新しい設備を入れたのに利益が増えない?投資後に確認したい5つの数字
こんにちは。
札幌で税理士をしております、河口倫範です。
前回は、設備投資をするときの資金調達について、
現金で購入するのか。
借入を利用するのか。
リースを利用するのか。
という視点からお話ししました。
設備投資について考えるとき、多くの場合は「購入するまで」に意識が向きます。
しかし、本当に大切なのはその後です。
「その設備を導入したことで、会社は本当に良くなったのか。」
ここまで確認して、初めて設備投資の成果が見えてきます。
今回は、新しい設備を導入した後に経営者が確認しておきたい数字について考えてみたいと思います。
設備を導入しただけでは利益は増えない
新しい機械を導入した。
新しいシステムを導入した。
新しい車両を購入した。
それだけで利益が増えるわけではありません。
設備はあくまでも道具です。
その設備によって、
生産量が増えた。
作業時間が短くなった。
受注できる仕事が増えた。
外注費が減った。
ミスや不良が減った。
といった変化が起き、その結果として会社の利益につながっているかを見る必要があります。
設備投資では、
「導入したかどうか」ではなく、「導入後に何が変わったか」
を見ることが重要です。
① 売上はいくら増えたのか
まず分かりやすいのが売上です。
例えば、新しい設備を導入する前に、
「この設備があれば、これまで断っていた仕事を受けられる。」
「生産能力が上がるので売上を増やせる。」
という計画を立てていたとします。
では実際に、
設備導入前と比べて売上はいくら増えたでしょうか。
ここで注意したいのは、会社全体の売上だけを見ないことです。
できれば、
その設備に関連する売上がどのくらい増えたのか
を確認します。
会社全体の売上が増えていても、設備とは関係のない事業が伸びているだけかもしれないからです。
売上が増えていなくても失敗とは限らない
ただし、設備導入後に売上が増えていないからといって、
「この投資は失敗だった。」
とすぐに判断する必要はありません。
設備投資の目的は、売上を増やすことだけではないからです。
例えば、
作業時間を減らす。
人手不足を補う。
品質を安定させる。
事故や故障のリスクを減らす。
社員の負担を軽減する。
といった目的もあります。
そのため、設備投資をするときには、あらかじめ、
「この設備で何を改善したいのか。」
を明確にしておくことが大切です。
② 粗利益はいくら増えたのか
売上と一緒に確認したいのが粗利益です。
例えば、新しい設備によって年間1,000万円売上が増えたとします。
一見すると大きな成果です。
しかし、その売上をつくるために、
材料費。
仕入。
外注費。
などが大きく増えていたら、会社に残る利益は思ったほど増えていないかもしれません。
そこで、
「売上がいくら増えたか。」
だけではなく、
「粗利益がいくら増えたか。」
を確認します。
設備投資の効果を見るときには、売上よりもこちらの方が重要になる場合があります。
③ 人件費や作業時間はどう変わったのか
設備投資の目的として多いのが、省力化や生産性向上です。
例えば以前は一つの作業に3時間かかっていたものが、新しい設備によって1時間になった。
これは大きな改善です。
しかし、
「2時間短縮できました。」
だけで終わらせず、
その2時間を何に使えるようになったのかまで考えてみます。
別の仕事を受注できるようになった。
残業が減った。
社員が営業や顧客対応に時間を使えるようになった。
社長が現場から離れられるようになった。
こうした変化があれば、設備投資の効果は数字以上に大きいかもしれません。
時間が生まれたこと自体ではなく、その時間をどう使ったか。
ここまで見ることが大切です。
④ 外注費・修理費・その他の経費は減ったのか
新しい設備によって経費が減る場合もあります。
例えば、これまで外注していた作業を社内でできるようになった。
古い機械の修理費が減った。
燃料費や電気代が下がった。
廃棄や材料ロスが減った。
こうした効果です。
一つひとつは小さくても、年間で計算すると大きな金額になることがあります。
設備投資の成果を見るときには、
増えた売上だけでなく、減った費用も確認する
ことがポイントです。
⑤ 現金は予定どおり残っているか
そして、もう一つ非常に重要なのが会社の現金です。
設備投資後、
利益は増えている。
売上も増えている。
それなのに預金が減っている。
ということがあります。
例えば、
設備投資の借入返済が始まった。
新しい仕事のために在庫が増えた。
売掛金が増えた。
人員を追加した。
といったことが影響しているかもしれません。
そのため、
設備投資の成果は損益計算書だけでなく、通帳残高や資金繰りも含めて確認する
必要があります。
計画と実績を並べてみる
設備投資をする前に、
年間売上が500万円増える予定。
外注費が年間200万円減る予定。
作業時間が月50時間減る予定。
という計画を立てていたとします。
半年後や一年後に、その計画と実績を比較してみます。
売上は予定どおりだったか。
経費削減はできたか。
作業時間は本当に減ったか。
予想外に増えた費用はなかったか。
こうして比較すると、
「思ったより効果が出ている部分」と「計画どおりではない部分」
が見えてきます。
予定どおりでなければ「なぜ?」を考える
例えば、
「設備を入れたのに売上が増えていない。」
という結果になったとします。
その場合、設備そのものが悪いとは限りません。
営業が追いついていない。
設備を使える社員が少ない。
想定していた市場の需要が少ない。
稼働率が低い。
価格設定が適切ではない。
といった原因があるかもしれません。
大切なのは、
「失敗だった。」
で終わらせるのではなく、
設備の能力を十分に利益へ変えられていない理由を探すこと
です。
「稼働率」という視点も持ってみる
高額な設備ほど確認したいのが、どのくらい使われているかです。
例えば一日8時間稼働できる設備なのに、実際には2時間しか使っていない。
この場合、設備そのものに問題がなくても、投資効果は出にくくなります。
なぜ稼働していないのか。
受注が足りないのか。
人員が足りないのか。
前後の工程が追いついていないのか。
ここを確認します。
設備を導入したら、
「持っている」から「使い切れているか」へ視点を変える
ことも必要です。
新しい設備が別のボトルネックを生むこともある
例えば新しい設備によって製造スピードが2倍になったとします。
しかし、その後の検品作業が以前のままであれば、そこで仕事が止まってしまいます。
あるいは製造能力は増えたけれど、営業が十分な仕事を取れていない。
この場合も、設備の能力を十分に生かせません。
会社全体の流れを見ると、
一つの工程だけを改善しても、別の場所が新しい課題になる
ことがあります。
設備投資後は、その設備だけではなく業務全体を見ることが大切です。
半年後・一年後に振り返る
設備投資は、購入直後だけでは成果を判断できない場合があります。
そのため、
導入3か月後。
半年後。
一年後。
など、一定のタイミングで振り返る方法があります。
特に一年後には、
売上。
粗利益。
人件費。
外注費。
作業時間。
修理費。
資金繰り。
などを導入前と比較してみます。
「購入した設備が今どのくらい会社に貢献しているか。」
を一度確認してみるだけでも、次の経営判断につながります。
設備投資の経験を次の投資に生かす
最初の設備投資で、すべて計画どおりになるとは限りません。
しかし、
「売上予測を少し高く見積もりすぎた。」
「導入後の教育費を考えていなかった。」
「思った以上に外注費を削減できた。」
といった経験は、次の設備投資に生かすことができます。
設備投資をする。
結果を確認する。
予想との差を分析する。
次の投資判断に反映する。
この繰り返しによって、
会社に合った投資の基準
が少しずつできてきます。
設備投資は「購入日」ではなく「回収できた日」まで続く
設備を購入すると、大きな仕事を終えたような気持ちになることがあります。
しかし経営という視点では、そこがスタートです。
例えば1,000万円を投資したのであれば、
その1,000万円が、
増えた利益。
減った経費。
改善した生産性。
などによって、どのように会社へ戻ってきたのかを見る必要があります。
設備投資は、購入した時点で完了するのではなく、投資したお金を回収するところまでが一つの流れ
だと考えると分かりやすいと思います。
「買ってよかった」を数字でも確認する
新しい設備を導入すると、
「作業が楽になった。」
「以前より便利になった。」
という実感が得られることがあります。
もちろん、その実感も大切です。
そこに数字を加えてみます。
売上はいくら変わったか。
粗利益はいくら増えたか。
何時間削減できたか。
経費はいくら減ったか。
現金はいくら残ったか。
こうして確認することで、
「何となく良かった設備投資」から「経営にどのくらい貢献した設備投資」へ
変わります。
税理士として、設備を購入したときの会計処理だけを見るのではなく、
その設備が半年後、一年後に、
「会社の利益と現金をどのくらい増やしているのか。」
まで経営者の方と一緒に確認していきたいと思っています。
設備投資は大きなお金を使う経営判断だからこそ、
購入前に数字を見る。
購入後にも数字を見る。
そして、その結果を次の投資へ生かす。
この習慣が、会社のお金をより有効に使うことにつながっていくのではないでしょうか。