緒させて頂けることに本当にありがたく思っています。
こうしてプロダクトもまだないシードの段階から、ジェネシア・ベンチャーズにご出資頂き、伴走していただくことになりました。そしてNTT Docomo Venturesのインキュベーションプログラム、/Hubの6期生としてご採択頂き、こちらでもお世話になっています。


NDVの伴走型プログラム第6期が開幕!若きスタートアップが新たな創造や変化に挑む
2019年に開始されたNDVの「/HuB(スラッシュハブ)」は、これまでの第1期から第5期までに計20社の支援を実施してきた。それぞれのスタートアップの事業成長を第一目的にしており、既定の支援メニューではなく、採択されたスタートアップからのリクエストに応じたサポートを行なう点が特徴の1つ。中には、大手企業とのアライアンスや新規の資金調達に成功するなど、着実な事業成長を遂げたスタートアップも出...
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/nttdocomov0208/
株式会社ジェネシア・ベンチャーズ(Genesia Ventures, Inc.)
ジェネシア・ベンチャーズは、アジアの革新的なデジタルビジネスを手がけるスタートアップにシード・アーリーステージでの出資を行う、独立系のベンチャーキャピタルです。デジタルの力によってもたらされる、社会の新しい"あるべき姿"を実現するスタートアップの成長スピードを最大化することにコミットしていきます。
https://www.genesiaventures.com/

そして現在、世界各国から、エネルギー、データサイエンス、ソフトウェア・エンジニアリング、デザインのエキスパートが仲間に加わってくれています。2022年5月にプロトタイプ版をローンチすることを目指して、Tensorプラットフォームの開発を進めています。

終わりに

この11年で、私は3人の子どもの母となり、再エネ業界に入って、泥だらけ、傷だらけになりながら、みんなのちからを借りて、たくさんの学びを得ました。
これからも、みんなのちからを借りながら、100年先もその先も、全ての人に、等しく、持続可能なエネルギーを届けることに貢献したいと思っています。
というわけで、応援、そしてご応募よろしくお願い致します!!!

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