これは、製造業のお客様と話していると、本当によく聞く言葉です。
AI外観検査という言葉自体は、ここ数年でかなり広がりました。
実際、工場の現場でもAI導入への期待は大きくなっています。
でも、現場で話を聞けば聞くほど、理想と現実のギャップも見えてきました。
たとえば、多くのAI外観検査は「不良品を学習させる」必要があります。
傷、異物、欠け、変形。
AIに「これが不良です」と覚えさせるためには、大量の不良画像が必要になる。
でも、現場からすると、そもそも不良って“たくさんあってほしくない”ものなんです。
品質改善を積み重ねた結果、不良発生率がppmレベル(100万個に数個)まで減っている現場も珍しくありません。
つまり、
「AIを導入したい。でも、AIに学習させるための不良がない」
という、ある意味とても製造業らしい矛盾が起きていました。
さらに、日本の製造業にはもう一つ特徴があります。
少量多品種です。
たとえば食品工場なら、扱う野菜や食材が日によって変わる。
工業製品でも、品番や仕様が頻繁に切り替わる。
そのたびにAIを学習し直し、
調整し直し、
場合によってはモデルを作り直す。
現場では、AIを使うための準備そのものが大きな負担になっていました。
「AIって、結局大企業じゃないと使えないよね」
そんな空気を感じることも、正直少なくありませんでした。
でも僕たちは、そこに強い違和感がありました。
本来、AIって、現場を楽にするためのもののはずなんです。
なのに、
AIを使うために現場が苦労している。
これでは、本末転倒だと思ったんです。
だからOUENでは、「大量の不良画像を前提にしないAI」を本気で作ろうと決めました。
そこで生まれたのが、生成AIの考え方を取り入れた「ゼロ学習AI」です。
ゼロ学習AIは、従来のように「この不良を覚えてください」と大量学習するだけのAIではありません。
“正常とは何か”
“違和感とは何か”
という「概念」を理解することで、学習していない異常に対しても柔軟に対応できる仕組みを目指しました。
実際、レタスで調整したAIが、サニーレタスの異物検出にも対応できたケースもあります。
さらに、数枚の画像を追加して数分間調整するだけで、未知の異常に対応できるケースもありました。
これは単なる“検査精度の話”ではありません。
現場の立ち上げ工数を減らし、
AI導入のハードルを下げ、
「AIを試してみたいけど無理だった」現場でも使える可能性があるということです。
実際、お客様から、
「2〜3年探していたソリューションが、ようやく見つかりました」
と言っていただけたことがあります。
その言葉は、今でも強く印象に残っています。
たぶん、そのお客様が探していたのは、“AI”そのものではなかったんだと思います。
本当に欲しかったのは、
- 現場で運用できること
- 品種変更に耐えられること
- 学習に何か月もかからないこと
- 不良が少なくても使えること
- 現場の負担を増やさないこと
そういう、“現実の製造現場でちゃんと動く仕組み”だったんです。
僕たちは、そこに応えたい。
AI技術そのものを作ることが目的ではありません。
技術を通して、
現場の困りごとを減らしたい。
「AIは難しい」
「うちでは無理」
そう思われていた現場でも、
「あれ、これなら使えるかもしれない」
と思ってもらえる世界を作りたい。
特に日本の製造業は、
少量多品種、
高品質、
改善文化、
職人技術。
世界でもかなり特殊で、難易度の高い現場です。
でも逆に言えば、そんな現場で使える技術は、本当に社会に必要とされる技術だと思っています。
OUENのゼロ学習AIは、まだ発展途上です。
それでも、
「AIを現場に合わせる」
という発想で、
これまで導入が難しかった領域に、一歩ずつ可能性を広げています。
僕たちはこれからも、
“AIを導入すること”ではなく、
“現場で本当に役立つこと”
にこだわり続けたいと思っています。
そしていつか、
「AIって、現場をちゃんと助けてくれるんだね」
と自然に言われる世界を作れたら嬉しいです。