「AI時代だからこそ、"思考を止めない"ためのナレッジベース — TenHub」
学びの断片を、知識の資産へ変える
(上記のリンクカードをクリックすると、「TenHub」サイトにアクセスできます。
実際に Ten Bot から記事検索や要約を試せるようにしています。興味があれば、ぜひ触ってみてください。)
「TenHub」が生まれた背景
AGIからASI(Artificial Super Intelligence)へ — AIの進化に対する期待と不確実性が交差する今、人間のアウトプットは日々AIに置き換えられつつある。社会の歯車がAIによって指数的に加速する中だからこそ、一度立ち止まって自分に問いかける。「何が必要で、何をしたいのか」。
その問いの過程で気づいたのは、人間の本来の価値は「思考し続けること」にあるということ。情報を整理し、実証し、活用し、自分の考えを与え続ける場 — それがナレッジベースだった。今後AIを使う側にとどまらず、仕組みを理解し作る側へ。その一歩として生まれたのが TenHub。
プロジェクト概要
- Go マイクロサービス、Next.js、AI(RAG)を活用したナレッジベースです。
学びの断片を整理し、検索・再利用できる知識資産として蓄積することを目的としています。 - 個人開発、約3週間で初期リリース、継続的に機能追加中
開発期間とスコープ
初期リリースまでは約3週間で開発しました。
短期間で形にするため、まずは「記事を蓄積する」「検索する」「AIで再利用する」というコア体験に絞りました。
メイン機能
RAG / Agentモードにより、内部の記事を検索・要約できます。
また、外部検索機能も搭載しており、ナレッジベース内の情報と外部情報を組み合わせた調査・回答が可能です。
RAG + Deepseek + キーワード検索
AGENT + ローカル + キーワード検索 / Web検索
ナレッジグラフにより、記事内の関連データを可視化
ナレッジグラフは、記事同士の関係性を俯瞰するために実装しました。
軽量モデルを使用しているため、抽出精度には一部ばらつきがありますが、単体の記事検索では見つけにくい「概念同士のつながり」や「関連トピック」を可視化することで、自分がどの領域を深く学んでいて、どの領域がまだ薄いのかを確認できます。
MCPサーバとClaudeコードで連携し、内部ツールとして活用
記事の作成・取得・更新・削除といった基本的なCRUD操作に加え、記事検索ツールも利用できます。
全記事を取得
実際に記事を取得し、タイトルを変更してもらう
苦労した点
特に難しかったのは、検索結果をそのままLLMに渡しても、期待通りの回答品質にならない点でした。
検索スコアの分布はエンジンごとに異なるため、BM25、Vector、Hybrid、Graph で閾値を分け、ノイズを減らす調整を行いました。
設計でこだわったこと
TenHubでは、軽量モデルでもできるだけ安定した回答を返せるように、「LLMに渡す前のコンテキスト品質」を重視しました。
大きなモデルに大量の情報を投げるのではなく、検索段階でノイズを減らし、必要な情報だけを渡す設計にしています。
— 軽量モデルでも応答性能を上げるコンテキストチューニング
- 検索エンジン別の閾値チューニング
1. 5種の検索エンジン(BM25/Vector/Hybrid/Graph/TF-IDF)を自前実装
2. 各エンジンのスコア分布が異なるため、閾値を個別設定
3. Vector: 0.30(意味的類似度を広く拾う)
4. Hybrid: 0.50(キーワード+意味のバランス)
5. Graph: 15.0(強い関係性のみ通す)
閾値以下のノイズを除去してからLLMに渡すことで、軽量モデルの「迷い」を減らす
- コンテキストの質 > 量
1. 検索結果は上位5件に絞る(大量のコンテキストは小さなモデルを混乱させる)
2. 閾値を超えた記事がゼロの場合、LLMを呼ばずに定型応答を返す(トークンを無駄にしない)
3. Hybrid検索(BM25+Vector の重み付き結合)で、キーワードの正確性と意味的関連性を両立
- 差分更新による応答速度改善
1. ベクトル埋め込みをJSONに永続化し、新規・更新記事のみ再計算
2. ナレッジグラフも差分更新(記事のハッシュで変更検知)
3. サーバー再起動時のコールドスタートを最小化
- プロンプト設計の工夫
1. 言語制約の明示(日本語/英語のみ、他言語禁止)
2. 記事が見つかった場合は「必ずその内容を説明する」指示
3. 簡潔に回答する指示(生成トークンの効率化)
学んだこと
今回の開発を通して、RAGの品質はモデル性能だけでなく、検索設計やコンテキスト設計に大きく依存することを学びました。
ハルシネーション、つまり事実に基づかない内容をもっともらしく生成してしまう現象がある中で、いかに正しい情報を検索し、必要な文脈だけをLLMに渡すかが重要だと実感しました。
モデルそのものの性能に頼るだけでなく、検索結果の絞り込み、閾値調整、プロンプト設計など、利用する側の設計によって回答の安全性や信頼性を高められることを学びました。
今後の改善
AI 機能の拡張
- マルチエージェント対応: 検索・要約・提案など、役割を分担する複数エージェントの協調動作
- API Key 認証の追加: 外部の AI エージェントやツールから TenHub のナレッジを検索可能にする
- 関連記事の自動提案: 閲覧中の記事に関連するコンテンツをナレッジグラフから自動で表示
最後に
TenHubは、まだ完成されたプロダクトではありません。
ただ、自分の学びを蓄積し、AIと一緒に再利用できる形にすることで、「学ぶ → 考える → 作る → 発信する」のサイクルを少しずつ強くしていきたいと考えています。
AI時代だからこそ、ただ答えを受け取るのではなく、自分の思考を残し、育て、使い続ける。
TenHubは、そのための個人ナレッジベースです。