設備は動いているのに利益が出ない?「稼働率」と「採算」を一緒に見る考え方
こんにちは。
札幌で税理士をしております、河口倫範です。
前回は、新しい設備を導入した後に、
売上。
粗利益。
作業時間。
経費。
現金。
といった数字を確認し、設備投資の成果を振り返ることが大切だというお話をしました。
その中で少し触れたのが、
「稼働率」
という考え方です。
高額な設備を導入すると、
「できるだけ動かした方がいい。」
と考えるのは自然なことです。
しかし、設備が毎日動いているからといって、必ずしも会社に十分な利益をもたらしているとは限りません。
今回は、
「設備が動いているか」だけではなく、「その設備が利益を生んでいるか」
という視点から考えてみたいと思います。
稼働率が高い=儲かっている、とは限らない
例えば、新しく導入した設備が毎日ほぼフル稼働していたとします。
現場を見ると、とても忙しそうです。
注文も入っている。
設備も止まっていない。
社員も作業している。
一見すると順調に見えます。
しかし、その仕事が、
価格競争によって単価が低い。
材料費が高い。
外注費が多い。
残業が増えている。
値引きが多い。
という状態だったらどうでしょうか。
設備は忙しく動いていても、会社に残る利益は少ないかもしれません。
つまり、
設備の稼働率と、その設備から生まれる利益は分けて考える必要があります。
「どのくらい動いたか」だけでなく「何を作ったか」
同じ設備でも、作る商品によって利益率が違うことがあります。
例えば、
A商品は利益率が高い。
B商品は平均的。
C商品は売上は大きいものの利益率が低い。
という場合です。
設備が一日中動いていても、その大半がC商品の製造に使われていれば、売上の割に利益が残らない可能性があります。
そこで確認したいのが、
「設備を何時間使ったか」だけではなく、「その時間で何を作ったのか」
ということです。
設備の時間も、会社にとって限られた経営資源です。
その時間をどの仕事に使うかによって、利益は変わります。
1時間あたりの利益を考えてみる
設備の採算を考えるときには、
「1件あたりいくら利益が出るか。」
だけでなく、
「1時間あたり、どのくらい利益を生んでいるか。」
という見方も役立ちます。
例えば、
Aという仕事は1件あたり5万円の粗利益が残るものの、設備を5時間使う。
Bという仕事は1件あたり3万円の粗利益ですが、設備の使用時間は1時間。
この場合、1件あたりの金額だけを見るとAの方が大きく見えます。
しかし、設備を使う時間まで考えると見え方が変わります。
もちろん、実際の採算は人件費や材料費、段取り時間なども含めて考える必要があります。
それでも、
「限られた設備時間を、どの仕事に使うと利益につながるのか。」
という視点は重要です。
段取り時間も設備の時間
製造業などでは、実際に製品を作っている時間だけが設備の使用時間ではありません。
材料を準備する。
設定を変更する。
清掃する。
商品を切り替える。
試運転する。
こうした段取りにも時間がかかります。
例えば小ロットの注文が多く、商品を切り替えるたびに長い準備時間が必要になる場合があります。
売上だけを見ると多くの注文を受けているように見えても、
段取り時間を含めると、実際には設備を効率よく使えていないかもしれません。
売上にならない時間がどのくらい発生しているか
を見ることも、設備の採算を考えるうえで大切です。
「止まっている時間」にも理由がある
反対に、設備があまり動いていない場合もあります。
そのとき、
「もっと営業して仕事を増やさなければ。」
と考える前に、なぜ設備が止まっているのかを確認してみます。
受注が足りないのか。
材料が届いていないのか。
設備を扱える社員がいないのか。
前の工程が遅れているのか。
後工程が詰まっているのか。
故障が多いのか。
原因によって、対策はまったく違います。
稼働率という数字を見る目的は、
高い・低いを評価することではなく、改善すべき場所を見つけること
だと思います。
稼働率を上げること自体を目的にしない
設備が空いていると、
「せっかく買ったのだから、もっと仕事を入れよう。」
と思うことがあります。
しかし、その結果、
利益率の低い仕事。
無理な納期の仕事。
値引きしなければ受注できない仕事。
まで取ってしまうと、設備は忙しくなっても会社の利益は改善しないかもしれません。
大切なのは、
設備を100%動かすことではなく、会社に必要な利益を生み出すこと
です。
稼働率はあくまでも経営を見るための一つの指標です。
設備を止めた方がよい時間もある
少し意外に感じるかもしれませんが、設備は常に動かしておけばよいわけではありません。
例えば、
定期的なメンテナンス。
社員教育。
作業改善。
清掃。
品質確認。
こうした時間も必要です。
目先の売上を優先して設備を動かし続けた結果、大きな故障が発生すれば、長期間生産できなくなる可能性があります。
短期的な稼働率だけではなく、
長期間安定して利益を生み続けられる状態をつくる
ことが大切です。
設備だけが速くなっても利益は増えないことがある
例えば新しい設備を導入し、製造能力が以前の2倍になったとします。
ところが、
検品。
梱包。
出荷。
営業。
などの能力が以前のままだったらどうでしょうか。
製造した商品が次の工程で止まってしまいます。
つまり、一つの設備だけを改善しても、会社全体の処理能力が上がるとは限りません。
設備投資後は、
「会社のどこが一番詰まっているのか。」
を見ることが重要です。
設備がボトルネックだった会社でも、新しい設備を入れれば別の工程が新しいボトルネックになることがあります。
人の稼働率も考えすぎない
これは設備だけでなく、人についても同じです。
社員が常に100%忙しく働いている会社が、必ずしも効率的とは限りません。
急な注文に対応できない。
改善活動をする時間がない。
教育する時間がない。
休暇を取りにくい。
こうした状態になる可能性があります。
ある程度の余裕があるからこそ、
新しい仕事。
トラブル。
改善。
教育。
に対応できます。
「暇な時間=すべて無駄」ではない
という視点も、経営では必要だと思います。
売上・粗利益・時間をセットで見る
設備の採算を考えるときには、
売上だけ。
利益率だけ。
稼働時間だけ。
を見るのではなく、できるだけ一緒に確認します。
例えば、
この商品はいくら売れたのか。
粗利益はいくら残ったのか。
設備を何時間使ったのか。
社員は何時間作業したのか。
こうした数字を並べてみます。
すると、
「売上は大きいけれど、設備時間を使いすぎている。」
「売上は小さいけれど、短時間で利益を生んでいる。」
といった違いが見えてくることがあります。
受注判断にも数字を使う
設備の能力に余裕があるときは、多少利益率が低い仕事でも受ける意味がある場合があります。
一方、設備がほぼいっぱいの状態では、新しい仕事を受けるために既存の仕事を断らなければならないこともあります。
その場合には、
「どの仕事を優先するか。」
という判断が必要になります。
そこで、
売上金額。
粗利益。
必要な設備時間。
継続性。
取引先との関係。
などを確認します。
単純に、
「金額の大きい注文から受ける。」
だけではなく、
会社全体にどのくらい利益をもたらす仕事なのか
を考えることが大切です。
「忙しいのに儲からない」を数字で見つける
経営者の方から、
「仕事はたくさんあるのですが、なぜか利益が残りません。」
というお話を聞くことがあります。
こうした場合には、
仕事量そのものではなく、
仕事一件あたり、あるいは一時間あたりの採算
を確認してみると原因が見えてくることがあります。
設備も社員もフル稼働している。
それでも利益が残らない。
そうであれば、単純に仕事を増やすだけでは解決しないかもしれません。
価格。
商品構成。
作業時間。
材料費。
外注費。
段取り。
こうした部分を見直す必要があります。
「もっと動かす」前に「今の使い方」を確認する
設備の稼働率が低いと、
「もっと仕事を取ろう。」
と考えます。
設備の稼働率が高いと、
「もう一台買おう。」
と考えることがあります。
しかし、その前に一度、
今ある設備が、利益を生む仕事に使われているか
を確認してみてください。
利益率の低い仕事が設備を占有していないか。
段取り時間が長すぎないか。
不要な停止時間がないか。
別の商品へ時間を振り分けられないか。
こうした改善によって、新しい設備を購入しなくても生産能力や利益を増やせる場合があります。
設備投資の前に「今ある設備」を見る
新しい設備を購入することは、大きな経営判断です。
だからこそ、
「今の設備では足りない。」
と感じたときには、
現在の稼働状況を一度確認してみることが大切です。
本当に能力が不足しているのか。
それとも段取りや人員配置に改善余地があるのか。
利益率の低い仕事が設備を使いすぎているのか。
ここを整理してから投資を判断します。
場合によっては、
設備を増やすより、現在の設備の使い方を改善する方が利益につながる
こともあります。
稼働率は「利益につながっているか」まで見る
設備が毎日動いている。
社員も忙しい。
注文も多い。
それだけを見ると、会社は順調に見えます。
しかし経営で大切なのは、その忙しさが最終的に、
利益。
現金。
会社の成長。
につながっているかということです。
だからこそ、
「設備は何%動いているか。」
で終わるのではなく、
「その時間で、どのくらいの利益を生んでいるか。」
まで考えてみる。
数字を見る目的は、設備や社員をもっと忙しくすることではありません。
限られた時間や設備を、会社にとってより価値のある仕事へ使うためです。
税理士として売上や利益の結果を見るだけではなく、
「どの仕事が利益を生んでいるのか。」
「会社の設備や人の時間が、どこに使われているのか。」
まで経営者の方と一緒に整理しながら、忙しさではなく利益が残る経営を考えていきたいと思っています。