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ベンチャーのオフィスづくりの現場より

ベンチャー企業のオフィスづくりをする中で見えてきた、新しいデザイナーの役割とは?


もう一度目的づくり
ベンチャー企業のオフィスづくりをしていると慣習にとらわれず、より合理的なオフィスづくりが必要となります。例えば、居抜きでのオフィス移転の場合。ベンチャーにとって採用は成長に向けた最重要課題となりますが、それに伴ってメンバーを収容できるオフィススペースの確保も避けて通れません。しかも、資金に余裕がある訳ではないため、ギリギリのせめぎ合いの中で事業を進めていく必要があります。そんな場面で有効な選択肢が居抜きでのオフィス移転です。前のテナントが原状回復せず残していった設備を活かすことで、投資費用を抑えてスペースを確保することができます。ここで求められるデザインは、なるべくつくらないデザイン。デザイナーであるにも関わらず、必要最小限のデザインにとどめておくことが、お客様の成功に近づくポイントになります。

求められる役割づくり
プロジェクトによっては、複数のベンチャー企業の成長だけでなく、大学や市民も巻き込んだ新しい協力を目指すものもあります。この場合は、デザインの前提となる各プレーヤーのニーズを引き出し、協力の場面を構想しながらデザインを進めていきます。一般的にデザイナーの役割はモノに形を与えること、あるいはモノを通じた体験を形づくることと言われています。しかし、今までの常識では実現できないことを実現していきたい、そんな現場で求められていることは、そこから一歩踏み込み、クライアントが求めている状況をどのように実現するか構想すると共に、いかにそれを実現できるか、状況に合わせて自身の役割を足したり引いたりしながら、実現にたどり着くためのデザイナーという新たな役割が求められているように思います。

一方、クライアントの側にも一般的なデザイナーの役割イメージがあります。それにとらわれすぎると、やはり新しい合理的なオフィスづくりを実現することができません。そこで必要になるのは、前提のすり合わせです。そもそも何を目指していて、何を解決して行かなければならないのか?クライアントの曖昧な理解を補って、共に取り組むテーマを決めることが大切になります。ニーズを言葉で表現できない場合には、図面や模型を通じて言葉を生み出していくこともできます。経営者の課題意識ではなく、メンバーの課題意識を集めて現場感のあるテーマを生み出すことが必要な場面もあります。

挑戦に必要な仲間づくり
このような新たなデザイナーの役割を果たす上で、工夫できることが二つあります。一つはテーマを絞るということ。ベンチャーの組織の成長にテーマを絞り、同じ関心を持つ仲間で経験を共有すれば、使える引き出しを効果的に増やして相乗効果を発揮することができます。毎回ゼロから手探りで方法を探すのではなく、過去の経験を活かして手早くクライアントの役に立つことができるようになるのではないでしょうか。もう一つは解決方法を広く探る努力。自分にできることにとらわれず、色々な人の経験を活かすことで、新たな解決策を生み出すことができます。色々なやり方を普段から試しておくことで、解決の手段を広い選択肢の中から選べるようになります。

ベンチャーのオフィスづくりの現場のように、慣習にとらわれず、より合理的なデザインが求められる場面では、アメーバのような新たなデザイナーの役割が生まれつつあります。他の分野でもこのようなスタイルが広がっていくのではないでしょうか?

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