書籍【ホワイトカラー消滅~私たちは働き方をどう変えるべきか】読了
東京のホワイトカラーは、確実にAIに仕事を奪われる。しかし、超人材難のこれからは、生き残る道がある。
すごく示唆に富む内容だと思った。
なるほど、確かにこれからのAI時代には、ホワイトカラーは余っていくだろう。
会社にしがみつく必要は本当にない。
現に早期退職して転職してる人も多いが、その満足度、納得感など考えると、自分の居場所がない会社にしがみつく方が不幸に見えるくらいだ。
もちろん収入を確保したい気持ちはあると思うが、本書を読めば読むほど、「早めに気持ちを切り替えた方が得だ」とすら思ってしまう。
ここは近視眼的にならず、グッとこらえて、遠い未来を見た方がいい。
感情的にならず、冷静になって考えてみれば、本書のロジックが理解できるはずだ。
ホワイトカラーの仕事のほとんどはAIに代替される。
それは間違いない。
しかし、これからの日本社会で、大失業時代はほぼ来ないと断言していい。
労働人口が足りないのは今だけでなく、これからもずっと続くからだ。
国家の存続すら危ぶまれるくらいの、人口減少社会がいずれ訪れる。
しかしその状況に至るまでには、時間がかかるのも事実。
2024年の年間出生数は約72万人だったらしい。
第2次ベビーブームの時期は、年間出生数が200万人を超えていたから、約3倍の差があるということだ。
2024年生まれが20年後に社会に出てくる頃には、第2次ベビーブーム世代が、労働市場から退出していく状況になる。
この事実だけ考えても、労働人口が慢性的に足りないのは間違いない。
つまり「働き手」である限り、日本国内において、失業する心配はほとんどないと言っていい。
もちろん希望の職種では働けないかもしれないが、他国のように「失業率が20%超え!若者が職にあぶれている」なんてことは、絶対に起こらないということだ。
これを聞くだけでも、心が軽くなる。
今後もずっと「若者」は、労働市場にとって貴重な存在となり続けるし、中高年だって「働き手」として必要とされ続ける。
しかしながら、本当に中高年のホワイトカラーも生き残れるのか?
これも数字で見てみると非常に説得力がある。
東京にいて、大きなビルの中で働いていると、ついつい錯覚してしまうが、実は日本全体で見ると、そんなホワイトカラーワーカーは、少数派なのだという。
数字上は、日本全体のホワイトカラー割合は約40%となっており、残り60%がそれ以外ということになる。
しかし、この40%のホワイトカラーも、全員が事務作業や、マネジメントだけやっているかと言えば、そんなことは決してない。
当社の中だけで見回しても、営業もイベントプロデューサーも、カテゴリ上はホワイトカラーの中に入れられてしまうが、何をどう考えても「現場で先頭に立って働いている人」である。
実際に身体を動かして仕事をしている時間が多い訳で、一日中事務作業や会議などだけ行っている人は、社内で言えばこの半分も満たないのではないだろうか。
(ちなみに私は、一日中事務作業をしている側である)
コロナ禍で「エッセンシャルワーカー」という言葉が一般的になったが、実は地方も含めた日本の雇用は、ほとんどが「現場」なのだという。
そして今、現場こそが圧倒的に人員が足りていない。
運転手しかり、接客しかり、農業も漁業も工場で働く人も、もちろん当社も!
何処もかしかも、「現場」は超人手不足なのだ。
そしてこれら「現場仕事」こそが、DX化がまだまだ進んでいない状態だったりする。
人手不足を補うために、接客などはドンドンとデジタル化が進んでいくだろうと思うのだが、逆にこれらデジタルツールを使いこなせる現場人員も足りていない。
現場で働く人数は多少減っても、デジタルツールの管理やメンテナンスで、ある程度の人員は必ず必要となる。
差し引きして考えても、結局人が足りないというのが、これからの日本の状況なのだ。
著者は、この様相が「ローカル」にこそ顕著に表れているという。
これも当然で、「ローカル」こそ、ほとんどが現場仕事で成り立っているからだ。
そして「やりとりは今でもFAXと紙伝票とハンコ」というくらい、デジタル化が進んでいない。
つまり端的に言えば「都心のホワイトカラーが職を追われたら、ローカルで働けばよい」ということなのだ。
これには、ものすごく腹落ちする。
冒頭でも記載した通り、都心のホワイトカラーが「収入を確保するために、今の会社にしがみつく」という心情は分からなくもない。
しかし、人手不足の職場こそ、背に腹は代えられない状態になっている。
ブラック職場には働き手が集まらないという考えも、ここに来てようやく社会に浸透してきたと思う。
そして当然だが、現場仕事の賃金は今後益々上昇していくことが、予想されている。
働きやすく、給料も高い会社でないと、人材獲得市場での競争に勝てないからだ。
「収入のために、会社にしがみつく」という考えも、大きく変化していく可能性は十分にある。
昔とこれからとでは、労働に対する個人の価値観も大きく変わっていく。
時代と環境に合わせ、きちんとリスキリングをしていけば、生き残る道はある。
下手なプライドを捨てて、柔軟にどんどんとスキルをリスキルすることが、賢い生き方と言えるだろう。
著者の「ホワイトカラーはアドバンスト現場人材を目指すべき」という提言は、すごく励みになる言葉だ。
現場での課題解決や、改善提案ができる人材がまだまだ不足しているために、これからは必ず重宝されるという。
高度な専門知識も持ちつつ、現場の状況を理解し、実践的な解決策を見出し、実行する。
頭で考えて、改善して、実行せよ、ということだ。
デスクに座ってふんぞり返って何もできない人材は、もちろん生き残れない。
そんな人もかつては多かったが、今の50〜60歳代でそんな余裕のある人はほとんどいない。
ほとんどの人が真面目にコツコツと頑張っている。
過去の成功体験にとらわれず、常に柔軟な姿勢でいれば大丈夫だ。
時代の変化に合わせ、常に新しい知識やスキルを習得していけばいい。
生き残れるのは、常に変化に対応できる人。
当たり前だが、それを実践していくだけだ。
(2025/1/22水)