目次
1. アカウントを作った。その次は?
チェーンが新しい店を出すたびに、Instagramアカウントも一つ増やすべきだろうか。
登録して、アイコンを設定し、ラーメンを一杯投稿する。
数分もあれば、「SNS上の新店舗」は開店できる。
問題は1か月後だ。
メニューもアクセス案内も開店告知も投稿した。
さて、今日は何を出す?
そこで、またラーメンを一杯。
あるラーメンチェーンの4つのアカウントを見た。
ブランド全体、地域別、店舗別とそろい、ぱっと見は整っている。
フォロワー数が最も多いアカウントには、ブランド全体と特定店舗の情報、別店舗の求人が混在する。
店舗別アカウントも、店長の日常や地域限定商品まで発信するものと、商品写真や営業案内が中心のものに分かれる。(2026年8月確認)
アカウントを増やしても、作り手と時間は自動では増えない。
アカウントを開いたあと、誰が投稿を出し続けるのか。
2. 素材は店舗に、編集力は本部に
新商品、客の質問、行列、売り切れ。素材は毎日、店舗で生まれる。
本部は現場にいない。店舗スタッフはいるが、企画、撮影、編集、分析までできるとは限らない。
「各店、毎週リールを2本お願いします」の一言で回るなら、SNS運用担当者は誰も苦労しない。
ランチタイムになれば、撮影依頼は仕込み表の下に埋もれる。
逆に、企画から編集まで本部が抱えれば、店舗が増えるほど「編集待ち」の列も伸びる。
内部体制は公開投稿だけでは分からない。
ただ、発信には、複数店舗のSNS運用で起こりやすいずれが見える。
素材は店舗にある。編集力は本部に集まりやすい。
4つのアカウントを支える共通の「厨房」は見えにくく、投稿も商品写真、営業案内、求人画像に偏りやすい。
3. 3段階の改善――まず整える、次に回す、最後に報いる
第1段階:すぐに直す――お客さまに「これ、どの店?」と考えさせない
アイコンとプロフィールのルールをそろえ、対象店舗を明記する。
メニュー、アクセス、営業時間は固定投稿へ。
ブランド全体の公式か、特定店舗の公式かも曖昧にしない。
更新が難しい店は無理に頻度を追わず、正確さを優先する。
第2段階:仕組みを作る――店舗スタッフに、いきなり動画編集まで求めない
本部が年間テーマと「今月の撮影メニュー」を用意する。
店舗は10秒の動画や写真に、現場メモを3点添えるだけ。
企画、編集、投稿、振り返りは本部が担う。
完成品を求めず、素材集めを営業の合間にもできる作業に分ける。
制作までできる店は自走型、素材を出せる店は共創型、難しい店は共同投稿と四半期ごとの集中撮影で最低限の発信を保つ。
全店に同じ量を求めない。
図1:店舗の素材を本部で編集し、反応を現場へ戻すコンテンツ供給フロー(筆者作成)
第3段階:インセンティブを設計する――「一発バズ」だけを評価しない
スタッフにインセンティブを設けるなら、再生数だけで競わせない。
フォロワー約8,000人と約700人のアカウントを、単純な再生数で競わせれば、勝負は投稿前についている。
内容が過度に刺激的になる恐れもある。
たとえば、素材の有用性40%+同一アカウント内での相対成果30%+保存・シェア20%+事業への貢献度10%。
相対成果は、同じアカウント内の同種投稿の中央値を基準にする。
図2:再生数だけに依存しない、スタッフ共創の評価案(筆者作成)
一度の偶然のバズではなく、編集・再利用でき、次の企画にもつながる素材を継続して出した実績を評価したい。
4. 「1店舗1アカウント」は答えではない
店の数を数える前に、三つ確認したい。
店ごとに情報は違うか。現場から素材を出し続けられるか。本部に編集・配信する余力があるか。
三つとも曖昧なままなら、アカウントを増やしても運用力は増えない。
管理対象と「さて、今日は何を投稿する?」という悩みが一つ増えるだけだ。
アカウントは店舗別でも地域別でもよい。
素材と編集をつなぐ仕組みまで分断してはいけない。
全店で共有すべきなのは、店名だけを差し替えた告知画像ではない。
現場の素材が投稿になり、反応が店舗へ戻る仕組みだ。
アカウントを開店させるだけなら数分。
営業を続けるには、裏側の仕込みがいる。
Instagramも、飲食店と同じだ。
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