数年前の私に「なぜ日本に来たの?」と聞かれたら、「日本が好きだから」と答えていたと思います。
日本への興味は、映画やドラマ、そして旅行から始まりました。作品の中で描かれる街並みや人との距離感、何気ない日常の風景に惹かれ、「いつかここで暮らしてみたい」と思うようになりました。
その思いから、中国での仕事を離れ、京都でMBAを学ぶことを決めました。
でも、実際に日本で生活を始めてから気づいたのは、「好き」と「理解する」はまったく違うということです。
アルバイトを始めた頃は、仕事の進め方も日本語も分からないことばかりでした。そんな私に、職場の皆さんは一つひとつ丁寧に教えてくれました。分からなければ言い方を変えて説明し、理解できたかを確認してくれる。その姿勢に、「教える側」と「教わる側」という上下関係ではなく、一緒に働く仲間として接してくれていることを感じました。
大学院では、クラスメイトと企業を訪問するフィールドワークにも参加しました。そこで印象的だったのは、日本企業が長い時間をかけて築いてきたブランドと消費者との信頼関係です。以前マーケティングの仕事をしていた私は、「人に知ってもらうこと」と「信頼され続けること」は全く違う価値だということを改めて実感しました。
また、大学の外でも、外国人向けの交流イベントや地域の活動に積極的に参加してきました。日本人だけでなく、さまざまな国から来た人たちと話す中で、日本という社会を外から眺めるのではなく、その文化や市場、価値観を理解しようとすることの大切さを学びました。
私は、こうした経験を重ねる中で、少しずつ考え方が変わっていきました。
以前は、自分の考えを伝えることばかり意識していましたが、今はまず相手を理解することを大切にしています。
相手はなぜそう考えるのか。その背景にはどんな文化や価値観があるのか。
そんなことを考えながら人と向き合う時間が、私はとても好きになりました。
そして、その延長線上で、日本市場にも強く興味を持つようになりました。
なぜ同じ商品でも国によって伝え方が変わるのか。なぜ文化が違うと、消費者の選択も変わるのか。
そうした問いは、今では私の研究や仕事の軸になっています。
私は、単にマーケティングを行う人ではなく、市場や消費者を深く理解し、そのインサイトを企業の意思決定やブランドのアクションにつなげられる人になりたいと考えています。
私にとって、日本は人生の一時的なステージではありません。
これからもここで働き、暮らし、日本語で信頼関係を築きながら、日本のビジネスや社会への理解を深めていきたいと思っています。
そして、中国での実務経験、日本での学び、そして異なる文化の中で生活してきた経験を生かし、日本と海外、企業と消費者、異なる文化や市場をつなぐ存在になりたいと考えています。
異文化コミュニケーションとは、単に複数の言語を話せることではないと思っています。
大切なのは、「相手がなぜそう考えるのか」を理解し、お互いが納得できる伝え方を見つけること。
これからも、その力を磨き続けていきたいと思っています。