コペンハーゲンは2016年5月、都市のデータを売り買いする取引所を世界で初めて開きました。しかし、同取引所は2018年にクローズしています。理由は需要不足でした。
市と首都圏、それに日立コンサルティングが組んだ事業で、City Data Exchange という名前でした。
有料で売れたデータセットは25件。無償で公開されたものが134件。そして最大の出品者は、運営していた日立自身で131件でした。
うまくいかなかった理由として挙げられているのは、データを出す側の評判リスクへの懸念、競合に手の内が漏れることへの警戒、中小企業側の技術と予算の不足です。
それに加えて構造的なものが1つあります。データは標準化された商品として複数の顧客に再販できない。買う側のニーズが個別すぎるからです。
では無償で出すとどうなるか?
ロンドン交通局が推計を出しています。
年間およそ100万ポンドの費用に対して、経済的な便益が最大1億3,000万ポンド。統一APIで80を超えるフィードを提供し、登録開発者が13,000人超、それを使うアプリが約600本、ロンドン市民の42%が利用しています。雇用は直接500人、サプライチェーンで230人。
ただしこの推計はロンドン交通局が委託し、デロイトが2017年にまとめたものです。委託した側に都合のよい数字が出やすい構図で、しかも示されているのは最大値なので、そこは割り引いて読む必要があります。
実際にはどのぐらい稼働しているのでしょうか。
28の国・自治体・国際機関のポータル、約40万件のデータセットを調べた学術研究があります。
フランスの国家ポータルでは、半数のデータセットが一度も閲覧されていませんでした。規模やプラットフォームや管轄の違いに関係なく、大半のデータセットがほとんど使われていない、というのが結論です。
稼働する事例に共通しているのは、ファイルではなくリアルタイムのAPIで出していること、開発者が集まり続ける場を持っていること、そして担当が恒常的な部署になっていることでした。
ヘルシンキは2014年に、運営をプロジェクトから市の常設組織へ移しています。予算がついている間だけ動く仕組みは、予算が切れた時点で止まるからです。
東京都はどうでしょうか。
2023年3月30日に、オープンデータのAPI提供が始まっています。発表では、掲載データ約54,000件のうちCSV約35,000件をAPI化する、という規模でした。公開されているAPI一覧を数えると、いまは71,451件あります。
ただし、カタログに載っているデータセット9,648件のうち、APIがあるのは4,268件で44%でした。都の本庁は76%にAPIがある一方、区市町村は19%です。データセット数が最も多い調布市は、1,487件のうち6件でした。
そしてロンドンが出していた「登録開発者13,000人」「アプリ600本」「市民の42%が利用」にあたる数字が、東京都側には見当たりません。APIが何本あるかは分かりますが、使われているかは分かりません。
まずは自分でAPIを叩いてみようと思います。
出典
・Assessing the value of TfL's open data and digital partnerships(Deloitte・2017年7月/ロンドン交通局の委託) https://content.tfl.gov.uk/deloitte-report-tfl-open-data.pdf
・City Data Exchange の経緯と「世界初の都市データ売買所」という位置づけ(Greater Manchester Combined Authority の事例資料) https://www.greatermanchester-ca.gov.uk/media/3529/copenhagen-city-data-exchange.pdf
・City Data Exchange(コペンハーゲン市 Copenhagen Solutions Lab) https://cphsolutionslab.kk.dk/en/focus-areas/city-data-exchange
・Copenhagen-Hitachi City Data Exchange(The Data Economy Lab/有料25件・無償134件・出品者内訳の記載) https://thedataeconomylab.com/explorer/copenhagen-hitachi-city-data-exchange/
・Open Government Data usage: a brief overview(Alfonso Quarati・ACM 2019/28ポータル・約40万データセットの分析) https://dl.acm.org/doi/10.1145/3331076.3331115
・オープンデータを新たにAPI形式で提供(東京都 報道発表・2023年3月30日) https://www.spt.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/03/30/04.html
・東京都オープンデータAPIカタログサイト https://spec.api.metro.tokyo.lg.jp/spec/search
・東京都の件数(9,648データセット/API 71,451件/API対応44%/本庁76%・区市町村19%)は、東京都オープンデータカタログのCKAN API と下記のAPI一覧CSVを2026年8月6日に全件取得して集計した値です。同じ手順で誰でも再現できます。 https://data.storage.data.metro.tokyo.lg.jp/digitalservice/130001_tokyo_opendata_api_list.csv
・Helsinki Region Infoshare の運営移管(2014年初頭に Forum Virium Helsinki から City of Helsinki Urban Facts へ) https://forumvirium.fi/en/opening-up-regional-data-2/ https://www.sitra.fi/en/projects/helsinki-region-infoshare/