書籍【話し方の戦略~「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術】読了
本当に「話す」という行為は難しい。
もちろん「話す」ことは、人間の日常的行為だ。
普段から我々は話すことを通して、相手とコミュニケーションを取っている。
しかし、「相手に伝わるように話しているか」と考えてみると、一気に「話す」という行為のハードルが高くなる。
さらに「相手の心に響いているか」となると、尚更だ。
つまり我々が普段行っている事は、ほとんどが相手に正しく伝わっていないと思った方がいい。
独りよがりの行為だと言っても、言い過ぎではない。
これは相当にドキリとしてしまう話であるが、自分が話を聞く側の立場で考えて見れば、分かるはずだ。
「この人の話は、なぜこんなに分かりづらいのだろう」
「気持ちよさそうに話しているので、遮るのが申し訳ないが、内容が頭に入ってこない」
こんなことは、多くの人が経験しているはずだ。
人間とは社会的動物であるにも関わらず、このようにコミュニケーションのエラーが日常的に起きているというのは、本当にもったいない。
この課題が、人類の長い歴史の中で、未だに解決されていないということも不思議な話だ。
こうなると、人類の宿命というか、解決できないように遺伝的にプログラムされている、とさえ感じてしまう。
色々と考えてみると、「話す」そして「聞く」という行為は、本当に面白くて、奥深い。
だからこそ、探求する意味があるのかもしれない。
著者は、学生時代に弁論大会で3回全国優勝をしたのだという。
この経歴は本当にすごい。
自分の思いを相手に伝えるために、届けるために、幾多の試行錯誤をしたのだろうと思う。
本書はそのノウハウが詰まった1冊である。
私自身もすでに50代後半だが、今まで「きちんと話す訓練」を受けたかと言えば、そういうことがない。
つまり私を含めたほとんどの人が、我流で話し方を会得したということなのである。
こうなると、どういう環境で育ったか、誰と出会ったかが、「話し方」のスキル面で大きな差を生む要因になってしまう。
私自身、社会人になって30年以上経っている。
思い返すと、話し方が磨かれた環境や出会いはあっただろうか。
一方で、話し方が下手でも、通常は「不便を感じない」というのも事実だろう。
だからこそ解決されない課題とも言えるのだが、普通に暮らしていたら、人前でスピーチする機会は、年に数回程度だろうと思う。
役職者なら回数は増えると思うが、そういう任に就いていない人は、もしかすると年1回もないのかもしれない。
そうなると、そのためだけに努力することが効率悪く感じてしまうのもしょうがない。
しかしながら、それも勿体ない話だ。
会議の中での発表でも何でも、積極的に話そうと思えば、機会は作れるはずだし、話す訓練はそういう場面で培われるはずだと思う。
何も事前準備をしていなくて、いきなりスピーチさせられる機会はあまり無いかもしれない。
しかし、会議の中で「君はどう思う?」と意見を求められるのは、普通にあることだろう。
そこで「ありません」と回答するのは、せっかくの機会を失うことになる。
そんな場面でスピーチのように演説する訳にはいかないが、考えていることをきちんと喋れるくらいのスキルは身に付けたいものだ。
当たり前かもしれないが、「話し方の三原則」は、徹底的に身に付ける必要がある考え方だ。
ついつい当たり前過ぎて、おざなりになってしまう。
無意識に話し出すのではなく、まずこのフィルターを通してから話すという習慣にするだけで、各段に良くなるだろうと思う。
「話し方の三原則」とは、①話す目的を明確化する、②対象者を分析する、③話し言葉の意識を持つ、ということであるが、どれも言われてみれば当たり前のことだ。
しかし、この原則がブレるから、話が伝わらなくなってしまう。
そもそも「目的が明確化していない話なんてあるのか?」と思ってしまうが、これが意外と多い。
話している内に、迷子のように分からなくなった、という経験もあることだろう。
とにかく「目的の明確化」。
誰に向けて、何の話をするのか。
相手にどう思ってもらうことが、この話のゴールなのか。
当たり前であるが、強く意識して、実践していきたい。
本書の中では、この三原則を踏まえて、大きく2点に絞ってメソッドを展開している。
内容に焦点を絞った「言葉を磨く戦略」
表現に焦点を絞った「音声・身振りを磨く戦略」
特に、言葉そのものを磨く戦略は、出来ているようで出来ていなかったと、反省してしまった。
「コアメッセージ」を込めるのは、まさにその通り。
これがあるだけで、伝わり方は全然違う。
今まで全く意識していなかったので、まずは目的を明確化した上で、「コアメッセージ」を作り上げたいと思う。
「ストーリーとファクトで構成」は、結構難しそうだが、これも意識して事前にどれだけ準備できるかのような気がする。
確かにストーリーで語ることが、相手の心に印象に残りやすいということは理解している。
飲み会の席でちょっと出てくるすべらない話が典型的だ。
抜群に上手く話ができる人がいて、すごく印象に残るというのは、ストーリーの組み立て方が出来ているのだろう。
数々のメソッドが紹介されているが、まずは少しずつでも取り組んでいきたい。
「話し方にこそ、戦略がある」
上手に話せるようになったら、それこそ人生が変わりそうだ。
意識して実践してみたいと思う。
(2025/3/16日)