【スモールビジネス研究】個人事業の限界を突破する
私自身、40歳で脱サラしてフリーランスとなり、ライティングを生業として選択した。独立当初は仕事量を確保するのに大変苦労した。安価な仕事も含めて何でもかんでも受けていたら、やがて自分の首が回らなくなった。安くて、それなりに使えるライターと認識されたからだ。
次から次へと仕事が回ってくる。とにかくこなさなくてはならない。最初は忙しい自分が楽しいというか、自慢にもなったけれど、やがて嫌になってきた。やってもやっても終わらない。先ほども書いたように私は40歳からフリーランスになったので、それほど若くない。何日も徹夜して原稿を書くなんて無理だ。自分の作業工賃だけを積み重ねていくビジネスモデルにあっという間に限界を感じた。
不労所得が欲しくなるが、インタビューをして記事を書くような仕事で“ちゃりんちゃりんモデル”を構築するのは難しい。売り上げは欲しいし、お金も欲しいけれど、仕事がたくさん集まるとすぐに頭打ちになる。もちろん単価をアップするのが理想だけれども、それほど甘くはない。高く提示できるほど当時は自分の仕事を差別化できていなかった。そんなときに「カメラマン連れてこれない?」とお客様から声を掛けられるようになった。もちろん現場で仲良くなったカメラマンを連れていけるので、「紹介します」というと「口座作るの面倒だから、伊藤さんに手配料を払うんでスケジュール調整して連れてきてきてくれない?」という。
なるほど、こうやって自分の工賃以外のお金を得ていけばいいのか?と気づいて、仲の良いクリエイターに声をかけて、私が窓口になって顧客を握って、一緒にモノを作っていく体制をつくった。これはお客さんにとっても“ワンストップで対応してもらえる”という価値があった。仲間のクリエイターも“営業や顧客対応を伊藤に任せられる”というメリットがあった。これで三方良し。いわゆるスモールビジネスの原型ができあがった。
チームで制作物を丸っと請け負うと単価も上がるし、管理費やディレクション料が発生する。少し予算も多めにとってくれるので、例えばこれまでみたいに取材して文字起こしして編集ライティングまで全部自分でするのではなく、文字起こしを外注化するなんてことにもトライができる。利益もあがるし、自分の手も空いてくる。手が空いてくれば、次の営業戦略を立てて新しい仕事を取ってきて、仲間と一緒に取り組んで、みたいな流れができてくる。営業的にも可能性が広がる。営業マンとしても動きやすくなる。自分の意識が制作から営業的目線、もしくは事業的な観点に変わっていく。そして何よりも、“請負からの脱却”という意識が芽生える。この意識変革が大きかった。
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