AIエージェントは、社会を変える力になれるか。Civic Lensで挑んだハッカソン、そして最優秀賞へ。
2026年9月5日、渋谷ストリーム。
AIの可能性を信じるエンジニアたちが集まった「Zenn Agentic AI Mini Hackathon with Google Cloud」。その舞台で、私は一つのプロジェクトを発表しました。
名前は、「Civic Lens(シビック・レンズ)」。
そして、結果は1位、最優秀賞。
この受賞は、私にとって単なるコンテストの結果ではありませんでした。AIエージェントという技術を、社会の課題解決にどうつなげていくのか。その問いに向き合い続けてきた中で得られた、大きな一歩でした。
技術が進化するほど、考えたいことがある。
AIの進化は目覚ましいものがあります。
文章を書く。コードを生成する。膨大な情報を整理する。そして今、AIは指示を受けて自ら計画を立て、複数の作業を実行する「AIエージェント」へと進化しています。
エンジニアとして、こうした技術の進化には大きな可能性を感じます。
一方で、私は考えます。
この技術は、私たちの暮らす社会を、もっとよくするために使えないだろうか。
地域には、解決したい課題が数多くあります。行政サービスの情報が必要な人に届かない。地域の課題が複雑に絡み合い、どこから手をつければよいのかわからない。住民の声や公開情報があっても、それらを整理し、次の行動につなげるには時間と労力がかかります。
情報が存在することと、その情報が人々の役に立つことは、必ずしも同じではありません。
その間にある壁を、AIの力で少しでも低くできないか。
そんな問題意識が、Civic Lensの出発点です。
Civic Lens — 社会を読み解き、次の一歩を見つける。
「Civic」は市民や地域社会に関わること。「Lens」は、物事を見るためのレンズです。
Civic Lensという名前には、複雑な社会課題をさまざまな角度から捉え直し、これまで見えにくかったつながりや可能性を見つけたい、という思いを込めました。
私が目指したのは、単に質問に答えるだけのAIではありません。
情報を読み解き、課題を整理し、複数の視点から考え、解決に向けた次の一歩を支援する。そんなAIエージェントの可能性です。
もちろん、AIが地域のすべての課題を解決できるわけではありません。地域に暮らす人々の実感や、現場で積み重ねられてきた知恵、そして人間同士の対話は欠かせません。
だからこそ、AIにすべてを任せるのではなく、人が考え、判断し、行動するための力を引き出す存在にしたい。
AIが人間の代わりに社会を考えるのではなく、人間が社会について、もっと深く考えられるようにする。
Civic Lensには、そんな方向性を込めています。
ハッカソンという、限られた時間との勝負。
ハッカソンの魅力は、アイデアを思いつくだけでは終われないところにあります。
限られた時間の中で、何を課題と捉え、何をつくり、どこまで形にするのか。技術的な実現性とアイデアの新しさ、そして誰にどのような価値を届けるのか。そのすべてが問われます。
AIエージェントの開発では、モデルを動かすだけでは十分ではありません。目的に応じて処理を組み立て、情報を適切に扱い、期待する結果につなげる仕組みが必要です。
技術的に面白いものをつくること。そして、それが実際の課題に対して意味のあるものになっていること。
この二つを両立させることが、私にとって重要なテーマでした。
Civic Lensを通じて追求したのは、AIエージェントの技術的な可能性を、地域社会やシビックテックという具体的な領域に接続することです。
アイデアを形にし、人に伝わる形で発表する。そのプロセス自体が、自分の考えを磨き直す機会にもなりました。
1位、最優秀賞。その先にあるもの。
2026年9月5日。
「Zenn Agentic AI Mini Hackathon with Google Cloud」でCivic Lensを発表し、1位(最優秀賞)を獲得することができました。
実用性とアイデアの新規性を評価していただけたことは、何よりうれしいことでした。
社会課題をテーマに掲げるだけではなく、AIエージェントという技術を使って、実際にどのような価値を生み出せるのか。その可能性を形にしようとした挑戦が評価されたことに、大きな意味を感じています。
同時に、受賞はゴールではなく、スタートでもあります。
本当に役立つものにするには、実際に使う人の視点が必要です。情報の正確性や信頼性、使いやすさ、そして現実の課題にどれだけ向き合えているか。考え続けなければならないことは、まだたくさんあります。
賞をいただいたから完成したのではありません。
むしろ、ここから何を積み重ねるかが大切なのだと思います。
インフラエンジニアとして、AIの可能性を社会につなぐ。
私はインフラエンジニアとして、技術を動かす基盤の重要性に向き合ってきました。
どれほど優れたアイデアも、安定して動き、必要なときに使えなければ、その価値を十分に発揮することはできません。
AIの世界でも、それは同じだと考えています。
モデルの性能だけではなく、システム全体の設計、情報の流れ、信頼性、そして実際に利用する人にとっての価値。そうした要素を一つずつ考え、技術と現実の間をつないでいくことに、エンジニアとしての面白さがあります。
AIエージェントが進化するこれからの時代、技術を試すだけでなく、技術によって何を実現したいのかを問い続けたい。
Civic Lensは、その姿勢を形にしたプロジェクトの一つです。
次の挑戦へ。
今回の最優秀賞を通じて、改めて感じたことがあります。
それは、AIの可能性は、技術そのものの中だけにあるのではないということです。
どんな課題に向き合うのか。誰のためにつくるのか。そして、つくったものを現実の世界でどう生かすのか。
その問いによって、同じ技術でも生み出せる価値は変わります。
私はこれからも、AIエージェントやクラウド技術への探究を続けながら、地域社会や公共領域の課題解決につながる仕組みを考え、形にしていきたいと思っています。
いつか、AIを活用することが特別なことではなく、誰もが必要な情報にアクセスし、自分たちの地域や社会について考え、行動できることが当たり前になる。
そんな未来に、エンジニアとして少しでも貢献できたらうれしいです。
Civic Lensの挑戦は、まだ始まったばかりです。
これからも、技術をつくることと、その先にある社会を考えること。その両方を大切にしながら、新しい可能性に挑戦していきます。
榊原 平