スタートアップの新卒採用が、大手日系企業にとって真の脅威になる時代
2016新卒は超売り手市場らしいですがですが、スタートアップもそこに凄い勢いで参戦していきています。スタートアップの採用は、もはやひと昔前の「やる気と根性」で汚いオフィスで夢と希望しかない、というのは全く違うフェーズに来ている気がします。ヒト、モノ、カネ、の全てにおいて、圧倒的に強い。
これまで大手日系企業のライバルは、外資系のコンサルや金融だったと思いますが、最近は「スタートアップ」が新たな競合として浮上してきていると思います。
ヒト
アメリカのスタートアップと状況が似てきていて、スタートアップでも、とびきりに優秀な層(例えばMIT航空宇宙工学科でPh.D.をとった学生がマッキンゼーを経て、大学同期の天才ハッカーと一緒に起業とか)が新しくビジネスをはじめています。
優秀な人たちにとって、働く上で一番おもしろい要素は、優秀な層と一緒に働けるかどうかだと思います。「ヒト」の視点でみたときに、魅力的なスタートアップが増えているということです。
カネ
数年前までは、数億円の調達でニュースになっていましたが、今では10億円越えの調達が何件も発表されています。スタートアップを立ち上げて数年で10億単位のお金をBSにぶつけて、モデルをスケールさせる。意思決定スピードが大企業の新規事業と較べて圧倒的に速いのは言うまでもなく、そこにカネを使う額やスピードでも追いつかれたら、もはや大企業の新規事業部が勝てる余地があるのか(特にウェブ領域において)疑問です。
モノ
10年前にウェブ・スタートアップを立ち上げようとしたら、サーバの管理やら請求書の管理やら、高いマーケティングコストやら、色々大変なことだらけでした。今は、全く違う。サーバも劇的に安くなったものを(heroku使えばもはやタダですね)必用な分だけ使い、請求書もウェブで管理でき、マーケティングだってFacebook AdsやGoogle Adsの方がマスメディアよりも的確にターゲットユーザを狙える。開発用のPCを考えても、マシンの性能も向上して、一台あればプロダクトをラクラク開発できるようになりました。
オフィスの観点からみても、シリコンバレーのスタートアップのように、日本のスタートアップは「働く環境」を重視する傾向が強まっています。実際に何社も国内スタートアップのオフィスを訪問したことがありますが、そのへんの大企業よりもよっぽどクリエイティブで働き易い環境です。
透明性が高まり、スタートアップと学生の距離が近くなる
今年来年と凄い数のスタートアップが上場していき、さらに勢いをつけて、大企業の脅威となっていくことでしょう。優秀な学生は、学生のうちからFacebook、Twitter、コミュニティ(そしてWantedly!)を利用して未来の明るいスタートアップを見つけては、即戦力として働いています。ベンチャーといえば、「暗くて怪しい」という時代から、「透明性も高まり、中に凄く優秀な人がいることが一目で分かる」時代になっているから、気軽にどんどん飛び込んでいけるんですね。(「ベンチャー」と「スタートアップ」のラベリングの進化も、そういったニュアンスの変化を表している気がします)
大企業はどうすればいいのか
こういった状況の変化に、どう大企業が立ち向かうのか。企業の中の透明性をあげて、中にいる人の志とかレベル感というのが、FacebookやTwitter、Wantedlyといったソーシャルメディアを中心に漏れ伝わっていくことを「制限」するのではなく、むしろ「推奨」することではないか、と思います。
実際に最近ニッポンのジレンマというNHKの番組でご一緒した野村不動産の刈内さんやファーストリテイリングのシェルバさん、三菱商事の堀口さんのように、社外で発信する社員を増やし、むしろ奨励していくことが、大企業のひとつの戦い方かなと思っています。