制作責任者に必要なのは、スキルだけでなく“危険を回避する直観力”
すべての制作には「ルールと責任」が付いて回る
制作責任者に求められるのは、制作スキルだけではありません。トラブルを未然に防ぐ力も同じくらい重要です。
私は約30年に渡って、さまざまな制作の現場に関わってきました。
デザインや文章、音楽など、さまざまなジャンルの制作を行う中で
折に触れて考えるのは、「“危険を回避する直観力”の重要性」ということです。
何かを作る仕事というのは、それが物であれ表現であれ、
「ルールと責任」が必ず付いて回ります。
法律やガイドラインなどのルールと、それを遵守する社会的責任です。
「知識」だけですべてのリスクを回避することは難しい
理想をいえば、少なくとも制作責任者は、自分の仕事に影響する法律やガイドラインのすべてを正確に把握し、論理的にチェックできる状態を整えるべきでしょう。
しかし、実際の現場では扱う領域が非常に広いため、そのすべてを網羅することは現実的ではありません。
私自身、化粧品の有資格者として、薬機法・景品表示法は把握していますが、それ以外の分野については、さほど明るくないというのが正直なところです。
ですが、受注するのは自分の専門外の案件の方が多く、そのジャンルは案件ごとに異なります。
そのため、知識だけで完全にリスクを排除することには、どうしても限界があります。知識だけに依存したチェックでは、見落としが発生する“隙”が残ってしまうのです。
知識不足を補う、“危険を回避する直観力”
そこで必要になるのが、タイトルにある“危険を回避する直観力”です。
たとえば、以下のような小さな兆候に気付けるかどうか、ということです。
- 公開前データに不要な情報が残っている
- 仕様理解に微妙なズレがある
「何となくおかしい」という、自分の中で即座に言語化できない、小さな違和感に気付く力、とも言い換えられるでしょう。
私の経験上、こうした直観力の源になっているのは、過去にどこかで「広く浅く学んだ知識」です。
自分のものとして体得するまでには至っていないものの、「聞いたことがある」という程度の情報でも、必要なときに出てくるかどうかで、明暗が分かれることがあるのです。
違和感に気付いた実例
具体的な実例に、こんなケースがありました。
① 販促ツールに掲載する、公式ロゴ使用のガイドライン違反
② 記事に挿入する、スクリーンショット内の個人情報
①の公式ロゴについては、クライアントの希望で掲載予定だったものです。しかし、デザイン案を作成しているうちにふと、「こういうものにはガイドラインがあるのでは?」と気になったのです。
そこで調べたところ、そのロゴを使用するには細かい規定があり、クライアントの希望通りのデザインではガイドラインに抵触することが判明したのでした。
もし、途中で気付かずに先方の希望通りのデザインを納品してしまったとしたら、先方も私も、社会的責任を問われる恐れがありました。
それから、②は本文補足のために、作業画面のスクリーンショットを記事に挿入したときの事例です。このときは何かが引っかかる感じがして、記事の公開に踏み切れずにいたのです。
その時点では、何が引っかかっているか自分でも分かりませんでした。しかし、改めて原稿を確認したところ、スクリーンショットの画像の中に、CドライブのURLが記載されていることに気付いたのでした。
これは、そのまま掲載してしまうと、PCのセキュリティ上のリスクが発生するものです。
いずれのケースも、気付かずにそのまま表に出してしまっていたらと考えると、背筋が凍る思いがします。
ですが、以前にどこかで「そういうリスクがある」という話を聞いていたのを、無意識のうちに思い出し、それが違和感に繋がっていたようです。
NESTa Worksは「スピード」と「リスク回避」の両立を目指しています
仕事は場合によって、完成度よりも回転数を優先した方がよいことがあります。私自身も基本的に、スピード重視の革新派タイプです。
ですが同時に、「絶対にしてはいけない失敗」というものがあることも事実です。ここで挙げたようなものも、その一つです。
リスクを事前に回避しても、表立った成果にはなりません。ですが、これができる人がいないと、その組織は長く事業を続けていくことはできません。
そのため、私が主宰しているNESTa Worksでは、「スピード」と「リスク回避」の両立を目指しています。
今後もスピードを前提に、小さな違和感を見逃さず、トラブルの起きにくい制作進行に貢献していきます。