「カッコイイだけが、デザインじゃない」
大学で最初に教わったのは、そういうことだった。
机の角がアールになっているのも、ドアノブの握りやすい形も、椅子の背もたれの角度も——それぞれに意図がある。人が触れるすべてのものには、設計者の「こうあってほしい」が宿っている。デザインとは、人とモノをつなぐ意図そのものだ。
その考え方は、グラフィックデザイナーとして働くなかでも変わらなかった。クライアントから依頼が来たとき、私がまず考えるのは「何を作るか」より「この人は本当に何を欲しがっているか」だ。打ち合わせでじっくり話を聞くのは、そのためだった。言葉にならない要望を引き出して、形にする。それが自分の仕事だと思っていた。
企画から撮影ディレクション、デザイン、入稿、納品まで——ひとりで全工程を回してきたのも、「全部わかっていないと、本当に良いものは作れない」という感覚があったからだと思う。
ある時、「実装まで自分でできたら、もっと速く、もっと精度高く届けられる」と思った。それでWeb開発を独学で始めた。ポートフォリオサイトを作り、認証つきのWebアプリを作り、実際にデプロイした。コードを書いていても、頭の中にあるのはやっぱり「これを使う人がどう感じるか」だ。
デザインも実装も、突き詰めれば同じことをやっている気がする。人に届けるための意図を、形にすること。その一点において、私はずっとブレていない。