琥珀に閉じ込められた落雷と光る潜水艦
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こんにちは!柿原格です。
オフィスビルの窓から見下ろす街並みが、ふとした瞬間に巨大な電子回路の基板のように見えることがあります。無数の人々が行き交い、情報が光の速さで駆け抜けるその景色の中で、私は時折、一粒の古い琥珀を手に取って眺めているような不思議な感覚に陥ります。その琥珀の中心には、太古の昔に空から振り下ろされた猛烈な落雷のエネルギーが、一瞬の閃光のまま永遠に閉じ込められている。マーケティングという戦場で戦略を練り、組織を立ち上げる日々を送る私にとって、仕事とはまさに、この「琥珀の中の雷」を現代の混沌から掘り起こす作業に近いのかもしれません。
多くの組織は、効率や再現性という名の磨かれた石を積み上げようと必死になります。しかし、本当に世界を動かし、人々の心を根底から揺さぶるものは、そんな予定調和の中には存在しません。かつて私がブランド運営に携わっていたとき、最も爆発的な成長を遂げたのは、緻密な計算に基づいた施策ではなく、誰の目にも触れない場所で密かに熱を帯びていた、未完成で危うい情熱の火花でした。それはまるで、真夜中の深海を音もなく進む、一隻の光る潜水艦のような存在です。周囲の暗闇を鮮やかな極彩色で塗り替えながら、誰に発見されることもなく、ただ自らの内なる光に従って進む。その孤独な航跡こそが、後になって市場という名の巨大な潮流を作り出していくのです。
独立して複数の企業の顧問を務めるようになった今、私はクライアント様の会議室で、あえて言葉による対話を止めてみることがあります。沈黙の中にこそ、琥珀の中に閉じ込められた雷の鼓動が響いているからです。私たちは言葉を尽くして自分たちの正当性を訴えますが、本当に価値のある直感は、常に言語化される前の、湿った空気のような重みを伴って現れます。深海を泳ぐ潜水艦の窓から見える景色は、地上の論理では説明できないことばかりです。上下左右の感覚が溶け合い、昨日と明日の境界線すら曖昧になる場所。そこでは、過去の実績という重たい鎧は、ただ自分を深く沈めるだけの重石に過ぎません。
ふと耳を澄ませると、ビルの壁を伝って微かな振動が聞こえてきます。それは、遠い昔に閉じ込められた雷が、再び空へ帰ろうと琥珀の殻を叩く音でしょうか。あるいは、深海から浮上してきた潜水艦が、水面を切り裂く合図なのでしょうか。私たちは、自分がどこまで深く潜ったのかも、いつ雷に打たれたのかも思い出せないまま、ただ手の中にある琥珀の冷たい感触だけを頼りに、次の扉を開けようとしています。窓の外では、街の灯りが一斉に点滅し始め、まるで誰かが巨大なモールス信号を送っているかのように見えます。その合図を解読できるのは、きっと自分自身の内側にある光を一度も疑わなかった者だけなのでしょう。