2018年、私はかなり苦しい時期を過ごしていた。
でも、写真だけを見ても、たぶんそうは見えない。
草原で出会ったヤク
その夏、友人と二人、自分の車で蘭州(ランジョウ)を出発した。
ほとんど私が運転した。
友人に代わってもらったのは、ほんの短い時間だけだった。
道中で見かけた寺院の屋根
どこをどう走ったのか。
今はもう、正確には思い出せない。
ゴロク(果洛)、玉樹(ぎょくじゅ)、青海湖、チャカ塩湖。
そのあたりを通ったことだけは覚えている。
旅の期間は、たしか1〜2週間ほど。
走行距離は、2,000kmを超えていたと思う。
名前を思い出せない場所も多い。
今回、撮影日を手がかりに、少しずつ調べ直した。
道路に伸びる黄色いセンターライン
高山病にはならなかった。
でも、道には迷った。
急に天気が崩れたこともあった。
名前も覚えていない場所で、思いがけない催しに出くわした。
チベット族の運動会のようだった。
馬を走らせる人。
弓を射る人。
予定にはなかったのに、いくつもの観光地よりも、今も鮮明に覚えている。
旅先の朝食とバター茶
その旅で、私は370枚以上の写真を撮った。
雪山は、できるだけ大きく。
空は、できるだけ青く。
ひと目で「きれい」と思える写真を残したかった。
自分の車と、どこまでも続く道
8年後、その写真をもう一度見返した。
今の自分の目で、残したい写真を選び直した。
もちろん、青海省が美しくなかったわけではない。
変わったのは、写真を見る私のほうだ。
経文が刻まれた石が積み上がる、玉樹の嘉那マニ石経城
今は、写真の中に「そのとき」が残っているかを気にする。
自分は、どんな状況にいたのか。
そこにいた人は、何を感じていたのか。
目立たなくても、もう一度話したくなる細部があるか。
たとえば、旅先の朝食。
どこへ続くのかわからない道。
チャカ塩湖で手に取った塩の結晶。
手に取った塩の結晶
以前の私は、壮大な風景を写真に残したかった。
今、私の目に留まるのは、むしろ写真の外側にあるものだ。
当時は書き残さなかった出来事。
言葉にしなかった気持ち。
8年後の今は、そうしたもののほうがよく見える。