書籍【決断の条件】読了
人は日々何らかの決断をしている。しかし「決断の本質とは何か?」を深く真剣に考えたことがあるだろうか?
気が付かないうちに意志決定を行っているという怖さ。
自分自身のことだけならば、それでもよいかもしれない。
しかしそれが、戦争のような重要な決断だったらどうだろうか。
そこまで極端な事例は想像しづらいかもしれないが、日々仕事で行っている小さな決断が、実は大きな結果に影響を及ぼしていると思うと、少し見え方が変わるのではないだろうか。
決断の大小に関わらず、人間が「何かを決めている」という行為では同じことだ。
当然、時に迷い、時に間違う。
正しい決断をすることは、大小に関わらず実は非常に難しいことなのだ。
ついつい無意識に決断してしまうこともあるかもしれないが、そこは改めて「決断そのもの」について、一度真剣に考え直した方がいい。
「決断することとは、何なのか?」
この問いを深掘りしてみることが重要なのだと思う。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは、ドイツの鉄血宰相と言われたビスマルク氏の言葉だそうだ。
「人が決断する」という行為にも、歴史があり、様々な格言がある。
本書では、マキャベリの「君主論」も数多く引用しているが、確かに参考にできるだろう。
さらに韓非子の言葉も引用している。
それらに追加して、著者ならではの解釈というか、意見を交えて展開している。
つまり、単純な解説本ではない点が、ある意味で面白い。
日本では「だます方が悪人。騙される方が善人」という感覚だが、これは日本だけの基準で、海外では逆だという。
圧倒的に「騙される方が悪い」という価値観の方が主流なのだ。
これは小さな事例かもしれないが、こんな知識も知っているか知らないかでは、グローバルでビジネスする場合の決断は大きな違いとなる。
「弱きを助け、強きを挫く」も日本人ならではの考え方かもしれない。
アメリカ人には「人々を助ける人がヒーローだ」だという価値観があるかもしれないが、日本人の感覚とは少し違う気がする。
こういう根付いてしまった価値観に対して、どういう決断をしていけばよいのか。
冷静に考えて、「世界の考え方は逆かもしれない」と想像しながら、決断していく必要があるということだ。
本書内では、数々の戦い方(戦術)についても、意見されていた。
その場面において、ある戦術を選択するという決断。
人間の脳は、そもそも複雑なものを処理できないから、物事を単純化して考えたり、時には思考停止して、問題を先送りにしたりする。
単純化することで決断しやすくする訳であるが、当然大事な部分が省略されてしまう弊害もある。
織田信長の「桶狭間の戦い」は有名な合戦であるが、これは奇襲作戦だったらしい。
信長は、以後一度も奇襲作戦は使わなかったということだが、これは奇襲で勝っても、本当の勝利ではないと思っていたからだそうだ。
その考え方は合理的と言えるのか。
信長の考える本当の勝ち方とは、「勝ち得る条件を先に作っておく」ことだそうだ。
偶然の要素を、出来る限り排除して、合戦に臨む。
つまり「絶対に勝つ」という状況を、先に準備しておくことが大事。
当たり前であるが「孫子の兵法」そのままである。
「戦略」とは、まさに「戦わずして勝つ」ことに他ならない。
奇襲は、勝つか負けるか、成功するか失敗するかも分からない悪手だというのが、信長の考え。
戦いの本質を見抜いているからこその、考え方と言える。
ビジネスでも「スピードが命」「先手必勝」とばかりに闇雲に進む場合があるが、一歩引いて物事を見る冷静さも必要だろうと感じる。
そもそも感情的になれば、正しい意思決定はできないはずだ。
信長は激昂型として知られているが、本当は冷静に考えて行動していたようにも感じる。
そうでなければ、天下統一まで上り詰める前に、とっくに敗北していたと思う。
勝つために冷静さを保つことは、絶対に必要。
ビジネスでも、感情的な上司が嫌われるのは、それが理由だ。
私自身「冷静さを欠いてないか?」と自問自答する日々である。
できるだけ感情的にならないで、広い視野で、視座高くいたいものだ。
(2025/2/15土)