プロフィール
澤田 隼(Sawada Shun) 株式会社Hitamuki 代表取締役
大学時代のバンド活動をきっかけにイベント企画・集客に目覚め、マーケティングを学ぶべく新卒でデジタルマーケティングのプライム上場企業に入社。SNS運用・デジタル広告・サステナビリティマーケティングなど幅広い領域で実績を積み、若くして管理職へ登用される。しかし組織で感じた"窮屈さ"を機に独立を決意し、株式会社Hitamukiを創業。生成AI活用支援・伴走型コンサルティングを通じて、地方中小企業の自走を支援している。
大赤字のライブイベントから始まったビジネスキャリア。そして「敷かれたレール」への違和感
社会人キャリアで言えば新卒入社した会社が最初だが、ビジネスとしての原体験はもっと前にある。
大学時代にバンドをやっていた澤田は、先輩から「お前、イベントやってみろよ」と声をかけられ、八王子のライブハウスを借りてイベントを企画した。場所代は約10万円。チケット1枚3000円で、バンドの仕入れと売り上げを計算しながら準備を進めた。
自信満々で臨んだ初回、お客さんは5名しか来なかった。大赤字である。
それでもやめなかった。計3回開催し、最終的に150〜200人を集めることができた。
「今思えばよく大学2年でやったなと思いますよ。当時は敗北しかしていないのに、なんとかトントンまで持ってきた、ぐらいの感覚でしたが(笑)。」
この経験で最も苦労したのが集客だった。ライブハウスを抑えることも、バンドを集めることも、慣れてしまえばそう難しくない。問題は、チケットを買ってくれる「お客さん」を集めることだった。当時はSNSが流行り始めた頃で、「効率的に人を集めることをマーケティングというらしい」と知り、それを学べる会社に入ろうと決めた。それが就職活動のきっかけだ。
新卒で入った会社でのキャリアは、本当にボロボロのスタートだった。パソコンの操作もおぼつかない。翌日には海外出身の上司から「澤田くん、日本語苦手なんだね」と言われたぐらいだ。
それが猛烈に悔しかった。
深夜12時、1時まで過去の提案資料を読み込み、用語を調べ、社内の過去の資料を片っ端から漁り続けた。先輩たちの思考プロセスや分析の型を、分からないなりに頭に叩き込んだ。半年で先輩から1人立ちできたのは、あの執念があったからだと本人は振り返る。その後はSNS運用から広告、サステナビリティマーケティング、管理職と、幅広く経験を積んでいった。
26歳の時、年収も上がり、3,000名以上いる社内でも確実にプレゼンスをあげていた。客観的に見れば、申し分ない環境だ。
だが澤田の内側では、違和感が少しずつ積み重なっていた。
「役割が上に上がれば上がるほど、現場で成果を出すことから離れていく感覚があって。自分がこういうことをやりたい、会社のために何かをしたいと思っていても、会社としての方針や上司の考えからは逃れられないという窮屈さがどんどん溜まっていったんです。」
組織のレールの上を走っていると、そのレールを敷いた人のスピードでしか走れない。ある程度のスピードまでは上げられるが、突き抜けようと突っ走れば止められる。
「周りから見ると順風満帆かもしれない。ただ、内側では不満足というか違和感が溜まっていく——そんな状態でした。」
何も決めないまま、辞めた。1人の人間としての価値を測ってみたかった。
独立を考える中で、周囲から「やめとけ」と言われたことは一度もなかった。親からも、師と仰ぐ人からも、同期からも「大丈夫でしょ、やってみなよ」と背中を押された。
ただ、自分の中で迷った瞬間はあった。起業するかどうかではなく、何をやるかをまったく決めないまま「やめます」と言って退職してしまったからだ。
「上場企業の管理職という看板を外した時、1人の人間としての価値がどれだけあるのか、どうしても測ってみたくなったんです。」
退職後の3ヶ月は、ほぼニートだったそう。本人曰く「ドラクエで世界を救っていた」のだが、笑いながらそう話す裏で、自分が本当にやりたいことを考え抜いた時間でもあった。
当初はセミナーやウェビナーをAIで効率化するビジネスで起業しようと考え、法人を設立。しかし、2ヶ月でニーズの手応えがないと気づき、すぐに別事業へピボットを模索した。
「もう法人を立ててしまっているから止まれないんですよ(笑)。だったら前職の知識を使って実績を作ろうと。『無料で研修をやります。だから話を聞かせてください』というところから始めて、研修の中でクライアントが本当に困っていることを拾い上げて、何でもやってやろうと決めました。」
先に綺麗なビジネスモデルを作ってローンチしたわけではない。現場に入り込み、ニーズを拾いながらサービスの形を作っていった。プロダクトアウトではなく、徹底したマーケットイン。今の伴走型支援やコンサルティングは、そこから生まれている。
「ニーズから作っていったので、外れるはずがないっていう感覚がありましたね。」
100点を1万点にする仕事。地方中小企業と、自走という哲学
なぜ、地方の中小企業にフォーカスしているのか。
最初の実績作りの段階で、上場企業と地方中小企業という真逆の2社を支援した。その時、ある運送会社でGASやVBAを使った仕組みを作ったところ、信じられないぐらい大喜びしてもらえた。
「それまでは、もっと高度なシステムを作らないと深く入り込めないんじゃないかと思っていたんですが、全然違って。非常に小さな改善でも現場にとってはものすごい成果になる。それを見た時に、『これ、いろんな中小企業に入ったら日本変えられるんじゃないか』と本気で思いました。」
1万点を1万100点にしても面白くない。でも、100点を1万点にするのはめちゃめちゃ面白い——その圧倒的な振り幅の大きさが、仕事として最高に楽しいポイントだと澤田は言い切る。
もう一つ、地方中小企業を選んだ理由がある。経営者と話した時の感触だ。大企業のような「AIで人を削減したい、省人化したい」というドライな話ではなく、「人を切りたいんじゃない。今いる人たちに、より幸せに働いてほしい」と語る経営者ばかりだった。
「中小企業にとって、人は本当に宝なんです。そういう想いを持った会社を、救っていきたいと思いました。」
その想いがそのままHitamukiの哲学になっている。世の中には「AI研修」が溢れており、かつては助成金やキックバックありきのビジネスも横行していた。しかし機能や使い方を学んだだけでAI活用が進むはずがないと、澤田は断言する。
「Excelの資格を持っている人が全員、実務で高度なVBAを組んで業務改善できるかといえば、絶対そうじゃないですよね。実務に定着させるにはOJTや伴走が絶対に必要なんです。」
Hitamukiが目指すのは、クライアントが自ら動く「自走状態」をつくることだ。支援が終わり、Hitamukiが関わらなくなる——それが本当の意味での成功だと澤田は考えている。
「コンサルファームのように、離れられない環境をわざわざ作って依存させるのは好きではないんですよ。そこに無駄なお金をかけるくらいなら、現場の社員の給料を上げてほしい。自走できない教育は教育じゃなくて、ただの依存だと思っています。」
その哲学は、数字にも表れている。支援実績の一例として、株式会社合通カシロジでは24時間の基礎研修と4ヶ月の伴走支援により、一般事務職メンバーが自らAIを活用して自走できる状態を確立。年間720時間の業務削減効果を創出した。その他企業も含めた生成AI研修受講者は2,800名を超え、研修満足度は94.1%を記録している。
取引先の代表から「Hitamukiさんって、AIの会社っぽくないよね」とよく言われる。澤田にとって、これが最大の褒め言葉だ。
「AI時代になると、技術的な提供価値の差はほぼなくなっていきます。そこで差が出るのって、やっぱり人間性だと思っていて。お互いの人間性が見えているからこそ、双方が本気でコミットできる。」
クライアントには、地方企業でも今でも頻繁に足を運び、会議室以外の繋がりも重視しているとのことだった。「ひたむき」という会社名が示す通り、Hitamukiはテクノロジーを扱いながら、どこまでも「人」の会社だ。
まだ何もできていない。だからこそ、これからのHitamukiを一緒に作りたい
採用記事だからこそ、あえてぶっちゃけておきたい——澤田はそう切り出した。
フルリモートで全国のクライアントに向き合っているからこそ、社内メンバーが気軽に集まれる環境がない。オンラインコミュニケーションは得意なチームだが、「みんな大丈夫かな」とふと心配になっても、すぐに声がかけられない。それがフルリモートの難しさだと、率直に認める。
もう一つ、代表として抱えている課題がある。
「コンサル、マーケ、研修、経営企画、どこも自分がオーナーシップを持とうとしてしまう。役割が人を作るってことは頭では分かっている。任せちゃえば成長する。でも、まだそこに任せきる覚悟ができていない。それが代表としての自分の弱さだと思っています。」
目標は、47都道府県すべてにクライアントがいて、全国に社員がいて、全員がその地域の平均年収以上を得られる会社にすること。日本を変える、地方を救うという視点で見れば、まだやりたいことの入り口にいる。
「だからこそ、僕の想像を超えて、領域を圧倒的に引っ張っていってくれる仲間が欲しいんです。」
仕事への向き合い方で、最近強く意識していることがある。「明日の自分に期待しないこと」だ。
やりたいことが山ほどある中で、「続きは明日やろう」と先送りしても、明日は明日でどうなるか分からない。信用できるのは、今この瞬間の自分だけ。だからもう1踏ん張り、2踏ん張りする。
「2週間後の講演資料を作るなら、今日のうちに過去のスライドをコピーして大枠の流れを転記するところまでの『10分』をやり切る。1文字でもいい、1トークンでもいいから、明日の自分のタスクを減らし続ける。その積み重ねが、5年後、10年後に信じられないほど大きな差になって返ってくると思っています。」
この記事を読んで連絡をくれた人と、澤田が最初に聞きたいことは決まっている。「この先、どんな人間でありたいか」だ。
「『年収をいくらにしたい』『どんな役職に就きたい』というのは、ただの自己満足であり欲望だと思っていて。そうじゃなくて、誰のために仕事をして、どんな価値を生み出して、どんな影響を他人に与えたいのか。他人軸で自分のありたい姿を語れるかが、人間の本質だと思っています。」
今はまだ自分軸だけでしか考えられなくても構わない。それを他人軸に置き換えた時にも本気で言えるかどうかが大事なのだと澤田は語る。
Hitamukiは、まだまだ整えている最中の荒削りな会社だ。だからこそ面白い。
「僕たちの哲学に共感して、この荒削りな環境を一緒にチューニングしながら上がっていける人と、ぜひ本音で話したいです。」