書籍【NEXUS~情報の人類史(上)人間のネットワーク】読了
我々人類にとって、情報とは何なのか。
確かに改めて考えてみると、様々な解釈があって面白い。
情報には実態が無いし、それを何かと説明することは意外と難しい。
上巻はまさに情報の歴史について。
下巻は現在から未来に向けた、AIについての内容となっている。
出だしから予想もしない方向に話を展開させるのは、著者の得意なパターンだ。
「情報の正体は、真実を伝えるものではない」と、堂々と喝破したのには、舌を巻いた。
見たまま、ありのままが真実であり、それが情報として単純に伝わるものだと思っていたが、人類にとっての情報はそうではない。
一歩進んで本来の役割は、「大勢の人を繋ぎ、秩序を創り出すこと」にあると説く。
人類が文明を築けたのは、何千何万人という見知らぬ人同士が「共通の物語」を信じて協力できたからに他ならない。
これは、まさに「サピエンス全史」で出てきた「認知革命」の話でもある。
「物語」は、必ずしも客観的な真実である必要はない。
宗教も国家もお金すらも、実は人々が勝手に妄想しているだけで、実態として存在しているものとは言えない。
たとえそれが虚構であっても、人々を強く結びつけるものになるならば、それだけでその情報は大きな価値を持ってしまう。
そう言ってしまえば、「会社」も虚構のようなものだ。
元々お互いに知り合いでもない他人同士が、会社の中である目的に向かって協力して仕事をする。
その目的が、最近では「ミッション・ビジョン」だったりする訳だが、これこそまさに「物語=ナラティブ」と言われ、いわんや「情報」そのものである。
人は物語という情報を通じて、他人同士繋がることが出来てしまう。
本書のタイトルである「NEXUS」は、まさに「繋がる」という意味なのだが、人類はこの能力のお陰で進化してきたことは間違いない。
他の動物には持ちえない、人間だからこその才能と言える。
口の上手い人(喋り上手)というのは世の中にいるものだが、概してこの「物語」を駆使していると言える。
政治家だって、宗教家だって、落語家だって、会社の社長だって。
物語として語ることで、人々の共感を呼び、さらに信頼を得ることで、とんでもない力を発揮してしまう。
人間が集団になった時のパワーは凄まじい。
巨大建造物を作るのも、空を飛ぶのも、宇宙に行くのも、すべては情報という名の妄想だけで、人を繋げ、大きなことを成し遂げて実現してしまうのだ。
そんな情報の形態も、歴史を重ねることで、進化をしていく。
すべてが口伝だった時代から、文字として記録が出来るようになると、人々の行動を大きく変えてしまった。
情報の記録とは、データ化の第一歩である。
データ化されたことで、「管理」という概念が生まれたという。
この発想はめちゃくちゃ面白い。
確かに口頭で指示をしても、守らない人もいるだろう。
良く聞こえなくて、違う解釈をして、行動する人もいただろう。
それが、情報が文書化されたことで、あらゆることを「管理」できるようになった訳だ。
分かりやすいのはお金の管理、借金の管理だ。
そしてそれは、「人の管理」へと発展していく。
インターネットに繋がっているかどうかは別として、人々は文字が記録されることで、成績表として比べられるのである。
テストや試験は、文字の記録があるからこそ成立するものだ。
そんな当たり前のことに、文字を自由に扱える我々現代人はなかなか気づけない。
会社だって、社員の評価を行って、給与に差をつけている。
我々の不便を解消するために発明した文字によって、自ら人間を管理し、苦しめる道具になっているのは、皮肉としか言いようがない。
今の時代に、会社は「人的資本経営が大事」と言っているが、人の評価を情報管理している以上、ギスギスした部分は解消されない気がする。
これもまた、人類が陥っている大きな矛盾点であると思った。
全てがネットワークにつながる時代に、あらゆる情報はログとしてデータ化され、保管されていく。
下巻ではそれらデータがAIによって超高速に解析され、結果を出される訳であるが、本当に人類はそれで幸せになっているのか。
この流れは不可逆であるのは間違いない。
しかし、今一度立ち止まって考えてみることが大事なのだと思う。
情報を操ることで発展した人類は、今後どうなっていくのか。
キーテクノロジーは「AI」ということで、下巻に続くのである。
(2025/8/15金)