「AIを使うと人は退化する?」44歳未経験エンジニアに起きた「学び習う」パラダイムシフト
「学習のためにAIにコードを書かせてよいの?」 「そんなことをしていたら、エンジニアとしての基礎力がつかないのでは?」
昨今、そういった声が聞かれ「AIに学習を委ねると、人間の思考力は衰える」という懸念が叫ばれています。確かに、AIにすべてを丸投げすれば、人は考えることを止めてしまうかもしれません。 しかし、44歳の実務未経験者として、崖っぷちの状況でAIと共に走り続けた私は、少し違う答えを持っています。今日は、私が考える「AIとのありかた」について、少し書き留めておきます。
1. 「守破離」を新時代の速度で駆け抜けるためのAI
学習の語源は、「学ぶ(まねぶ=真似る)」と「習う(ならう=繰り返す)」にあると言われます。 これまでの独学は、まず「手本(正解)」を探すのに膨大な時間がかかりました。しかし、今はAIが瞬時に「ベストプラクティス(模範解答)」を提示してくれます。
私はこの半年間、AIが出したコードをただコピペするのではなく、「まずAIの出したコードは本当に適切か?」「なぜこの書き方が正解なのか?」を問い続け、徹底的に「真似て」、そして自分の手で動くようになるまで「繰り返し」ました。
日本の茶道や武道、芸術で言う「守破離」。その最初の「守(型を身につける)」のフェーズにおいて、AIはよき師匠であり(※ただし、気を抜くと平気で誤情報を混ぜてきますが)、強力な加速装置です。基礎をおろそかにしたのではなく、AIのおかげで「基礎として必要な知識の再構築」を行い「基礎習得のサイクル」を回す速度を劇的に上げることができたと実感しています。
2. 自動車に乗ると、足腰は弱るのか?
「AIを使うと基礎力が落ちる」という議論は、「自動車の発明による影響」に似ていると感じます。
昔は自分の足で歩いて移動していましたが、今は自動車があります。確かに、毎日車に乗っていれば、足腰の筋力(基礎体力)は落ちるかもしれません。しかし、その代わりに私たちは「圧倒的な移動距離」と「時間」を手に入れました。徒歩では絶対に到達できない場所へ、短時間で行けるようになったのです。
そこで、「運転手が虚弱体質では困る」と自覚して適切な体力を維持するトレーニングを行う人と、そうでない人に分かれるのだと思います。「結局トレーニングの時間が必要なんじゃないか?」と思う方がいるかもしれませんが、「短縮できた移動時間より、トレーニングの時間の方が短ければよいのではないか」と私は捉えています。
エンジニアも同じではないでしょうか。AIという「自動車」に乗ることで、コーディングという「移動」にかかる時間を劇的に短縮し、より遠くのゴール(高度な実装や課題解決)を目指すことができます。
だからこそ、私は浮いた時間を使って、技術の原理原則を学ぶ「トレーニング」をします。「自動車(AI)を使いこなしつつ、必要な基礎体力(知識)は意図的に鍛える」。これこそが、私に必要な自己管理として学習に取り入れてきたスタンスです。
3. 開発における「スカラー」と「ベクトル」
AIという自動車を乗りこなす上で、私には明確な役割分担のイメージがあります。(私のプロフィールの「この先やってみたいこと」にも記載していますが、私はこれを「スカラー」と「ベクトル」に例えています。)
AIの役割 = 力のスカラー量(大きさ) 膨大な計算処理、コード生成、エラー解析。そこには凄まじい「パワー」があるナビ付自動車です。しかし、AIには意思、そして何より責任がありません。
人の役割 = 方向性のベクトル(向き) 対して人間は、日々の開発において「このコードは本当にユーザーのためになるか」「保守しやすく、テストで安全性が担保されているか」を判断します。つまり、AIのパワーをどこへ向けるか(品質管理やUXの追求)を決める運転手の役割です。
どれだけエンジンの出力そのものが大きくても、ハンドルを握る人間が行き先を定め、安全確認をしなければ、その車は暴走するか、どこにも辿り着けません。
4. 「手間を省く」ことと「手を抜く」ことの違い
私は実際の開発において、AIを使って手間を省き「楽」をします。しかし、それは決して「手を抜く」ことではありません。
• 手間を省く: 無駄な作業をAIに任せ、時間を生み出すこと。
• 手を抜く: 検証を放棄し、品質や責任から逃げること。
この二つの違いは「やるべきことと、省くべきことの判断(取捨選択)」ができているかどうかにあり、この判断こそが、AIに丸投げしてはいけない「人」の役割だと痛感しています。
そして何より大切なのは、「手間を省いて生まれた余分(時間とリソース)を、何に使うか」ではないでしょうか。
私はAIによって生み出された時間を、より堅牢な設計(アーキテクチャ)を考える時間や、新しい技術(Next.jsやInertia)の検証、そしてたった一人の家族である娘と向き合う時間に再投資してきました。
「浮いた時間の使い方にこそ、その人の人となりが出る」
そう信じているからこそ、私はこれからもAIという相棒と共に、手間は省きつつも、情熱や愛情という「人間だけの仕事」には手を抜かず、不要な力を抜くことでエンジニアとしての道をできる限り永く進んでいきたいです。
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【編集後記】 現在、44歳・実務未経験からのエンジニア転職に挑戦中です。AIに「狂気的学習速度」というパワーワードをお見舞いされ、すっかり気に入ってしまったので使い倒しています。AIを活用したモダンな開発スタイルで事業課題の解決に貢献できるよう、現在はフロントエンドスキル習得のため、Next.jsやInertiaを通じてTypeScriptの学習に励んでいます。