研究プロジェクトのお話 その5
Photo by Colin Lloyd on Unsplash
第5回
タイムアップの鐘が鳴る大舞台。
アドリブで繋いだ5分間と、プロたちから贈られた「MVP」
こんにちは、加納です。他社協働の研究プロジェクト編も、いよいよ今回で最終回です。
実はこの1年間、私は研究プロジェクトだけでなく、社内の福利厚生を企画する「社員クラブ」の運営メンバーにも選ばれており、本業を含めて文字通りキャパシティの限界に挑む日々を送っていました。
100〜200人が集まるクリスマス会では、なぜか直前で巻き込まれる形で受付からくじ引き大会の司会までを任され、大勢の前で場を盛り上げるという、過酷ながらも「人前に立つ度胸」を試される経験もしていました。
しかし、本当の「大舞台での試練」は、2月の最終発表会で待ち受けていたのです。
■ 150人の視線と、鳴り響いたタイムアップの鐘
発表会の会場は、名古屋・中日ホールの大きなステージ。客席には150人以上の観客や審査員が詰めかけていました。私たちのチームが用意したのは、20ページの論文と、40分間のプレゼン発表。
多くのチームが代表者数名だけを登壇させる中、私たちのチームは「全員で挑む」という強いこだわりを持って、8人全員がステージに立ちました。その中で私は、研究の結びとなる「実験結果を数値で証明する」という、プレゼン全体の最も重要なパートを担当していました。
しかし、本番には魔物が棲んでいました。
私の1つ前のフェーズを担当していたのは、大学時代からAIを専攻し、チームのツール作成をほぼ1人で背負い込んでくれた「最強のエンジニア」である、もう一人のサブリーダー。自分が命を懸けて作ったシステムについて、彼はステージ上で熱く、本当に熱く語り続けました。
その熱量が最高潮に達したとき、非情な音が会場に響き渡ります。
コン、コン、コン――。 40分の制限時間終了を告げる、タイムアップの鐘の音でした。
■ 台本を捨てたアドリブ。5分間の限界リカバー
彼のパートの途中で時間はゼロになり、私の担当する「最も重要な結果発表」の時間は、実質1秒も残されていませんでした。一瞬、頭が真っ白になりそうな状況。しかし、ここで私のスイッチが入りました。
「ここで終わらせるわけにはいかない」
マイクを引き継いだ私は、用意していた台本をすべて頭の中で捨てました。スライドのページをハイスピードでめくりながら、伝えるべき要点と数値だけを頭の中で瞬時に再構成し、超早口、かつ感情を込めてアドリブで話し始めたのです。
クリスマス会の司会で培った(?)大舞台の度胸が、ここで生きました。自分でも信じられないほどの滑舌で、猛烈な早口でありながら一回も噛むことなく、研究の核心を弾丸のようにアピールし続けました。
時間を使い切った当のサブリーダーには舞台袖で爆笑され(心の中で『マジでこの野郎!』と思いましたが笑)、リーダーには『本当にありがとう…!』とマジで感謝されながら、なんとか「5分オーバー」という最小限のロスタイムで、プレゼンを最後まで見事にまとめ上げることができたのです。
■ プロフェッショナルたちから贈られた、生涯の宝物
チームとしての総合順位は目標に届きませんでしたが、発表会が終わった後の懇親会で、心の底から震えるようなサプライズが待っていました。
1年間のプロジェクトを振り返り、メンバー同士が匿名で投票する「MVP」の発表。 そこで私は、あの先進企業のDXを率いるリーダーと同票で、チームのMVPに選ばれたのです。
技術のプロである彼らが、私に票を投じてくれた理由。それは、これまでのプロンプト標準化やコミュニケーションによるチーム内の橋渡しといった「裏方の貢献」だけでなく、あの絶体絶命のステージでチームを救ったような「本番の強さ」と「責任感」を見てくれていたからかもしれません。
■ さあ、次のステージへ
食わず嫌いだった生成AIの世界に飛び込み、駆け抜けた超多忙な1年間。 私が手に入れたのは、AIの知識だけではありません。どんな逆境でも、大舞台でも、技術と人間、人と人とを繋ぎ止めて成果を出すという、自分自身の「架け橋としての強さ」への確信でした。
この1年で培った探求心と、あの5分間を戦い抜いた圧倒的な度胸を胸に、私は次の新しいキャリアへと挑戦していきます!
(研究プロジェクト編・完)