こんにちは!高橋正次です。
ある晴れた午後、私は散歩道で見つけた古びたガシャポンを眺めていて、ふと現代社会の不自然さに気づきました。私たちはいつから、百円を投入すれば必ず中身が出てくるような、予定調和な正解ばかりを求めるようになってしまったのでしょうか。編集プロダクション時代から、私は数えきれないほどの企画をボツにし、取材で失礼な質問をしては冷や汗をかき、納期直前にパソコンが壊れるといった絶望を味わってきました。普通なら消し去りたい黒歴史ですが、今振り返ると、私の仕事の質を支えているのは、これまでに集めてきた華々しい実績ではなく、むしろその裏に積み上げられた膨大な失敗のコレクションです。
多くの人は、成功への近道を記した地図を欲しがります。しかし、私がフリーランスとして多岐にわたるジャンルを渡り歩いてこれたのは、地図を持たずに迷い込んだ先で見つけた、自分だけの抜け道を知っていたからです。例えば、歴史の記事を書くために専門家に会う時、私はあえてその学説の弱点を突くような、少し意地悪な質問を投げかけます。そこで相手が激昂したり、あるいは苦笑いしながら教えてくれた裏話の中にこそ、読者が本当に知りたい真実が隠れていることが多いのです。順風満帆な対話からは、どこかで見たような面白みのない原稿しか生まれません。
ビジネスの世界でも、最新のIT技術を語る時でも、実は一番面白いのはシステムが正常に動いている時ではなく、それが予期せぬエラーを起こした瞬間の人間の慌てふためきだったりします。そのノイズこそが、血の通った物語を生み出すのです。完璧に磨き上げられた鏡のような原稿は、一見美しいですが、読者の顔は映っても心までは映しません。私は、あえて少しだけ泥のついた、ざらりとした手触りのある言葉を届けることを信条としています。それは、整いすぎた世界に放り込まれた一粒の砂利のように、読み手の思考を一時停止させ、新しい視点を与えるための装置です。
成功体験は賞味期限が短いものですが、失敗から得た教訓は発酵し、時間が経つほどに深い味わいを醸し出します。もしあなたが今、何かに躓いて立ち止まっているのなら、それは自分だけの貴重なネタを仕入れている最中だと思ってください。世の中にある優れたコンテンツのほとんどは、誰かの不全感や怒り、あるいはやり場のない悲しみから生まれています。それらをいかにして他人の心を震わせるエンターテインメントに昇華させるか。それこそが、私たちが持つべき本当の編集力だと私は考えます。
これからの時代、AIが完璧な正解を秒速で提示してくれるようになります。そうなればなるほど、人間にしかできない不器用な試行錯誤や、理屈に合わないこだわりが、とてつもない価値を持つようになるでしょう。効率化の波に洗われて、自分の角が取れて丸くなってしまう前に、あえて尖った部分を大切に持ち続けてほしいのです。失敗を恐れて動かないことよりも、派手に転んで新しい土の匂いを覚えること。その積み重ねが、いつかあなたを誰にも真似できない場所へと連れて行ってくれるはずです。私は今日も、誰にも理解されないような小さなこだわりを抱えて、まだ誰も見たことのない景色を言葉にしようともがいています。