【新堀武司】砂場で城を作る子供が、私の最強のライバルです
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メガバンクの巨大な基幹システムを動かし、外資系コンサルティングファームで戦略を練り上げてきた私が、今もっとも畏敬の念を抱いているエンジニアは、公園の砂場で泥だらけになっている五歳の少年です。彼は最新のクラウド技術もプログラミング言語も知りません。しかし、彼が持つ「目的のために手段を疑わない姿勢」と「圧倒的な試行錯誤のスピード」は、現代のビジネスシーンにおいて最も欠けている、そして最も必要なスキルそのものだと痛感しています。
砂場の城作りには、完璧な仕様書も無駄な会議も存在しません。水を含ませすぎれば崩れるという失敗を、彼は数秒で学習し、次の瞬間には砂の配合を変えています。一方で、大人の世界はどうでしょうか。新しいシステムを導入しようとすれば、リスクを恐れて検討に数ヶ月を費やし、実際に動き出す頃には市場の状況が変わっている。そんな光景を、私は何度も目にしてきました。堅牢であることは大切ですが、変化の激しい今の時代、立ち止まることは崩落することと同じなのです。
私はフリーランスとして独立してから、クライアントの皆さんに「砂場を取り戻しましょう」と提案することがあります。それは単にスピードを上げることではなく、失敗を許容し、触りながら正解を見つけていく文化をシステム構築の中に組み込むことです。数百万人の決済を支える銀行の仕事で培った「絶対に壊れない」ための緻密さと、砂場で学んだ「壊しながら作る」という柔軟さ。この一見矛盾する二つの視点を融合させることこそが、私の提供できる最大の価値だと考えています。
技術はあくまでも、砂場にあるバケツやスコップに過ぎません。大切なのは、それを使ってどんな城を築き、誰を驚かせたいかという純粋な情熱です。私は、経営層の方々とIT戦略を語る時、あえて難しい言葉を使いません。なぜなら、本当に優れた仕組みは、子供が砂場で遊ぶように直感的で、ワクワクするものであるべきだからです。効率化の先にある未来が、ただの数字の羅列ではなく、働く人々の手触り感のある喜びに繋がっているか。それを常に自分に問いかけています。
もし、あなたが今、複雑なシステムや硬直した組織の中で、何を作ればいいのか分からなくなっているのなら、一度公園の砂場を眺めてみてください。そこには、どんな高価な教本よりも本質的な、プロジェクト成功の鍵が埋まっています。私はこれからも、最先端の知見を携えながら、心には常に五歳の少年の冒険心を忘れないエンジニアでありたいと思っています。一緒に泥にまみれ、誰も見たことがないような素晴らしい城を築き上げようではありませんか。