砂漠を走るために、僕は基地を作った🚗
出発前にやることは山ほどあった。
相棒は2013年製の三菱アウトランダー。純正のままでは砂漠は走れない。まずATタイヤに換装してリフトアップ。日本製は高かったので韓国製のハンコックを選んだ。日本だと馴染みがないが、オーストラリアではメジャーなブランドらしい。少し硬めだが丈夫で、ボスも太鼓判を押してくれた。長距離移動でのガス欠を防ぐために予備のガソリン缶を2つ積んだ。
寝床も確保しなければならない。ルーフテントを載せることにしたが、純正にはルーフレールがない。廃車からルーフレールだけ取り外してボルトで固定した。調べていくうちに知ったのだが、レールがないと重さが一点に集中して動的荷重が変わるらしい。だからYakimaのヘビーデューティを使い、荷重も計算した上でKingsのハードシェルテントを載せた。オーニングも付けた。
車内にも棚を自作した。荷物、皿、鍋、工具類を収納して、その上にマットを敷いて寝られるようにした。マットはニンビンで購入した。オーストラリア有数のヒッピーの聖地で、街を歩けば独特すぎる空気が漂っている。カオスな場所だったが、不思議と楽しかった。電装も自分でいじった。純正の配線が通る隙間を探して、メインバッテリーとサブバッテリーを繋ぐ配線を通して蓄電システムを構築。1500wのインバーターを取り付けてケトルや家電も使えるようにした。30Lのスライド式冷蔵庫はアンダーソンケーブルで電源に直差し。砂漠の真ん中でも冷たいものが飲めた。
スターリンクはマーケットプレイスで格安で見つけた一番小さいサイズを500ドルで手に入れた。砂漠の真ん中でアンテナを刺せば、宇宙から電波が降ってくる。
通信、電力、寝床。自分だけの基地が完成した。
知識はYouTubeとGoogle。あとは小学校の理科をちゃんと勉強していたおかげだと思っている。
生活はジリ貧旅と呼んでいた。
お風呂は無料シャワーか1ドルのポンコツシャワー。ご飯は基本自炊、インスタント麺を大量買いして走り続けた。ガソリンはその地区で一番安いスタンドを探して入れた。ただ内陸では選べない。ウルル周辺では1リットル260円で仰天した。
1日700kmを普通に走った。内陸にいると景色が変わらない。ひたすら赤土が続く。それでも止まれなかった。
旅の途中、エロマンガに寄り道した。
本道はブリスベンからマウントアイザシティ。でもエロマンガはそこからさらに500km内陸に走った先にある。ブリスベンから内陸1300km、ガソリンスタンドも皆無の赤土の道をガス缶片手に慎重に走った。旅で初めて赤土を走った瞬間だった。
辿り着いた街には、何もなかった。オーストラリアで人が住む最も内陸の街で、オーストラリア初の恐竜が発見された場所らしい。でも僕が行きたかった理由は、小学生の頃に下ネタとして覚えた地名だ。エロマンガでエロ漫画を読んだ人は日本中探しても多分僕だけだと思う。壮大な夢物語でした。
オーバーヒートは何十回となく経験した。そのたびに冷や汗をかきながら、原因を探して対処した。タイヤもブレーキも自分で交換できるようになった。目利きだけは誰にも負けない自信がついた。
洗礼はそれだけじゃない。農道を100キロで走っていたら、横からカンガルーが突っ込んできた。バンパーが吹っ飛んだ。でも夜はカンガルー様の世界だから、悪いのは僕らの方だ。僕はその写真を「闇のデュエルリンク」と呼んでいる。
ブリスベンからダーウィンまで約5000km。内陸を走り続けていると、遠目に光り輝く海が見えた瞬間、涙が出た。オーストラリアにいるのに海を見ないことがあるなんて、思ってもみなかった。
でも同時に気づいた。オーストラリアの本当の魅力は、海より大地にある。世界最長5kmに連なる鉱山列車、どこまでも続く塩山、野生のディンゴ。日本では絶対に見られない景色が、内陸にこそあった。
そしてブルームに辿り着いた。
インド洋は、本当に波一つ立たなかった。夕陽がゆっくりと沈んでいく。あの日、画質の悪いパソコンの画面で見たあの景色が、目の前に広がっていた。涙腺が崩壊した。
ウルルはもっとすごかった。夕暮れに赤く輝く大地を前に、ずっと見ていられた。アボリジナルの聖地と呼ばれているが、その日から僕の聖地にもなった。
夢が、叶った。
東へ、西へ、南へ、北へ。走行距離2.8万km、1周半。オーストラリアという大陸を、全方位から自分の目で確かめた。伊能忠敬ってすげえな、と心から思った。
オーストラリア東西南北制覇できて感無量です😢
この旅で気づいたことがある。通信が途切れれば繋ぐ。電力が落ちれば復旧する。ルートが塞がれれば別の道を作る。「止まったら動かす、足りなければ作る」——砂漠でやり続けたことは、ITインフラの設計思想とまったく同じだった。
3年間、僕にとってはただの旅じゃなかった。人生の旅だった。
帰国後は好きなことを仕事にしたい、その一心で、インフラエンジニアへの道を歩き始め現在に至ります。少しずつ更新していこうかと思ってます🖐️