こんにちは!寺西巧です。
早朝に機材を車に積み込み立山連峰を遠くに望む道を走っていたとき、空一面に不思議な雲が広がっていることに気がつきました。羊の毛のように小さくモコモコとした塊がどこまでも並ぶ羊巻雲です。普段は何気なく通り過ぎてしまう秋の空ですが、ふと車を止めて見上げてみると、規則正しいようでいて微妙に形を変える雲の群れに引き込まれました。今回私が選んだ新しいモチーフは、この高い空に浮かぶ羊巻雲です。秋晴れの澄んだ空に現れるこの雲は、はるか上空の風や温度の変化によって生まれる繊細な空気の模様です。一つひとつの小さな塊が太陽の光を受けて柔らかい陰影を作り、時間とともにゆっくりと姿を変えていきます。立山から吹き降ろす涼やかな風に乗って流れる様子は、まるで空という巨大なキャンバスに描かれた生きている芸術のようです。高所にある氷の粒でできているため、地上に届く光を優しく和らげ、街全体を穏やかな空気感で包み込んでくれます。この羊巻雲という現象を私たちの日常や表現の視点に重ね合わせてみると、とても興味深い気づきが得られます。遠くから見るとひとまとまりの大きな雲に見えますが、近づいて観察するように意識を向けると、千差万別な形をした個性の集まりであることが分かります。私たちの生活や日常で触れる出来事も、まさにこの雲と同じなのではないでしょうか。一括りに捉えてしまいがちな日々の時間や周りの風景も、視点を少し変えて細部に注目してみることで、それぞれに異なる魅力や表情が隠されていることに気づかされます。当たり前のように存在する空間や景色の中に散りばめられた小さなグラデーションを見つけ出すことこそが、暮らしを豊かにする鍵なのかもしれません。たまには足を止めて、高く澄み渡る空を見上げてみてください。立山の稜線の向こうへと流れていく羊巻雲は、移ろい行く季節の深まりとともに、私たちの心に静かなゆとりと新しい発見をもたらしてくれます。見慣れた景色の変化に心を澄ませることで、今日という一日がより味わい深く鮮やかなものへと変わっていくはずです。