1
/
5

私がロゴをデザインするときに考えていること (1) リサーチ編

はじめまして, デザイナのタカヤ・オオタ (@198Q) と申します。

これまで紙からWebまで, 様々な媒体のデザインを担当させていただいてきたのですが, その中でも特に好きなのが「ロゴデザイン」です。

ロゴデザインが好きになったのは, そこにストーリーやコンセプトという形で自分の思いを取り入れる余地が大きいと感じたことがきっかけでした。CIやロゴは他のデザインと比べて長く広く用いられる傾向があり, それらに思いを込めながら丹精に作ることができるというのは, 1人のデザイナとしてとても幸せなことだと感じています。

CIやロゴをデザインをするとき, 私は「リサーチ」「ストーリーとコンセプト」「ディティール」の3つを大切にしています。今回は私が普段, どのようなリサーチをしているのかご紹介したいと思います。

リサーチ : よく知ること

制作に入る際, コンセプトやデザインを考える前に様々な角度からリサーチを行います。
私の場合は下記の3点を重点的に調査します。

A. CI/ロゴデザイン全体のトレンドを知る

B. 同業他社のデザインを知る

C. 業界について知る


A. CI/ロゴデザイン全体のトレンドを知る

CI (コーポレート・アイデンティティ) には一定の「普遍性」が求められます。

これは企業がゴーイング・コンサーン(※)の原則に従って運営されているのなら, その企業の顔となる CI も中長期的な耐久性を備えているべきだという考えに則っています。しがしながらコカ・コーラやスターバックス, アップルのように強力なブランド力を持つ企業でさえ, 時代に合わせてロゴのリデザインを行っているように, CI には普遍性と同時に「時代性」も求められます。時代性 (トレンド) の強弱はプロジェクトに応じて使い分けられます。故に「今, どんなデザインが好まれているのか?」「今, どんなデザインタイプが主流 (そして主流でない) のか?」ということを知るためにロゴデザインのトレンドを探ります。



http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0408/08/news005.html

B. 同業他社のデザインを知る

「普遍性」と「時代性」のバランスは, その業界の「特殊性」に依存します。 

消費財やサービスのように, 生活者に近い業種は社会や生活者に寄りそう傾向が高いので時代性を重視することが多く, 商社や金融、BtoBビジネスは堅実性・普遍性を重視することが多く見られます。普遍性と時代性, 特殊性のバランスを見定めるために同業他社の傾向を把握します。 またこのリサーチを通して各業種に適切なトーン&マナーの感覚を掴んだり, 他社とクリエーティブの差別化を図ることにもつながります。 

C. 業界について知る

上述の2点に加えて, その業種/業界について調査することも大切にしています。 

デザインの対象となる業種/業界の歴史と現在/未来の動向など,その業界の構造について見た目のデザインとは直接関係が無さそうな部分についても調査を行います。同業他社のクリエイティブを知ることはポジショニングの武器となり, その業界全体について知ることはコンセプト・メイキングの土台となります。 コンセプト・メイキングのフェーズでは, その業界とクライアントの歴史や動向, 思想からキーワードをたぐり寄せてストーリーとコンセプトを作っていくことも多いので, 業界に対する知識は教養として大いに役立ちます。

可能性の吟味 : リサーチとコンセプトの橋渡し

時間は有限なのでリサーチできる量には限りがありますが, 重要なのは「”ひらめき” が生まれる」時点での「リサーチの総量」だと考えています。

デザインについて考えはじめてから5分でアイデアがひらめくこともあります。クライアントとの会話から得たキーワードをコンセプトやデザインと瞬時に結びつけられることもあるかもしれません。しかし “ひらめき” を過信することは危険だと考えています。なぜなら, その “ひらめき” はよく考えてみると特別なものではなかったり, 発想は面白くてもコンセプトやデザインと美しく結び付けられない可能性もあります。私がなによりも恐れているのは「もっとよく調べ, よく考えていれば, より良い “ひらめき” が産まれていたかもしれない」ということです。 

私はリサーチの段階では制限時間を設定した上で, できるだけ多くのことを調べてコンセプトづくりへの可能性の吟味を行うようにしています。 “ひらめき” になるものがあったとしても「可能性」に留めておき, 制限時間を迎えてから初めて「このアイデアを基にしてコンセプトを作り、デザインに綺麗に落とせるか?」ということを考えます。この方法を取ることで “ひらめき” 同士を比較したり, リサーチ時には “ひらめき” だと感じていなかったものからコンセプト・メイキングの可能性を見出したり, コンセプト・メイキングとリサーチのフェーズを行き来する際に追加で調査に時間を掛けずに制作を進めることができます。 


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

私がストーリーとコンセプトを意識したロゴを作りはじめたとき, コンセプトとして整合性が取れなかったり, ストーリー/コンセプトは作れても上手くデザインへと落とし込めないことに悩んだことを記憶しています。しかしリサーチの量を厚くしてキーワードやイメージをすくい上げる作業を続けることで, リサーチから実制作まで一貫した思考を持てるようになってきました。

次回はリサーチと結果の分析を, どのようにコンセプトとデザインに結びつけているのか, 実例を交えて書きたいと思います。


TAKAYA OHTA.
TAKAYAOHTA.com

31 Likes
31 Likes
Like Takaya Ohta's Story
Let Takaya Ohta's company know you're interested in their content