書籍【太平洋戦争史に学ぶ~日本人の戦い方】読了
本書を読んでいたら、心が痛くなってしまった。
これほど「杜撰」という言葉が最も当てはまることはない。
なぜ数々の杜撰な作戦が承認されて、実行されてしまったのか。
それによって多くの尊い命が失われたにも関わらず、なぜそれらを省みずに、何度も同じ過ちを犯したのか。
こういう事例を見ていると、日本人は和の心とか、チームワークが得意とか言っているが、本当にそうだろうかと訝しんでしまう。
なぜこんなにも、全体になるとチグハグになってしまうのか。
個々人の能力は、決して低いとは思えない。
それぞれが適当にやっている訳ではなく、むしろ皆真面目に一生懸命仕事をしていると言える。
しかし、なぜか全体になると、おかしな方向にいく傾向がある気がしている。
特に、ある課題があったとして、議論すれば議論するほど、結論が変なことになるというのは、私自身も何度も経験している。
なぜそんなことが起きてしまうのか。
事実として、杜撰な意思決定が繰り返されている。
立場が上の人間からすれば、前線の兵隊がどんなに苦労しても、それを厭わない部分がある。
さらに悪い言葉を使うとすれば、「最前線の人間は使い捨てしてもよい」という暗黙の了解があったような気がする。
これは私が初めて社会人となった当時でも、雰囲気としてそういう部分が残っていた。
特にマスコミ業界は人気職種であったから、やりたい人は他にいくらでもいる、ということで目の前の新人を丁寧に扱う必要がなかったのだ。
今でこそ「人権デューデリジェンス」という考え方が出てきたが、ここに辿り着くまでに戦後80年経っていると思うと、日本人の民族としての意識が決して高くなかったのだと思えてしまう。
日本のジェンダーギャップ指数が、世界の中で今でも低いことがその証左と言える。
もしかすると、日本人の根底に流れる、抗えない性質のようなモノがあるのかもしれない。
単純に人権やジェンダー問題を改善するだけでは、解決できない何かがありそうな気もする。
それぐらい、日本人の深層心理は複雑で、解き明かせないものがある。
先の大戦においても、本来の目的は戦争に勝つことのはずなのに、目的と手段をはき違える決断に至ってしまう例が、本書内で随所に描かれている。
読み進めると、痛ましくなってしまう。
私の父方の祖父は、先の大戦で兵隊として召集され、戦地で亡くなった。
私が生まれる前の話のため、当然顔も見たこともなく、私の実家には、若い頃の父に似た祖父の写真が1枚残されているだけだ。
この祖父は、亡くなった当時35歳だったそうだ。
父の話では、戦地からは遺骨も日常使っていた私物すらも戻ってこなかったそうで、祖父にまつわるものと言えば、先ほどの写真1枚が残っているだけである。
祖父のような戦没者はきっと数多くいるはずであるが、なにせ私自身が会ったこともない遠い人のために、どうしても実感が湧かない。
しかしながら、そんなエピソードは幼少の頃に父から聞かされていたので、太平洋戦争について興味を持って、数々の書籍を読んできた。
なぜ日本は、そもそも勝てない戦争に向かったのか。
なぜ、負けが見えていたにも関わらず、降参せずに戦い続けたのか。
きっと一生かかっても読み切れないほどの書籍がまだまだあるのだろう。
本書を読んで改めて感じたが、日本人はそもそも戦争というものに絶対向かない性質なのではないか。
前述の「杜撰さ」とも通じるが、精神的に「戦う」という感覚が備わっていないと感じるのだ。
だから、日本人はどんな相手であっても、戦うべきではない。
向かないのだから、徹底的に戦争を回避すべきなのだ。
もちろん、「戦争反対」をお花畑的に唱えているつもりはない。
回避しようと思っても、相手が攻めてくることだってあり得る訳だ。
もしそうなったとしても、相手に迎合する訳でも、相手に服従する訳でも、決してない。
何としても粘り強く交渉を繰り返し、ほんの少しでも優位な立場を引き出す。
国際社会に訴えて、日本の味方を一国でも増やすために、外交に全力を傾ける。
そして、徹底的に鉄壁の防御を構築する。
これらを国内の全才能を集結させてでも、実現させる。
今でもそれぞれの担当者が、当然プライドを持って仕事をしているだろう。
それを、よりパワーアップさせる必要性を感じるのだ。
今世界の国家間のバランスが大きく変化している。
特に日本の周辺国の状況は、安心していられる段階ではない。
戦後訪れた最大の危機だと認識する必要があるだろう。
アメリカが日本を守ってくれるというのは、幻想も甚だしく、自分の身は自分で守らなくてはいけない。
その準備が果たして出来ているのだろうかと思ってしまう。
いい加減に、杜撰な意思決定は止めていきたい。
絶対に戦争を回避するために、ありとあらゆる戦術で国際関係を乗り切っていくことは、現実的に可能だと思っている。
国家の頭脳を総動員すれば、戦争に勝つ方法ではなく、「戦争しない方法」の最適解を見つけ出せると思うのだ。
本書を読んで、様々感じることがあったが、大事なことは失敗を未来に活かすことである。
先の大戦の犠牲者たちに報いるためにも、平和な日本を未来永劫続けられるようにしたい。
今を生きる我々の使命なのだと、改めて感じたのだ。
(2025/4/1火)