【石田大顕】あえて迷子になることが最短ルートになる理由
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目的地を決めずに歩き出すことに恐怖を感じたことはありませんか。多くのビジネスシーンでは、最短距離でゴールにたどり着くことが正義とされています。効率を求め、地図を広げ、信号が青になる瞬間に合わせて歩みを進める。しかし、私はふとした瞬間に、あえてスマートフォンの地図を閉じ、知らない路地裏へと足を踏み入れることがあります。そこには、あらかじめ決められたルートでは決して出会うことのできなかった、驚くほど美しい壁の色や、誰も気に留めないような奇妙な看板が隠されているのです。
私たちの日常は、あまりにも最適化されすぎています。お勧めされた情報を飲み込み、正解とされる選択肢をなぞる日々。しかし、そんな予定調和の中からは、心を震わせるような新しい発見は生まれません。仕事においても、クライアントが求める正解をただ形にするだけではなく、一度あえてそこから大きく外れてみる時間が必要です。一見すると無駄に思える寄り道が、実は誰も見たことのない景色への扉を開く鍵になることを、私は何度も経験してきました。
先日、全く関係のない分野の古本屋で手にした古い図鑑に、デザインのヒントが隠されていました。それは、深海魚の鱗の並び方だったり、地層が重なる色のグラデーションだったりします。もしも私が最初から答えを知っていたなら、その本を手に取ることはなかったでしょう。迷子になるということは、自分の感性を研ぎ澄まし、周囲の微細な変化に気づくための特訓のようなものです。どの角を曲がれば面白い出会いがあるのか。それを肌で感じる感覚こそが、これからの時代に求められるクリエイティビティの源泉になります。
私たちは効率という名の鎖に縛られがちですが、たまにはその鎖を解いて、自分の直感だけを信じて動き回ってみるべきです。失敗することを恐れず、むしろ失敗という名の行き止まりを楽しむ余裕を持つこと。行き止まりに突き当たったら、そこで見つけた石ころの形を観察してみればいいのです。その石ころが、数ヶ月後のプロジェクトで画期的なアイコンのモチーフになるかもしれません。人生という名の広大なキャンバスに、予測不可能な線を一本引いてみる。それだけで、物語は一気に動き出します。
今の組織や仕事に閉塞感を感じているなら、それはあなたが正解を知りすぎているからかもしれません。地図を捨て、深呼吸をして、あえて一番遠回りな道を選んでみてください。そこにある違和感や不便さこそが、あなたの個性を形作る大切な要素になります。誰もが同じ道を歩む中で、一人だけ泥だらけになって茂みをかき分けて進む。その姿こそが、周囲を惹きつける圧倒的な魅力となるのです。最短ルートを捨てた先にある、あなただけの宝物を探しに行きましょう。